ロバート・B・パーカー/菊池光訳 2008年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
古本で前に買ってあったやつ、最近になってやっと順番きて読んだ、スペンサー・シリーズの31作目、原題は「Bad Business」。
スペンサーの依頼人はミセズ・ロウリイ、夫の浮気の証拠をつかんでくれという。
ちなみに彼女の望みは浮気現場に踏み込んで、真っ最中の写真を撮れ、っていうんだけど、スペンサーはそういうやりかたは好まない。
ミスター・ロウリイは、エネルギーのブローカーを業とする大企業の最高財務責任者、金持ちで強い影響力の持ち主。
彼を尾行してったスペンサーは、幸運にもすぐに女性と落ち合うところを目撃するが、その相手の女性にも私立探偵の尾行がついてることに気づく。
互いに情報交換をすると、女性はミセズ・アイゼンで、その夫であり探偵に依頼したミスター・アイゼンはミスター・ロウリイと同じ会社の最高業務責任者だという。
なんだそりゃって感じなんだが、さらにスペンサーの依頼人ミセズ・ロウリイにも別の探偵が尾行についていて、ミスター・ロウリイから頼まれた仕事だという。
どうなってんのこのひとたちって思ってるうちに、不幸なことに殺人事件がスペンサーのうろうろしてる近くで起きてしまう。
これは背後に何かあるとにらんだスペンサーは、もう当初の依頼理由から離れて、好奇心から首をつっこみ、関係者である会社の偉いさんとかを突っつきだす。
すると会社の警備部長ってのが現れて、スペンサーを高給好待遇で会社に雇いたいという、ただし勤務地はどこか遠い土地、簡単にいうとカネやるから手を引いてここから去れって要求。
もちろんスペンサーは相手にしないが、浮気調査の尾行をしてた他の探偵たちの姿が街から見えなくなったのは、その交渉に応じたからにちがいない。
とうとう会社の最高経営責任者も出てきて、ホテル貸し切りでの会社関係者のパーティに招かれ、おなじテーブルで食事もして、スペンサーを丸め込もうとしてくるけど、スペンサーは断固戦う。
あちこち突っついてるうちに、「心の問題」っていうラジオのトーク・ショウ番組の司会者の存在がクローズアップされてくる、なんかあやしげな人物とその理論。
会社の最高経営責任者は、将来は上院議員から大統領にまでなろうっていう野心の持ち主だが、どうもウラにうさんくさいとこあるようで、スペンサーはホークと一緒に踏み込んで行き、最後には悪事を暴く。
事件解決の段階で、スペンサーはホークに「おれは以前から願っていたのだ」「そのうちに〈ウオール・ストリートで混乱を起こす〉という文句を使える事件を扱うことを」なんて得意気に言うが、ホークの返事は「生きる目的があまり残っていないのだな」(p.377)である。
まあいずれにせよ、そういう大がかりな事件を扱うことはスペンサーらしくなくて、最後は企業の帳簿のことなんか見ぬけっこないから、知りあいの公認会計士呼んできて助けてもらうんだけど。
その他、ストーリーとは関係ないが、気に入った表現をいくつか。
事件の舞台となる会社のビルについてのスペンサーの評、
>革新的な醜い建物だ。五種類の煉瓦を使った壁の表面仕上げに、黒いガラスと浮き模様の付いたコンクリートが入り混じったこれ見よがしの重層建築。まるでダース・ヴェイダーの別荘のようだ。(p.25)
「ダース・ヴェイダーの別荘」がいいですね、もちろん。悪口に使われてるのはスター・ウォーズファンとしては不本意ですが。
恋人のスーザンが服を買うのに何軒ものしゃれた店をまわるのにつきあうスペンサー、
>(略)たいがいの店で、私はキャット・ショウに出たイボイノシシ同様に場違いな存在であるのも、楽しみに水を差すことにはならなかった(p.93)
とか言って、場違いなのは認めたうえで、同行して試着の意見を聞かれたりするのを嬉しがってる。
スーザンとの関係でいえば、ビールについて、
>スーザンがビールを飲む可能性は、彼女がチェリイ・パイを作るのと同様、絶対にありえない。しかし、彼女は私のために、つねにブルー・ムーン・ベルジアン・ホワイト・エールを何本か置いている。私はそれを、彼女の愛情の強い証と受け取っている。(p.120-121)
なんて言ってる。
一方で、ホークがスペンサーのオフィスにきたときに、勝手知ったるとばかりにそこの冷蔵庫から出してきたビールはステラ・アルトワである。
古本で前に買ってあったやつ、最近になってやっと順番きて読んだ、スペンサー・シリーズの31作目、原題は「Bad Business」。
スペンサーの依頼人はミセズ・ロウリイ、夫の浮気の証拠をつかんでくれという。
ちなみに彼女の望みは浮気現場に踏み込んで、真っ最中の写真を撮れ、っていうんだけど、スペンサーはそういうやりかたは好まない。
ミスター・ロウリイは、エネルギーのブローカーを業とする大企業の最高財務責任者、金持ちで強い影響力の持ち主。
彼を尾行してったスペンサーは、幸運にもすぐに女性と落ち合うところを目撃するが、その相手の女性にも私立探偵の尾行がついてることに気づく。
互いに情報交換をすると、女性はミセズ・アイゼンで、その夫であり探偵に依頼したミスター・アイゼンはミスター・ロウリイと同じ会社の最高業務責任者だという。
なんだそりゃって感じなんだが、さらにスペンサーの依頼人ミセズ・ロウリイにも別の探偵が尾行についていて、ミスター・ロウリイから頼まれた仕事だという。
どうなってんのこのひとたちって思ってるうちに、不幸なことに殺人事件がスペンサーのうろうろしてる近くで起きてしまう。
これは背後に何かあるとにらんだスペンサーは、もう当初の依頼理由から離れて、好奇心から首をつっこみ、関係者である会社の偉いさんとかを突っつきだす。
すると会社の警備部長ってのが現れて、スペンサーを高給好待遇で会社に雇いたいという、ただし勤務地はどこか遠い土地、簡単にいうとカネやるから手を引いてここから去れって要求。
もちろんスペンサーは相手にしないが、浮気調査の尾行をしてた他の探偵たちの姿が街から見えなくなったのは、その交渉に応じたからにちがいない。
とうとう会社の最高経営責任者も出てきて、ホテル貸し切りでの会社関係者のパーティに招かれ、おなじテーブルで食事もして、スペンサーを丸め込もうとしてくるけど、スペンサーは断固戦う。
あちこち突っついてるうちに、「心の問題」っていうラジオのトーク・ショウ番組の司会者の存在がクローズアップされてくる、なんかあやしげな人物とその理論。
会社の最高経営責任者は、将来は上院議員から大統領にまでなろうっていう野心の持ち主だが、どうもウラにうさんくさいとこあるようで、スペンサーはホークと一緒に踏み込んで行き、最後には悪事を暴く。
事件解決の段階で、スペンサーはホークに「おれは以前から願っていたのだ」「そのうちに〈ウオール・ストリートで混乱を起こす〉という文句を使える事件を扱うことを」なんて得意気に言うが、ホークの返事は「生きる目的があまり残っていないのだな」(p.377)である。
まあいずれにせよ、そういう大がかりな事件を扱うことはスペンサーらしくなくて、最後は企業の帳簿のことなんか見ぬけっこないから、知りあいの公認会計士呼んできて助けてもらうんだけど。
その他、ストーリーとは関係ないが、気に入った表現をいくつか。
事件の舞台となる会社のビルについてのスペンサーの評、
>革新的な醜い建物だ。五種類の煉瓦を使った壁の表面仕上げに、黒いガラスと浮き模様の付いたコンクリートが入り混じったこれ見よがしの重層建築。まるでダース・ヴェイダーの別荘のようだ。(p.25)
「ダース・ヴェイダーの別荘」がいいですね、もちろん。悪口に使われてるのはスター・ウォーズファンとしては不本意ですが。
恋人のスーザンが服を買うのに何軒ものしゃれた店をまわるのにつきあうスペンサー、
>(略)たいがいの店で、私はキャット・ショウに出たイボイノシシ同様に場違いな存在であるのも、楽しみに水を差すことにはならなかった(p.93)
とか言って、場違いなのは認めたうえで、同行して試着の意見を聞かれたりするのを嬉しがってる。
スーザンとの関係でいえば、ビールについて、
>スーザンがビールを飲む可能性は、彼女がチェリイ・パイを作るのと同様、絶対にありえない。しかし、彼女は私のために、つねにブルー・ムーン・ベルジアン・ホワイト・エールを何本か置いている。私はそれを、彼女の愛情の強い証と受け取っている。(p.120-121)
なんて言ってる。
一方で、ホークがスペンサーのオフィスにきたときに、勝手知ったるとばかりにそこの冷蔵庫から出してきたビールはステラ・アルトワである。