many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

きょうも夢見る者たちは……

2012-11-29 20:03:59 | 読んだ本
日野啓三 昭和63年 新潮社
きのうから、タイトルが似てるつながり…?
一時期、興味をもって、いくつか読んだんだよね、日野啓三。
二つの短編が入ってるけど、本のタイトルそのものの小説はなく、「ランナーズ・ハイ」と「光る荒地」のふたつ。
「ランナーズ・ハイ」は、皇居のまわりを夜になってからランニングする何人かのひとたちの話。
東京のど真ん中の街をランナーの視線・速度で描写してくのと、走ってくうちに浮かんでは移っていく思考を書きとめてくのとが、まさにランナーズハイというのにぴったり、分かる分かるって言いたくなるような感じで、スピードに乗って流れてく。今回ひさしぶりに読み直したら、すごく気持ちよかった。
例によって、著者独特の、一見冷たそうなビルとかのほうを誉めたたえて、植物なんかを不気味だと切って捨てるとこなんかがあって、これはいつ読んでも私には面白い。
>あいつらは陰険だ。虫がたかると樹液をわざと苦くしたり、隣の木を枯らすために揮発性の有毒化学物質を、葉から放出するやつもいる。街路樹なんて根もとまでアスファルトに覆われながら、実にしぶとく生き続けてるじゃないか。
>もともと陸地は彼らの天下だった。(略)実は動物たちが全部滅んで元の植物の静かな世界に戻るのを、じっと待ち続けているのさ。
なんてとこの視点は、いまだに私は影響を受けているって思い起こさせられた。
「光る荒地」のほうは、東京の郊外の国道沿いの街にいる拒食症(?)の女の話。
こっちにも
>植物たちは原則的に歩きまわらない。だが全く意識がないとは言えない。蔓や根は確かに何かを求めて複雑に這い伸びる。鉱物にだって全く意識の種子がなかったら、生物がこの惑星上に生まれたはずがない。
なんてとこがあって、ストーリーよりも、こういうとこが私には気になる。
ちなみに「夢見る」ということに関連するのには、
>人によって違い、またその日のいろんな条件によっても違うけれど、走り方がうまくゆくと身体の苦しさを越えたところで、いわば目を開けて夢をみるような状態になる。
なんていう一節がある。
そうなんだよね、ランナーズハイって、ただ気持ちよくなるだけぢゃなくて、ふだん思いつかないような(夢にも見ないような?)、いろんな考えが浮かぶ側面もあるってのは私の実感。
実際、私の経験として、仕事上のちょっとした(自分ではイケてると思う)アイデアって、けっこう走っているときにひらめいたものが多い。
もう十年も走ってないけどね。(だから最近仕事ができねえのかと真剣に思うときもある。)
コメント
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