「剣と魔法と学歴社会２」 西浦真魚

「依頼主が何を求めているかを、まず最初に徹底的に突き詰めて考えるのは、マーケティングの基本のキだ」
　前世での達成不可能な目標ばかり掲げて具体的な戦略については何も言わないクソ上司と印象がかぶり、アレンは理事のゴドルフェン翁と徹底抗戦しながら、インチキ臭いコンサルタントの言葉を引用した。

　アレン・ロヴェーヌには何がそんなに良いのか理解できないが、彼の作った坂道部は大盛況となった。同級生のみならず上級生までがこぞって入部を希望し、毎朝始業前に広大な学校敷地周囲を走り回り坂道を上り下りするようになった。
　彼が寝起きしている一般寮も設備は創立以来のオンボロで、まかない飯は吐くほどに不味いのだが、なぜか転寮希望者が殺到し、気がつけば法外なプレミア価格が入居権につくようになっていた。
　そんな彼の影響で実際に成果が出ていることを、結局は学園長は認めざるを得ず、その顛末がいつの間にか広がって、それがまたアレンの評価を高めている。
　しかし、アレンはそんなことにはおかまいなく、放課後は最底辺のＧ級冒険者として活動しているのだが、困ったことに何かクエストを１つこなすたびにランクが１つずつ上がっていってしまうのだ。そして彼の抗議が受けいれられることはない……。

　脳筋少年に前世ガリ勉が融合して誕生した、フリーダム問題児の学園冒険譚。
　探索者協会に登録してアルバイトを始めたアレンは、探索者の互助会（グループ）の１つである「りんごの家」に加入。真面目に仕事をこなしているけれど、なめられたら負け、所属している互助会の悪口は許さないとスジを通しているうちに「猛犬のレン」という二つ名が付いてしまいます。「レン君ちーっす」と声をかけては何かと手伝ってくれる、見た目乱暴者キャラの探索者ベンザが良い味出してます。手番は多くないけど、山椒みたいにピリッとした印象を残す脇役がいる話は面白いよ。
　そして、探索者として活躍していますが、学生としても多くのサークル設立に関与し、坂道部の鬼監督。さらには騎士団に出稽古と充実しまくった、過労死が心配な学生生活です。

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