many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

海辺のカフカ

2010-01-17 17:48:54 | 村上春樹
昨日から、カフカつながり。
これは、例によって、出てすぐ読んだんだけど。
グイグイと読んでったと思うんだけど、なんかあんまり何度も読み返す気がしない、私にとっての村上春樹のなかではちょっと変わった本。
言い方はむずかしいんだけど、「何について書いてある話かって、即はっきり言えない物語」って感じなんですよね、言うなれば。まあ、小説って、そんな単純なもんぢゃないんだけど、もともと。
ただ、奥底に流れるような、重たい主旋律みたいなものはググッと感じながら読むんで、小説からパワーは伝わってくることは確か。

その点、きのう挙げた「変身」の訳者あとがきにいわく、
“彼の文学の特色は「徹底的に写実的な手法によって、純粋に象徴的なものを表現する」(マールホルツ)点にあり~”
“この『変身』の「巨大な褐色の虫」は何の象徴であろうか。答えは無数にあるようだ。そしてどの答えも答えらしくは見えぬ。けだし文学とは、それ自身がすでに答えなのであるから。”
なんて書いてあるんだけど、うまいこと言うな、そんな感じだ、って私も思ったりします。

※2013年3月28日付記
実にひさしぶりに読み返してみたら、二つの物語がべつべつに進行していたのにやがて重なっていくとことか、記憶にとどめることが物質よりも何よりも大事だって主張するとことか、森の奥での生活には風力発電を使ってるとことか、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の続編みたいに思えなくもない。
いろんな興味深いフレーズは、登場人物たちのセリフとして表されている。今回気に入ったのは、下巻にある次のような一節。
「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ。だから恋をしている相手について考えると、多少の差こそあれ、いつも哀しい気持ちになる。ずっと昔に失われてしまった懐かしい部屋に足を踏み入れたような気持ちになる。当然のことだ。そういう気持ちは君が発明したわけじゃない。だから特許の申請なんかはしないほうがいいよ」
コメント
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