付け焼き刃の覚え書き

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「医の旅路はるか」 服部忠弘

2016-03-06 | 時代・歴史・武侠小説
 戦国の世となる室町から安土桃山期にかけて、天下一の名医と謳われた1人の医師がいた。
 やはり名医の誉れ高い田代三喜に師事し、その意志を継いで日本の医学中興の祖と讃えられた曲直瀬道三である……。

 迷信や加持祈祷が巾をきかせていた戦国時代の日本に李朱医学を普及させ、公家や武将であろうと一介の庶民であろうと区別しないで治療を施す一方で、足利将軍を動かして京の都に医学校を設立し、後進の育成にも力を注いだ名医の生涯を描いたもの。
 本来の主旨では伝記というかノンフィクション。ただし、その分野では著名であり大河ドラマからライトノベルまで医者の出番になると必ずバイプレイヤーとして顔を出す存在ながら、史料が少ないため空白部分を想像で補完したので実質的には歴史小説。
 史料をよく調べ、まとめているなとは思うけれど、伏線っぽく出されたエピソードがそのままぶつ切れするなど、小説としての完成度は今ひとつ。そもそも登場人物の語り口を現代風にするのか当時の雰囲気を出すのか統一しきれていないのが問題です。ライトノベルではないなら、戦国時代の医者に「バランス」とか「ホルモン」とか言わせちゃダメです。
 中身は面白いので残念。次回作に期待。

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コメント
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