付け焼き刃の覚え書き

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「追放者の矜恃~ヴァルデマールの絆」 マーセデス・ラッキー

2012-05-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 中央公論のC.NOVELSファンタジアと創元推理文庫FTで、分担するように翻訳が進んでいるヴァルデマール年代記の新刊。
 複数の出版社で、さまざまな視点の、年代的にいろいろ前後する話が刊行されていると読んでいて混乱することが多いのだけれど、長めで複雑で続き物が多い創元に対し、中公は単発で読めるものが多いので手に取りやすいイメージがあります。横に話が広がるのは面白いのだけれど、縦に広がる話を追いかけるのはだんだん辛くなりました。そもそもヴァルデマール年代記って、2000年くらいの歴史を扱うという構想だし……。

 カースの軍人であるアルベリッヒには、ときおり断片的に未来が見える力があった。だが、その能力はカース国では「悪魔の力」だとされていた。
 辺境の村を盗賊の襲撃から守った際に、悪魔の力を使ったことが露見したアルベリッヒは火刑に処せられ、危ういところを白馬に助けられるが、その白馬は敵国ヴァルデマールの悪魔の獣だった。
 心ならずも紛争が続く敵国に逃れることとなったアルベリッヒに、ヴァルデマールの人々は「使者」となることを期待するのだが……。

 互いに邪悪な敵と認識して敵対している国に身を寄せることになった、戦うことしか知らない男が心に平穏をみつけるまでの物語。邪悪な敵国だったはずのヴァルデマールの地で、相手を信用し信頼されるようになるまでがおおよそ上巻。カース国が傭兵国家テドレルを抱え込んでヴァルデマールとの全面戦争に突入した顛末が下巻。他の話では、無骨で無愛想な武術師範として描かれることが多かったアルベリッヒ師の物語です。
 才能と意志がありながら閉鎖的な環境の中で抑圧されてきた主人公が、思わぬ事からまったく異なった環境に放り出され、出自からそこでも敵視されることもあるけれど、その才覚を認めた人たちに高く評価されていくことによって居場所を見つける物語……とまとめると、同じ年代記の<女王補佐>タリアの『ヴァルデマールの使者』やマキャフリィの『竪琴師ノ工舎』三部作などと同じですね。主人公は少女ではなく可愛げのないおっさんですが、こういうパターンの話は好きなので一気に読了して満足。

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