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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

2012-11-28 20:11:14 | 村上春樹
村上春樹 2012年9月 文春文庫版
最近でた文庫で、副題は「村上春樹インタビュー集1997-2011」。
単行本が出版されたときも、もちろん知ってたんだけど、小説がおもしろければ、べつに著者インタビューとかはいいかな、って当時は思ってたんで買ってなかった。
そのときのサブタイトルは「~1997-2009」で、今回は2011年の一篇が加わっての文庫化らしい。
こうなると、なんか文庫待ってて(正確には待ってたわけぢゃないけど)トクした気がする。
タイトルは、一瞬意味わかんなくて、どーゆーこと?って思うかもしれないけど、小説を書くってことは覚醒していながらにして夢を見ることだってとこからきてる。
長いけど引用するよ。
>フィクションを書くのは、夢を見るのと同じです。夢を見るときに体験することが、そこで同じように行われます。あなたは意図してストーリー・ラインを改変することはできません。ただそこにあるものを、そのまま体験していくしかありません。我々はそれを、目覚めているときにやるわけです。夢を見たいと思っても、我々には眠る必要はありません。我々は意図的に、好きなだけ長く夢を見続けることができます。書くことに意識が集中できれば、いつまでも夢を見続けることができます。今日の夢の続きを明日、明後日と継続して見ることもできる。
っつーことになる。
あー、そーだよね、って共感できないからには、へー、そーなんだ、って言うしかない感覚かもしれないけど。
意図してストーリー・ラインを改変することはできません、っていうあたりについては、創作をしてても、次の展開がどうなるかわからないでやってるってこと、次のような言い方をしている箇所もある。
>僕自身、驚かされるのが好きですね。小説を書いているとき、次に何が起きるのか僕にはわかりません。(略)僕は何も考え出したりはしないで、ただ何かが起きるのを待っているだけなのです。僕は作家になれてとても幸せです。だって小説を書いていると、日々驚きの連続であるわけですから。
物語の重要性に気づいていて、よき物語はひとを惹きつけるし、オウムの取材などの経験から人々が安易に閉じた世界の論理にハマりこむことは危険だから作家には良き物語を提供する責務がある、くらいに思っている著者にして、この行き当たりばったり的ストーリー作成方法をとってるってのが、めちゃくちゃ面白いところではある。
読むまでは、自作解説なんて聞いたってしょーがないんぢゃないの、くらいにしか思ってなかったんだけど、これほど的確なガイドブックはないでしょ(著者が語ってんだから当たり前か)って、刺激的な体験という感想をもった。
コンテンツは以下のとおり。
・アウトサイダー 聞き手ローラ・ミラー Salon.com 1997年
・現実の力・現実を超える力 聞き手洪金珠 時報周刊 1998年
・『スプートニクの恋人』を中心に 聞き手島森路子 広告批評 1999年
・心を飾らない人 聞き手林少華 亞洲週刊 2003年
・『海辺のカフカ』を中心に 聞き手湯川豊、小山鉄郎 文學会 2003年
・「書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなもの」 聞き手ミン・トラン・ユイ magazine litteraire 2003年
・お金で買うことのできるもっとも素晴らしいもの ロシアの読者からの質問 BBCRussian.com 2003年
・世界でいちばん気に入った三つの都市 聞き手ローランド・ケルツ PAPERSKY 2004年
・「何かを人に呑み込ませようとするとき、あなたはとびっきり親切にならなくてはならない」 聞き手ジョン・レイ THE PARIS REVIEW 2004年
・「せっかくこうして作家になれたんだもの」レイモンド・カーヴァーについて語る 聞き手「文學会」編集部 文學会 2004年
・「恐怖をくぐり抜けなければ本当の成長はありません」『アフターダーク』をめぐって 聞き手「文學会」編集部 文學会 2005年
・夢の中から責任は始まる 聞き手ジョナサン・エリス、平林美都子 THE GEORGIA REVIEW 2005年
・「小説家にとって必要なものは個別の意見ではなく、その意見がしっかり拠って立つことのできる、個人的作話システムなのです」 聞き手ショーン・ウィルシー THE BELIEVER BOOK OF WRITERS TALKING TO WRITERS 2005年
・サリンジャー、『グレート・ギャツビー』、なぜアメリカの読者は時としてポイントを見逃すか 聞き手ローランド・ケルツ A Piblic Space 2006年
・短編小説はどんな風に書けばいいのか 聞き手「考える人」編集部 考える人 2007年
・「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」 聞き手マイク・グロッセカトヘーファー DER SPIEGEL 2008年
・ハルキ・ムラカミあるいは、どうやって不可思議な井戸から抜け出すか 聞き手アントニオ・ロサーノ Que Leer 2008年
・るつぼのような小説を書きたい(『1Q84』前夜) 聞き手古川日出男 モンキービジネス 2009年
・「これからの十年は、再び理想主義の十年となるべきです」 聞き手マリア・フェルナンデス・ノゲラ The Catalan News Agency 2011年
コメント
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