付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

らのべヒロイン列伝「郷里の姉ちゃん(スレイヤーズ!)」

2018-03-17 | 雑談・覚え書き
○郷里の姉ちゃん 「スレイヤーズ!」神坂一(富士見ファンタジア文庫)

 『スレイヤーズ!』は1989年スタートの日本のライトノベルにおけるファンタジー小説のヒット作で、昔からのハイファンタジーとRPGファンタジーをつないでライトノベルに落とし込んだキーとなる作品。その頃、パソコンRPGやテーブルトークRPGの影響を受けて、経験を積んで強くなると高レベルの魔法を使えるようになり強くなる……という流れができていたところに、威力は大きいけれど魔力も消費するし被害も大きくなる上級魔法より、工夫次第でいろいろ使える下級魔法の方が使い勝手が良いよということをはっきり書いて、ゲーム脳に陥りかけた読者に一石を投じた作品でもあります。
 その主人公リナ=インバースは「盗賊殺し」の通り名を持ち、魔王の腹心とすら互角に戦え、「ドラゴンもまたいで通る」と怖れられた、魔法にも剣技にも優れたチート主人公の走り。その周辺にもいろいろ個性的なキャラクターが多いのですが、ヒロインを1人を挙げるとすれば郷里の姉ちゃんでしょうか。

 本名はたぶんルナ=インバース。でも、語られるときはいつでも「郷里の姉ちゃん」
 そもそもリナは郷里の姉ちゃんに「世界を見てこい」と言われて旅に出たという設定。その影響力は大きく、ことある毎に「郷里の姉ちゃんにも、同じことを言われたことがある」とか「郷里の姉ちゃんだったら……」という言葉が出てきます。故郷の喫茶店でウェイトレスをやっているらしいのだけれど、ついに一度も登場せず、もっぱら主人公の回想でのみ語られる存在なのですが、その断片的な言葉や回想からは、細腕でバスタード・ソードをぶん回し、包丁一本でドラゴンを仕留めた、魔族をすりこぎでどつき回したとか理不尽な強さが語られます。そこらのボスキャラなら笑いながらどつき倒せる、主人公以上に強いらしいチートキャラなのです。
 でも、本篇には登場しません。その正体は赤の竜神の騎士とも言われますが、ただ「田舎の喫茶店でウェイトレスのバイトをしている」と噂が語られるのみなのです。
 『スレイヤーズ』という作品自体、何度もアニメ化されましたが、そのオープニングにも2回ほどシルエット姿で登場。語らない方が面白い、登場しない方がワクワクするという、まさにファンタジー界の「牛の首」と言うべき存在です。
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らのべヒロイン列伝「委員長(ひとりぼっちの異世界攻略)」

2018-03-16 | 雑談・覚え書き
○委員長 「ひとりぼっちの異世界攻略」五示正司(オーバーラップ文庫)

 クラスごと異世界召喚され、他のクラスメイトがチートスキルを手に入れるのに主人公だけクズみたいなスキルや職業で、クラスメイトがスキルの強奪や女子が男子に襲われたりして分裂している間に主人公の職業やスキルが実はスゴく有望なことが判明し、いつの間にか最強になってハーレム状態。でも女性陣はみんな主人公に無理難題を言いつけてはすぐに暴力をふるう……という、ある意味、最近多いテンプレ作品なんだけれども、思うにこの作品って叙述トリック型ファンタジーなんです。
 主人公の一人称語りや地の文では、いかにも主人公が棚ぼたで強くなって、なんか簡単に女性から好意を寄せられ、その女性陣はわがまま女としか読めないのだけれど、これが第三者視点になると全部ひっくり返るんです。主人公があえて語らない、言うまでも無いあたりまえのこととしてスルーしていることがどれだけ多く、どれだけとんでもないことなのか。すごい力を振るうには、それなりの代償は必要だし、女性からモテるには単に強い主人公というだけでは無理があるし、言われるがままに甘やかしているように見えるのにも理由があるのです。
 そんな物語の転倒を担うのは、クラスメイトの女性陣で、その代表が学級委員長。
 名前は不明。小学1年から高校まで同じ学校なのに主人公が名前を覚えていないので、委員長としか呼ばれません。(斜め上の行動をする主人公への)ツッコミ役にして(読者に理解しがたい主人公の言動への)解説役。泣きながら怒ってることが多いです。
 最初は不良から御曹司、スポーツ特待生、読者モデルと問題児ばかりのクラスをまとめ上げていましたが、異世界に放り出されてキャパオーバーで憤死。その後、主人公である遙と再会したのを契機に復活していきますが、彼女の目から見た主人公の様子が語られることで初めてテンプレ展開がテンプレではなかったことが明らかになっていきます。

「異世界で! いったい! 今まで! なにしてたのーっ! あと、フランク・ロイド・ライトさんはアメリカ人だからウェルカムだからー!!」

「遥君のスキルの『報連相』って絶対機能してないよね! 偵察に行ってなんで打ち上げられてるの!? 偵察衛星のスキルがあるの!? なんで偵察だけでボロボロなの!?」

 ただ、主人公があまりに規格外なので、第三者視点で客観的事実を明らかにするというより、ボケにツッコミしているようにしか見えないのが話をストレスフリーで読める理由。
 そして、意外に言動不一致。みんなの無駄遣いを叱りながらも自分もお小遣いを使いすぎていたり、主人公を助けようとするクラスメイトを制止しながら自分だけは完全武装だったり、それでも進む者たちを止めながらも自分がいちばん前に出ていたり。
 やがて、頭の回転は速くて記憶力は抜群だけれどコミュニケーション能力が絶望的に不足している主人公の言動をかみ砕いて他人に伝える「通訳」として重宝されるようになり、金銭管理ができない主人公や女性陣の銀行役もするようになり、そのうちに肉壁委員長とか呼ばれるようになっていきますが、悩みの種は、スキルに「性豪」「絶倫」がついてしまっていることのようです。
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らのべヒロイン列伝「サティ・ヤマノス(ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた)」

2018-03-15 | 雑談・覚え書き
○サティ・ヤマノス 「ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた」桂かすが(MFブックス)

 仕事は忙しくて本を読む時間がなかなか確保できないし、目も悪くなって読むスピードも落ちている中、積み上げた本を読み飛ばしていくと内容をドンドン忘れます。よほど面白くないと、読んだかどうかも忘れます。そういうわけで、こんな備忘録ブログが自分に必要になるわけです。
 そんな中、読んだ内容を覚えているような面白い作品でも、ヒロインの存在を意外に忘れがち。ヒロインは「主人公が大好き」「(戦闘か魔法か内政で)役に立つ」「美人(またはかわいい)」という最大公約数を抜くと、「なんか主人公の邪魔ばかりするのがいたなあ」とか「色欲全開だったなあ」くらいしか印象に残りません。案外と男性主人公ほど個性的なキャラクターが多くないのかもしれません。
 ただ、そんな読み飛ばしてしまっている自分でも、しっかり記憶に刻まれているヒロインはいるわけで、そういうキャラをピックアップするのも面白いかなあと思った次第です。

 『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』は、ニート青年が仕事探してハロワに登録したら、長期契約で異世界に派遣されてしまったことから始まる冒険譚。主人公はチートだし、ヒロインはどんどん増えてハーレムができるし、異世界でもお風呂にこだわるし、日本の料理は人気になるしと、ある意味、なろう系ファンタジーの典型ともいうべき作品です。2013年スタート。でも、だからこそ面白い。リスクとリターン、メリットとデメリット、労苦と報酬がきっちり等価交換になってます。
 チートだけれど鍛錬が足りないからウサギに負ける、ドラゴンとか強い敵と戦って死にかけると嫁が増える……というように、苦労せずに強くてハーレム野郎だと腹も立つけれど、命の危険と引き替えなら仕方がないよなあ。いつも死にそうになりながら、自分と嫁の平和な生活のために頑張ってます。

 そんな話のヒロイン、主人公の嫁から1人ピックアップするなら、元奴隷で猫耳獣人のサティでしょうか。主人公の最初の仲間が奴隷少女というのもお約束の1つ。
 サティは小柄で痩せっぽち。視力が悪くて鉱山送りになりかけていたのを救われて以来、忠誠心厚く主人であるマサルに尽くし続けます。

「あ、あの、がんばりますのでよろしくお願いします」

 いつも控えめだけれど素直で頑張り屋。夜のお勤めもしっかり。マサルによって視力を回復してからはめきめき頭角を現し、あっと言う間に一騎当千の戦士になっていきます。具体的には、範囲魔法攻撃より彼女が弓で倒した魔物の数の方が多いくらい……とつらつら書き連ねていて気がつくのは、サティってもしかして「男に都合の良いヒロイン」じゃない?
 ただ、話が面白く、活き活きと動き回っているから気にならないんですね。強くなって、奴隷でもなくなって、あちこち無双するようになっても、ちゃんと主人公から離れず、離れてもすぐに駆け戻ってくる忠犬。それがサティです。猫耳だけど。

「わたしは何もいらないです。マサル様にはもういっぱい頂いてますから」

 そして、サティたちヒロインが「主人公にとって都合の良いヒロイン」であるのと同時に、主人公であるマサルも「ヒロインたちにとって都合の良い男」なんです。
 たぶん、そのあたりのバランス感覚が、幸せな物語感を生んでいるんだろうなと思います。
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「ミリオタJK妹!」 内田弘樹

2018-03-14 | 異世界転移・召喚
「異世界に来てまで女子高生らしさなんて保ってられないですよ」

 その世界では人間の版図は小さな1国に留まっており、それも風前の灯火だった。国王以下重鎮は誰一人戦場から戻らず、王都を竜人族の大軍団に包囲され陥落寸前だったのだ。そこで、王族の最後の生き残りである王女エクレアは、ついに異世界から勇者を召喚する禁断の魔術に手を出してしまったのだが、呼び出されたのは着の身着のままの現代日本の高校生兄妹だった。
 だが、宗也とみぐの兄妹はこの逆境を好機と喜んだ。
 現実世界に居場所のなかった2人には、この敵包囲下に孤立した状況こそ、願ってもない世界だったのだ……。

 冒頭から末期戦が始まる異世界ファンタジー。ミリオタJK妹というけれど、ミリオタなのは兄貴の方であって、妹は単なるワンマン・アーミーだよね? スターリングラードのような戦場を縦横無尽に走り回る女子高生は、まさに水を得た魚。
 末端の戦術的勝利が全体の勝敗に結びつかないというのは常識で、1人の英雄が戦場の片隅で常勝不敗を誇っていても戦争に負けてしまうのはよくある話。それで勝ってしまうと話に説得力とかリアリティがなくなってしまうのだけれど、この話では実戦派ミリオタ妹の戦術的勝利を、頭脳派ミリオタ兄が戦略的勝利に結びつけるという役割分担ができてますが、これ、意外に目新しい気がします。妹は肉体労働、兄は頭脳労働。これでいただくものは同じでございます……って。
 あとは、キャラクター的に潤いが欲しいかなあ。ヘタにコメディリリーフが登場しても浮くばかりだろうけれど、癒やしがないよね。脇を固めるキャラあたりに、もう1枚か2枚か剥けるのが出てくると、もっと面白くなるかと思います。

【ミリオタJK妹!~異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します】【内田弘樹】【野崎つばた】【GA文庫】【異世界軍事ファンタジー】【クロスボウ】【爆薬】【地下坑道】【補給線】【武装JK】
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「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…2」 山口悟

2018-03-13 | VRMMO・ゲーム世界
「緻密な嫌がらせなんて、単純な姉さんにできるはずがないよ」「カタリナ様はとても単純な方です!」「馬鹿だからやるとしたら真っ向勝負しかできんのだ!」「カタリナ様にそんな器用さはありませんから!」
 ゲームの展開通りの糾弾に反論してくれる友人たち。でも、弁護してもらえばもらうほど、カタリナはなぜか複雑な気分になるのだ。

 魔法学園に入学した悪役令嬢カタリナは、ゲーム本編のヒロイン、マリア・キャンベルと出会う。
 でも、カタリナは自らの破滅フラグをおるつもりが、ヒロインの恋愛相手との出会いフラグまでバキバキに折ってしまっていた……。

 本編はまだまだ続いていて、最新6巻まで確定していますが、本編というか乙女ゲームの最終イベントはこの巻までなので、全2巻のつもりでとりあえず一気読みするのがお勧め。
 カタリナが山猿で、興味の無い話は頭からきれいにスルーされる残念娘というのは、前世からの引き継ぎなので仕方が無いことだと判明。

【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…2】【山口悟】【ひだかなみ】【一迅社文庫アイリス】【破滅回避ラブコメディ】【友情エンド】
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「幼女戦記9」 カルロ・ゼン

2018-03-12 | 架空戦記・仮想戦史
「やるしかないが、やるしかないという現実が辛い」
 流石のターニャ・デグレチャフ中佐も愚痴が出る。

 東部戦線で損耗したレルゲン戦闘団は後方で再編されるが、そもそも補充すべき航空魔道兵がいない。人材が払底して、どこをどうこねくり回しても出てこないのだ。前線も後方も、人材も資材もすべてが枯渇していた。それでも戦争はやめられない。やめどきが見失われ、勝利という見果てぬ幻影を追い続けるだけの帝国となっている。
 そんな中、ターニャに出撃命令が下った。南方大陸から撤退するロメール将軍の部隊を支援するためだ。
 既に制海権は失われ、同盟国であるはずのイルドアは厳正中立を言い出して、撤退の支援どころか障害にしかならなくなっていた……。

 表紙のターニャがまるでクルミ割り人形のようですが、これは帝都のレストランで食事したときなのかな。
 配給以下の帝都の食事風景とイルドアの美食が対比され、いよいよ末期戦だという現実が突きつけられます。

【幼女戦記9】【Omnes una manet nox】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ】【エンターブレイン】【どうして、こうなった】【ギンパイ】【V-II】
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「異世界クイーンメーカー」 漂月

2018-03-11 | 異世界転移・召喚
「金貨を貸す者には銅の加護が、銅貨を与える者には金の加護が与えられよう。1枚の銅貨しか持たぬ者が差し出した銅貨こそが、神の門を開く黄金の鍵である」

 塾講師の黒津遥都は深夜の帰宅途中に、気がつけば異世界に迷い込んでいた。
 言葉も分からないまま途方に暮れていた黒津だが、たまたま話のわかるロイツェン大公と知り合ったことから、異邦人のクロツハルトとしてそのまま宮廷で雑用係として働かせてもらうことになった。現代人として基礎教養ができているクロツハルトは順調に新生活に馴染み、紋章官として登用されるようになったが、周囲からの信頼を得たクロツハルトは大公の一人娘マリシェ姫の宮廷教師に抜擢される。
 マリシェは政治も外交も勉強しないわがまま姫様だったが、彼には塾講師で培った現代的な教育方法と「生徒第一」の信念があった……。

 宮廷謀略劇までもいかない暴発が挿話で入ってくるけれど、基本は異色の宮廷教師とわがまま姫様の師弟コンビの教育もの。ひとことでいうと、情けは人のためならず。

【異世界クイーンメーカー】【わがままプリンセスとの授業日誌】【漂月】【Tea】【MFブックス】【宮廷教師ファンタジー】【異世界転移】【知識無双】【ハッピーエンド】【九九】【卵焼き】【火縄】
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「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」 しめさば

2018-03-10 | その他フィクション
「ヤらせてあげるから泊めて」
 5年間片思いしていた女上司にフラれ、やけ酒を飲んだ帰り道に吉田は家出少女を拾ってしまう。
 抱く気は無いけれど、寒空の深夜に道端で蹲る少女を放っておけなかったらしい。らしいというのは、酔っ払いだから記憶が無いのだ。ただ、「泊める代わりに味噌汁を作れ」と言ってしまったらしい……。


「基準を低く持つな。正しい尺度で物を見ろ」
 行きずりの女子高生を簡単に抱かない、女子供の前でタバコを吸わない。そんな男が優しいのではなく、やっちゃう男がクズなだけだと吉田。

 ひとことでいうと「NOといえるサラリーマン」。
 最近のスニーカー文庫は、カクヨム発の「一般文芸でもいいけど、かわいいイラストつけたいよね」という作品の担当になっているようです。
 物語的には「序」で停まっているかなあ。これでいいのかなあ? 面白いけど、吉田の行く手には艱難辛苦しか見えません。

【ひげを剃る。そして女子高生を拾う。】【しめさば】【ぶーた】【スニーカー文庫】【サラリーマン×JKの同居ラブコメディ】【味噌汁】【カツカレー】【目玉焼き】【焼き肉】
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「エイリアン超古代の牙」 菊地秀行

2018-03-09 | トレジャーハンター・宝探し
「いい加減にしなさい。これ以上、あたしたちの仲を裂こうとしたら、北の国の首領様に頼んで、あんたの家に火星15号を撃ちこんであげるわ」
 丹下愛美は太宰ゆきに啖呵を切った。

 学校帰りにスーツにネクタイ姿に着替えて新宿の風俗店に行ってみれば、看板に偽りなく若いピチ・ギャルなホステスが出てきた。スリムな肢体に上品な顔立ち……でも、問題ありだ。そいつはクラスメイトで、風紀委員会の副会長・丹下愛美だったのだ。
 そんな偶然の出会いから突然の神がかり、武装したヤクザの襲撃と息つく暇もない逃走劇に巻き込まれることになった。人類滅亡を引き起こす古代遺産を求め、新宿からアメリカ、南太平洋、エジプト、ロンドンと世界を股にかけたトレジャーハントが始まった……。

 クトゥルフとジャック・ザ・リッパーとジョン・カーペンター映画を取り混ぜて山田風太郎の忍法帳テイストで仕上げてと、著者の大好きなものを詰め込んだような1冊。

【エイリアン超古代の牙】【菊地秀行】【中村龍徳】【朝日文庫】【トレジャーハンター八頭大】【アカシック・レコード】【狂気山脈】【切り裂きジャック】【クトゥルフ神話】【遊星からの物体X】
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「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」 榎本快晴

2018-03-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「興味本位で聞くんじゃけど、どんな話が広まっとるの?」
「戯れに街を焦土とし、餓えれば血肉の川が流れるまで人肉を貪ると」
「そんなことしとらんって。本当に。わしの主食って草とか木よ」

 タケノコが好きなんだよね?

 のんびりと草をはみはみしながら5000年、そのドラゴンは、ちょっと長生きしただけの草食トカゲのような生き物だった。ところが周囲の村人たちは、彼を魔王と双璧を成す大怪物、邪竜レーヴェンディアと誤解していて、とうとう身寄りのない奴隷娘レーコをイケニエに差し出してきた。
 少女に「どうぞ私をお召し上がりください邪竜様」と言われてもただの人畜無害な草食ドラゴンは戸惑うばかりだが、適当にあしらっている内に少女は自分を邪竜の眷属だと認識してしまい、眷属として得られた“邪竜の魔力”を行使して暴れ回るようになっていた。
 邪竜の魔力なんてないのに、レーコは襲い来る魔物の群を瞬時になぎ払い、空を飛び、いつの間にかドラゴンと少女は魔王討伐の旅に出ることになっていた……。

 人の話を聞かない少女が「邪竜様のお力をお借りして」大暴れし、トホホ状態の草食ドラゴンが後始末に追いかけていく道中記。
 机を整理していた妻が「あら、この本……」といいつつ手に取り、そのまま30分ほど部屋の中で立ち読みしちゃうくらい導入部のインパクトが大きい作品です。

【齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~】【榎本快晴】【しゅがお】【角川スニーカー文庫】【村人よ、 いつから邪竜だと錯覚していた……?】【お願い。わしのために争わないで】
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「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…1」 山口悟

2018-03-07 | VRMMO・ゲーム世界
 わがままな公爵令嬢カタリナは、頭をぶつけて前世の記憶を取り戻した。
 ここって前世でプレイしていた乙女ゲームの世界? しかも、ヒロインの邪魔をする悪役令嬢カタリナになっているのに、その結末は国外追放か死亡の二択のみしかないはず……!?
 なんとかゲーム本篇となる学園入学までに破滅フラグを回避しようと、ゲーム知識をもとにあれこれ努力し始めるカタリナだったが、残念なことにカタリナの中身は粗忽なうっかりさんだった……。

 ゲーム知識をもとに、王子との婚約を回避しようとしたり義弟を孤立させないよう気を配りとアレコレやるのだけれど、基本的にうっかりさんの粗忽者なので、美形だらけの逆ハーレムルートに突入。気がつけばゲーム本篇のヒロインより攻略対象が増えてしまっているのに、本人は気がつかないという鈍感系主人公に……。
 この手の乙女ゲーの悪役令嬢転生ものは多いけれど、その中でも完成度が高く、主人公に好感が持てるタイプの話です。好感といっても「バカな子ほど可愛い」という方ですが。

【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…1】【山口悟】【ひだかなみ】【一迅社文庫アイリス】【破滅回避ラブコメディ】【畑仕事】【木登り】【緑の指】
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「新説RPG幻想事典」 村山誠一郎

2018-03-06 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 せっかくファンタジーの入門解説書というジャンルに先鞭をつけたのに、すっかり新紀元社の「Truth In Fantasy」に先行されてしまったソフトバンク。1990年代末から「新説RPG幻想事典」としてテーマを絞った解説本を発行したり、さらに「ゲームシナリオのための××事典」とかニッチなジャンルに突き進みました。この『新説RPG幻想事典~剣と魔法の博物誌』はそのターニングポイントとなる1冊。
 これは、4Gamers.netで連載されていたエッセー「剣と魔法の博物誌」をまとめて増補したもので、「RPG幻想事典」としては10年ぶりの刊行なんだとか。神剣からマジックアイテムまで、伝説の武器とその所有者について語っており、取り上げている武器はエクスカリバーやロンギヌスの槍、日本丸からストームブリンガーまで、神話も伝説も史実も小説も全部ひっくるめてのエピソードガイドです。

【新説RPG幻想事典】【剣と魔法の博物誌】【村山誠一郎】【つるみとしゆき】【ソフトバンククリエイティブ】
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「ジャパネスク~RPG幻想事典 日本編」 監修:飯島建男

2018-03-05 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 『RPG幻想事典』が好評だったのか、ソフトバンクは日本編も出しました。それが「ジャパネスク」。ただし、執筆陣もイラストレイターも総取っ替えで、神話の紹介から武器防具まで扱うというコンセプトに変わりはありませんが受ける雰囲気はかなり違います。
 監修は『ラストハルマゲドン』のゲームクリエイター、飯島建男。執筆陣は門倉直人、柳川房彦の遊演体メンバーに、冒険企画局の近藤功司、高井夏生となっていて、陣容にも不足はありませんが、逆に過多すぎて取っつきにくい印象でした。親しみやすいNikov.のイラストではない影響もあったでしょうが、気軽に読むには専門的すぎるし、この頃には新紀元社の「幻想世界の住人たち」たちとかも出始めていましたし、詳しいことを知りたいと思って読むには軽すぎた気がします。
 でも、今読んでも面白いんですよね。

【ジャパネスク~RPG幻想事典 日本編】【飯島建男】【門倉直人】【柳川房彦】【近藤功司】【高井夏生】【東山プロダクション】【日本ソフトバンク出版事業部】【わきあかつぐみ】
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「無職転生~異世界行ったら本気だす(17)」 理不尽な孫の手

2018-03-04 | 異世界転生
「ルーク。女好きのあなたは、唐突に我慢ができなくなり、私に抱きつき、体をまさぐりました。本来ならば許されない行為ですが、私もちょうどムラムラしていたところでしたので許しましょう」

 アリエル王女を王位につけることがヒトガミを倒す第一歩になると、竜神オルステッドの命を受けたルーデウスは、シルフィやエリスを連れてアスラ王国へ帰還するアリエルの護衛となる。
 しかし、行く手にはダリウス大臣やヒトガミが送り込む刺客が次々と現れ、死闘が繰り広げられる……。

 山田風太郎の忍法帖などで見る、仲間を守りながら敵の包囲網を突破する道中記編の燃え展開。北帝オーベールに北王ウィ・ター、そして内部に裏切り者が……という包囲網をいかに破り、さらにたどり着いた先での宮中闘争をいかに制するかという波乱の1冊。
 水神レイダが大暴れ、イラストでも出番の多いおばあちゃんです。

【無職転生17】【異世界行ったら本気だす】【理不尽な孫の手】【シロタカ】【MFブックス】【人生やり直し型転生ファンタジー】【山賊】【仇討ち】
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「最強の黒騎士、戦闘メイドに転職しました」 

2018-03-03 | 異世界転生
「私は性的嗜好を含まないドMです。
謝罪したのですから、蹴ってください」


 パーシル王国が引き起こした多国間戦争に巻き込まれたフレイヤ王国で、激戦区で戦い続け、味方を勝利へと導いた黒騎士隊の司令官、『最強の黒騎士』と謳われたオブライト・ニールディークは終戦間際に暗殺されてしまう。
 それから16年。オブライトは何故かリボンの似合う少女・マリアに転生していて、王国を陰から支えるアーバンド侯爵家の戦闘メイドとして侯爵令嬢リリーナに仕えていた。
 ところがリリーナに第四王子との婚約話が降ってわいたことから王宮の接触が増え、気がつけば今では出世している、かつての同僚や部下たちと再会するはめに陥っていた……。

 話は面白くて好きだけれど、もうちょっとテンポが良くても良かったなということと、この世界に銃火器が存在する設定は必要だったのか、幹部がこんな性格破綻者ばかりでこの国は大丈夫か?というあたりは気になります。

【最強の黒騎士、戦闘メイドに転職しました】【百門一新】【風華チルヲ】【幻冬舎コミックス】【最強メイド&群像コメディ】
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