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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

死刑

2013-07-15 15:09:00 | 読んだ本
森達也 平成25年5月 角川文庫版
単行本は2008年発行で、存在は知ってたんだけど、ちょっとテーマが重そうで、気が進まないでいたところなんだが、今回文庫本になったんで読んでみた。
もう、そのものずばり、死刑に関する本である。
ドキュメンタリータッチ(?)ですすんでくんだけど、著者はいつものように、一方に片寄ったものの見方ってのはしたくないんで、可能な限りいろんな人に会って、取材・インタビューしてく。
死刑廃止を主張する市民団体、元オウム幹部の死刑囚、拘置所職員、死刑反対派の政治家、「死刑になりたくて人を殺した」殺人犯の弁護士、死刑執行に立ち会ったことのある検察官、恩赦で無期に減刑された元死刑囚、などなど。
社会のなかの不可視の領域っていうか、知っているようで知らないことに対して、ストレートに突っ込んでいく脚質は、いつもながら読んでて面白い。(中身は面白がることぢゃないけど。)
個人の結論が賛成なのか反対なのかっていうより、大事なことは、だいたい世間一般の空気は「場合によっては死刑もやむをえない」ってあたりになってるんだろうが、国が人を殺すシステムについて、ちゃんと知ってて言ってますか、という問いかけですな。
「死刑にしちゃえ」って、言うのは簡単かもしれないけど、それは他のひとが判断・実施してくれるって前提に立ってるんでね、ふつう。著者が他のことでもよくいう、「私は」という主語を明確に意識して物事を考えましょう、ってことですね、この件に関しても。
被害者遺族の心情を考えたことがあるのか、なんてエキサイトするひとは多いと思うんだけど、遺族のなかには、死刑があったって誰も救われないから、死刑廃止を唱えてるひともいるらしいんで、当事者になってみないとわからない、人間というのは簡単ではない。
どうでもいいけど、私は、こういうのを読んでても、死刑執行に立ち会った検察官は慰労金として三万円をもらうとか、冤罪で間違って死刑にされた場合の補償額が法律上は最高で三千万円とか、妙なディテールに引っ掛かって面白がっちゃうんだよね。(だから、面白がることぢゃないってば。)
コメント
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