町山智浩 二〇一七年 集英社インターナショナル新書
こないだ読んだ『映画には「動機」がある』と出版順には前後するんだが、そのあと読んだ町山さんによる映画関係の本。
初出の季刊誌の連載でのタイトルは「映画の台詞」だったそうですが。
「映画と本」っていっても、ただ映画の原作ストーリーにあたるだけぢゃなくて、それこそ登場人物のセリフは何て本のどこからの引用かとか、背景をみせてくれたりするとこが勉強になる。
映画の登場人物の部屋の本棚にどんな本があるかで、そのキャラクターが暗示されてるなんて観点を教えられちゃうと、すごく興味もたされるけど、大きなスクリーンに行くことしないから、見えないって細かいとこ、私の映画の見方では。
あいかわらず、採りあげられてる映画の半分もみていないので、シーンのイメージが浮かばないんだけど、それでも読んでればおもしろい。
どの作品がどうということでもないが、なんとなく、従来の映画って、女のひとの描き方が男性の作者からみたステレオタイプみたいなもの、って歴史があったんぢゃないかなという印象を受けた。
まあ、それは性別にかぎらず、人種とか、社会階層とか、善いもんと悪いもんとか、パターンなんだよパターンってつくりが多かったんだろうってことなのかもしれないけど。
あと、ときどき映画のなかに詩をあつかうものが出てくるんだけど(詩を暗誦するとか、詩をつくれるとかって何かの素養みたいになってる?)、いまいち意味がわからなかったんで、最終章で、アメリカ人にとってホイットマンがどういうものなのか、ってのを解説してくれてるのは、ためになったなあ。
コンテンツと出てくる映画は以下のとおり。
第1章 信じて跳べ 『世にも怪奇な物語』
第2章 金は眠らない 『ウォール・ストリート』
第3章 本当の根性 『トゥルー・グリット』
第4章 真夜中のパリ 『ミッドナイト・イン・パリ』
第5章 3月15日に気をつけろ 『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』
第6章 メイド・オブ・オナー 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』
第7章 さらば我が愛、我が友、我が痛み、我が喜び 『ファミリー・ツリー』
第8章 彼女と同じものをいただくわ 『恋人たちの予感』
第9章 天墜つる 『OO7 スカイフォール』
第10章 リンカーンのユーモア 『リンカーン』
第11章 そこに連れて行くよ 『ソウルガールズ』
第12章 貴様らが我々を騙すなら、我々も貴様らを騙す 『ザ・イースト』
第13章 時は征服できない 『ビフォア・ミッドナイト』
第14章 すべての探求は最後に出発地点に戻り、初めてそこだったと知るのだ 『あなたを抱きしめる日まで』
第15章 あんなに短かった愛なのに、永遠に忘れられない 『物語る私たち』
第16章 イケてる女 『ゴーン・ガール』
第17章 愛について語るときに我々の語ること 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
第18章 「何があったの? シモンさん」 『ニーナ・シモン 魂の歌』
第19章 愛と赦し 『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
第20章 人はいつも、手に入らないものに恋い焦がれるんですね 『キャロル』
第21章 縄ない 『ブルックリン』
第22章 アメリカ映画の詩が聴こえる 『眼下の敵』