木原直哉 2013年 中経出版
著者の名前を初めて見かけたのは、たしか棋士・片上大輔七段のブログだったんぢゃないかと思うんだが、なんか気になったので一冊読んでみた。
プロのポーカー・プレイヤーだそうだけど、そういう人いるんだ、って、まずはふつうに驚いた。
それにしてもこの本のタイトルどうなのって、ちょっと思ったんだが、本文中に「自分は利用できるものは何でも利用するので」と書いてあって、校名ブランドをつけたらしい。
プロのプレイヤーというのはすごいものらしく、目先のカネだけを目当てにマカオへでも行けば、年間5000万円から1億円は稼げるのだという。
でも、そういうダンナ相手の遊びをしてると、次第に実力が落ちてってしまい、トッププロを相手にはできなくなるし、長期的に見ればやがては負ける側になってしまうかもしれないから、やらないんだと。
そこには、競技のチャンピオンの賞金はもっと高いってのもあるけど、やっぱチャンピオンになることの名誉っつーか、喜びが大きいって理由がある。
ちょっと安心するよね、確率とか、戦略とか持ち出して金銭的成功の秘訣を説く一方かと思いきや、カネよりも幸福を感じたいとか言われると。
いやー、でも、ゲーム上のことぢゃなくて、実生活のなかでのリスクとかあらためて突きつけられると勉強になるとは思った。
たとえば東京から大阪行くのに、新幹線乗るか高速バスで行くかって、費用と時間だけのことかと思ってたら、新幹線の乗客死亡事故はゼロ、それに比べて交通事故の可能性は一定程度ある、なんて言われちゃうと、今回の自分だけは事故にあうまいってすら考えてなかったのは甘いとしかいいようがなく思える。
大学入るのに一年浪人したら、卒業後サラリーマンになるとした場合、定年まで働く期間が一年減って、金銭に換算すると年収一年分損とか、計算しちゃったら怖くて第一志望にこだわるとかしたくなくなるのでは。
でも細かい計算しようとしても、ゲームとちがって、ほんとの確率がわかんないから人生はむずかしいわけで。
それに、確率ってのは、無限回数繰り返して試行すれば、確率どおりのとこに出る目は落ち着くんだけど、人生の選択はそんな数多く繰り返さないから。
(逆に、ゲームのギャンブルで負けたくなかったら、分散を大きくして、いい目が出たとき勝ち逃げしろ、ってのがセオリーっつーことは知ってんだけどね。→『ツキの法則』」)
そのへんのとこ、どうして人は客観的に検証しないのかってことを、
「世の中の事象は複雑すぎて確率がうまく計算できない」
「確率が分っても、それに対する試行回数がまったく不足している」
「人間は基本的に自分が見聞きしたり経験したりした数少ない事象に引きずられてしまう」(p.72-73)
という理由によると著者はあげている。
自分のわずかばかりの経験に引きずられちゃうってのは、たまたま勝つ目が出ただけなのに、俺は天才だとか、俺は強運だとか、って思いこんぢゃうことにつながるんで危ない、危ない。
直前の回で勝ったからって、この流れと勢いで次回も勝てる、とかって考えちゃうのは次回の試行は独立したものだってこと無視してるっつーか理解してないわけで。
なんだかんだいって、確率を知ろうとか、期待値にそった行動をとろうとか、っていう前に、
>その時点で起きている事象に対し、自分の幸運・不運は考えても仕方がありません。考えても意味のないことは、一切考えるべきではないです。(p.72)
って著者が言ってることを認識できるかが大事なんぢゃなかろうか。
それでも私なんかはツキを呼び込むことは可能なんだって前提でものごと考えるけどね。
(私には『人間における勝負の研究』の「米長哲学」の影響が大きいからね。)
章立ては以下のとおり。
第1章 本当のリスクマネジメントとは
第2章 チャンスを引き寄せる確率的な思考力
第3章 「お金」との正しいつき合い方
第4章 最大のリスクとは何か
第5章 必要なのは「失敗」か? 「挑戦」か?
第6章 自ら選択する生き方
第7章 不安を消し去る方法