○千寿ムラマサ 「エロマンガ先生」伏見つかさ(電撃文庫)
高校生の和泉マサムネは中学でデビューしたラノベ作家。保護者不在で義妹の紗霧と事実上の二人暮らしだけれど、妹は引きこもりで顔を見たのは1年前の一度きり。ところがひょんなことから、彼の作品を担当しているイラストレーターの『エロマンガ先生』の正体が彼女らしいと分かってしまい……というところから始まる、才能はあるけれど自分の世界にこもって扱いづらい義妹とそれに惚れ込んでしまった真面目な兄のドタバタ。ラブコメディにして、ライトノベル作家やイラストレイターらがいかに作品に向き合うかについてメタフィクション的に語った創作論。
この話のメインヒロインは3人で、本命は紛れもなく紗霧なんですが、残る2人が本当に男前なんですよ。美人だし、才能も金もあるし、性格は良いし、一途だし。
作品がヒット続きの売れっ子で実家もお金持ちな山田エルフ先生は、普段は締め切り前に逃避しちゃうし生活能力もアレだけど、創作に関しては厳しくて「一世一代の勝負に負けたら、三日三晩泣きわめいて、床を転がり回ってもだえ苦しんで、周囲に当たり散らして落ち込んで、めいっぱい悔しがって……それから、ニヤリと笑って再挑戦しなさい」と男前、そして乙女。
もう1人の千寿ムラマサ先生も、「いまキミがやるべきは、哀れに消沈し、泣くことではない。すみやかに立ち上がり、考えることだ。そして、行動することだ」と創作に関しては鬼です。
そもそも千寿ムラマサは和泉マサムネのライバル……少なくともマサムネはそう思ってました。彼よりも先輩で、彼が書こうとしているのと同じような話を書き、しかも彼よりもヒットしていて、彼の作品の刊行を妨害し、彼の作品を駄作と切って捨てて叩き潰すと言い始めます。完全に悪役ライバルです。
でも、千寿ムラマサこそ誰よりも古いマサムネのファンで、フォロワーで、彼の作品以外に面白い本なんてない。それが読めなくなったから自分で自分が面白い小説を書こうとしただけだったのです。すべてが明らかになったとき、彼女は「我が恋心に、恥ずべきことなど欠片もなし!」と開き直ってデレ期に突入。鈍感主人公でも無視できないように、正面から直球勝負で気持ちをぶつけ続けます。ムラマサ先輩ちょろすぎ。
マサムネが彼女以外の女性に告白し、受け入れられた時も、素直に祝福を贈りつつも、1つの言葉を残します。
「作者には完結した作品に鍵をかける権利がある--幸せなまま時を止める権利がある。ハッピーエンドで終わった作品の登場人物は、作者が続きを書くまで幸福なままだろうとも」
逆に言えば、現実ではいつか恋が冷めることだってあるだろうと、自分には別に諦めるつもりがないことを宣言しているのです。
このあきらめの悪さ、『機動警察パトレイバー』アーリーデイズOVAの6話「二課の一番長い日」で、決起したクーデターが失敗したときの甲斐冽輝の「2人から始めてここまで準備するのに20年。生きてりゃ、もう1回くらいやれるさ」とまだまだやれるとうそぶく姿を彷彿とさせて大好きです。男前だなあ……。
高校生の和泉マサムネは中学でデビューしたラノベ作家。保護者不在で義妹の紗霧と事実上の二人暮らしだけれど、妹は引きこもりで顔を見たのは1年前の一度きり。ところがひょんなことから、彼の作品を担当しているイラストレーターの『エロマンガ先生』の正体が彼女らしいと分かってしまい……というところから始まる、才能はあるけれど自分の世界にこもって扱いづらい義妹とそれに惚れ込んでしまった真面目な兄のドタバタ。ラブコメディにして、ライトノベル作家やイラストレイターらがいかに作品に向き合うかについてメタフィクション的に語った創作論。
この話のメインヒロインは3人で、本命は紛れもなく紗霧なんですが、残る2人が本当に男前なんですよ。美人だし、才能も金もあるし、性格は良いし、一途だし。
作品がヒット続きの売れっ子で実家もお金持ちな山田エルフ先生は、普段は締め切り前に逃避しちゃうし生活能力もアレだけど、創作に関しては厳しくて「一世一代の勝負に負けたら、三日三晩泣きわめいて、床を転がり回ってもだえ苦しんで、周囲に当たり散らして落ち込んで、めいっぱい悔しがって……それから、ニヤリと笑って再挑戦しなさい」と男前、そして乙女。
もう1人の千寿ムラマサ先生も、「いまキミがやるべきは、哀れに消沈し、泣くことではない。すみやかに立ち上がり、考えることだ。そして、行動することだ」と創作に関しては鬼です。
そもそも千寿ムラマサは和泉マサムネのライバル……少なくともマサムネはそう思ってました。彼よりも先輩で、彼が書こうとしているのと同じような話を書き、しかも彼よりもヒットしていて、彼の作品の刊行を妨害し、彼の作品を駄作と切って捨てて叩き潰すと言い始めます。完全に悪役ライバルです。
でも、千寿ムラマサこそ誰よりも古いマサムネのファンで、フォロワーで、彼の作品以外に面白い本なんてない。それが読めなくなったから自分で自分が面白い小説を書こうとしただけだったのです。すべてが明らかになったとき、彼女は「我が恋心に、恥ずべきことなど欠片もなし!」と開き直ってデレ期に突入。鈍感主人公でも無視できないように、正面から直球勝負で気持ちをぶつけ続けます。ムラマサ先輩ちょろすぎ。
マサムネが彼女以外の女性に告白し、受け入れられた時も、素直に祝福を贈りつつも、1つの言葉を残します。
「作者には完結した作品に鍵をかける権利がある--幸せなまま時を止める権利がある。ハッピーエンドで終わった作品の登場人物は、作者が続きを書くまで幸福なままだろうとも」
逆に言えば、現実ではいつか恋が冷めることだってあるだろうと、自分には別に諦めるつもりがないことを宣言しているのです。
このあきらめの悪さ、『機動警察パトレイバー』アーリーデイズOVAの6話「二課の一番長い日」で、決起したクーデターが失敗したときの甲斐冽輝の「2人から始めてここまで準備するのに20年。生きてりゃ、もう1回くらいやれるさ」とまだまだやれるとうそぶく姿を彷彿とさせて大好きです。男前だなあ……。
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