手塚治虫 平成7年角川文庫版
きのうのつづき。手塚治虫の初期長編のひとつで、発表は1951年。
宇宙の黒いガスが地球をつつんでしまい、すべては死に絶える最後の日が来る。突然変異で進化した小型の人間のような生物フウムーンが、動物を選んで空飛ぶ円盤に乗せ、ノアの方舟よろしく地球を脱出するというストーリー。
その前段に、アメリカがモデルと思われる“スター国”と旧ソ連がモデルと思われる“ウラン連邦”とが、原子力開発をめぐって対立し、戦争に入るなど、物語のひだが深くてあちこちに同時展開のエピソードがある。
一方で、絵のほうも、重力をあやつる力により戦艦が宙に浮いたりするシーンとか、善良な村民たちが平和を祈る教会で静かに鐘が鳴り響くシーンとか、映像化しても印象的なショットのようになかなか見せ場が多い。コマ割は、基本がほぼ4段で、ちょっと凝った形もあり、また見開きページでのモブシーンもあったりで、前にあげた「ロストワールド」の単調さと比べると、だいぶ技巧が進んで、現代のマンガに近くなっているといえるのではないか。
登場人物としては、悪役・アセチレンランプは「ロストワールド」から引き続き出てくるんだが、ほかにも手塚キャラクターのなかで人気のある「ロック」が出てくるのが印象的。(ちなみに、ヒョウタンツギも、さりげに登場します。)
50年以上前の作とは思えない、SFマンガとして価値あるものだと思います。
きのうのつづき。手塚治虫の初期長編のひとつで、発表は1951年。
宇宙の黒いガスが地球をつつんでしまい、すべては死に絶える最後の日が来る。突然変異で進化した小型の人間のような生物フウムーンが、動物を選んで空飛ぶ円盤に乗せ、ノアの方舟よろしく地球を脱出するというストーリー。
その前段に、アメリカがモデルと思われる“スター国”と旧ソ連がモデルと思われる“ウラン連邦”とが、原子力開発をめぐって対立し、戦争に入るなど、物語のひだが深くてあちこちに同時展開のエピソードがある。
一方で、絵のほうも、重力をあやつる力により戦艦が宙に浮いたりするシーンとか、善良な村民たちが平和を祈る教会で静かに鐘が鳴り響くシーンとか、映像化しても印象的なショットのようになかなか見せ場が多い。コマ割は、基本がほぼ4段で、ちょっと凝った形もあり、また見開きページでのモブシーンもあったりで、前にあげた「ロストワールド」の単調さと比べると、だいぶ技巧が進んで、現代のマンガに近くなっているといえるのではないか。
登場人物としては、悪役・アセチレンランプは「ロストワールド」から引き続き出てくるんだが、ほかにも手塚キャラクターのなかで人気のある「ロック」が出てくるのが印象的。(ちなみに、ヒョウタンツギも、さりげに登場します。)
50年以上前の作とは思えない、SFマンガとして価値あるものだと思います。