付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「スカイ・ワールド#01」 瀬尾つかさ

2012-05-20 | VRMMO・ゲーム世界
「機会というものは、誰にでもやってくるものだと思う。大切なのはいかにして好機を逃さず、そこにしがみつくか、だ。決断するときに理屈は要らない。気づいたら無我夢中で飛びついていく。それしかないんだと思う」
 カイの言葉。

 空中に無数に浮かぶ島々を舞台としたMMORPG「スカイワールド」で、運営開始から1週間後、数万人ものプレイヤーがゲーム世界に閉じこめられるという事件が発生した。
 世界の天頂に浮かぶ、第一軌道「アイオーン」に到達し、そこでのイベントをクリアすればすべてが元に戻ると噂されているのだが、そもそも元の世界がどうなっているのか分からない。ゲームオーバーになってしまったらどうなるのか、本当に死んでしまうのか、元の世界に復帰しているのかも分からない。けれど、彼らはゲームの世界に冒険者として放り出されている。
 パーティーを組むことなく単独でクエスト攻略を続けていた凄腕ゲーマーの少年ジュンが、他の島と孤立しているアルタリア島で出会ったのは、まったくの初心者にして迷子の少女かすみだった……。

 単に「別世界」に飛ばされて冒険するファンタジーというのではなく、プレイしていた「ゲームの世界」に飛ばされる話というのはローゼンバーグの『眠れる龍』あたりから始まるとジャンルだと思うのだけれど、それ自体は既に珍しくはなくなったアイデア。
 でも、その設定を十分に活かして、熟練プレイヤーともともとゲームに興味の無かったビギナーを対比させることにより、一般的な異世界の冒険的な部分とゲームのシステムとして理解する部分をうまく組み合わせてストーリーに取り込んでいます……というか、読んで面白かった。すれたプレイヤーはこの世界の住人をAIのルーチンで行動するだけのNPCととらえがちだけれど、そもそもゲームに馴染みのないかすみは普通に人と人として付き合おうとするし、やりこみタイプのジュンは自分のコンソールをカスタマイズするし、システムの穴がないか常に考えているし……という感じ。
 この手のゲーム世界での冒険パターンの中でも面白い方ですし、この1冊でもまとまっているし、シリーズ物の1冊目としても愉しめます。カイやアリスの思惑もすべて分かったわけではありませんし、これからの展開が楽しみです。

【スカイ・ワールド】【瀬尾つかさ】【武藤此史】【ファンタジア文庫】【オンライン冒険ファンタジー】【MMORPG】【PK】
コメント
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