付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「エレメンタル・ローズ」 芝村裕吏

2016-12-26 | その他フィクション
「ゲームというものは、選択すること、選ぶことだ」
 エレメンタル・ローズ開発者の遺児、宮林忠義の言葉。

 AR(仮想現実)を取り入れた位置情報ゲーム「エレメンタル・ローズ」は、火土水風の4つのエレメントをそれぞれ属性とした陣営に分かれて拠点争奪をするゲームで、国内400万人のユーザーを誇る大規模なものだ。
 しかし、当初はスキルや戦術を磨き、エレメントごとの個性を活かして勝つための工夫を凝らすゲームだったが、研究していくうちに数合わせの動員力が勝敗の鍵となるものへと変じており、それが忠義には面白くない。
 だが、ある雨の日、忠義の属する火の陣営の拠点が集中する池袋に、水の陣営の一大攻勢がかけられ……。

 ゲームを真剣にプレイするゲーマーたちの物語。
 ゲーム世界の物語ではなく、プレイヤーたちがゲームの内外でぶつかり合い、意地を張り、莫迦なことをしては叩かれ、逆境から逆転し、戦術で負けて戦略で勝ち、リアルの人間関係をゲームに持ち込もうとして失敗し、自分のプレイスタイルを貫こうとし、ゲームの楽しみ方を見つけていく話です。
 システムとしての「エレメンタル・ローズ」は「Ingress」での対人戦闘とARを強化したようなイメージだけれど、陣営が別れてリアルな生活にまで影響する情報収集や欺瞞工作、作戦立案など右往左往してプレイする姿は「ネットゲーム'88」を彷彿とさせるし、プレイしている最中は愉しむ暇もなくゲームに忙殺され、勝ったら喜び、負けたら本気で悔しがるのは「アイドレス」。
 「負けたら本気で悔しがるのがゲームの礼儀だ」「大規模動員は大規模動員でいいものだよ」などのセリフは、まさにこうしたゲームをプレイしてきた経験を反芻させるものでした。
 ただ、自分としては行動力はあっても自己中心的で他人を理不尽に振り回し、都合が悪くなると泣いて逃げる女は勘弁して欲しい。そういう意味で、彼の趣味はよく分からないし、ある意味、洗脳は成功してるんだと思う。
 カラーイラストのフシギドサイタマは、濁流のサイトウこと勅使河原さんの誤植みたいですね。

【エレメンタル・ローズ】【芝村裕吏】【もりのほん】【アスキーメディアワークス】【史上最強の青春国盗りラブバトル】【われは剣王っ】

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「武姫の後宮物語2」 筧千里 | トップ | ★キャラクターの顔が突然変わる »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他フィクション」カテゴリの最新記事