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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

「日本型政治」の本質

2020-11-28 18:04:50 | 読んだ本

ジェラルド・カーティス/山岡清二訳 1987年 TBSブリタニカ
また、三十年ぶりに学生んときの課題図書を、紙の色も変わってこようかというところを引っ張り出してきてみた。
著者は「代議士の誕生」で有名な、コロンビア大学教授、日本政治の研究者。
本書の副題は「自民党支配の民主主義」で、80年代後半の時点だけど、今後も自民党が唯一の政権党でありつづけるだろうってことの考察。
んー、いつも思うんだけど、80年代後半ってのは1955年に自民党ができてから30年経ったって時点なんだけど、そっから現在までがまた30年ちょっと経ってしまっている、って時間の幅に気づくと、なんか愕然とする。
この本の「現在」ってのが、いま2020年の学生からみたら、この本からみた吉田茂がまだ首相だったころ、みたいな距離感になるのかと思うと、なんかねえ、すごい、時代がちがうってことだ。
まあ自分だって当時の教授のトシをとっくに越えちゃって年寄りになってんだから当たり前なんだけど。
私の感慨はどうでもいいとして、だから本書の第一章なんかは戦後の歴史の教科書として、まとまっててわかりやすい。
主題である自民党の現実的能力については、簡単にいうと、
>自民党が政権を維持できたのは、社会的、経済的環境の変化を敏感にかぎとり、それに合わせた政策をとる能力にたけていたからである。(p.60)
みたいなことになる、高度経済成長のときにはそれなりに、そのあと予算がそう簡単には増やせなくなってもあの手この手で。
それに対して、社会党は「変化への適応能力欠如」とかけちょんけちょんに言われることになる。
もちろん自民党・日本政府にしても、国民の支持獲得だけぢゃなくて、
>内需拡大、失業対策に加えて、七七年には世界経済に刺激を与えるため日本はもっと貢献せよとするアメリカの要求に応えるためにも、政府資金が経済に投入されることになったのである。(p.84)
って理由があったのは、今も昔も変わらないことではある。
そこんとこを捌くにあたって、
>内需拡大のために政府支出を増やせという外国からの要求が、経済的刺激が最大となるように資金を配分する際の前提としてあった。しかし、支出の増加はすべて、支持者のために平等の扱いを要求する自民党の政治家たちによって論議され、結局のところ、公共事業への金の配分が、必ずしも経済的に最も有効な方法によってではなく、それぞれの利益を代表する自民党代議士に対して平等になるよう行われるのが、日本政治の常である。(p.91)
っていう具合のやりかたでいくのがうまいところ。
幅広い支持層をかかえてんだけど、誰にも不利にならないようにとりはからって、また得票率を高めて、政権を安定させていく、それが日本流の勝利第一主義の適応性。
第一章 日本の政党システムの変革
第二章 自民党――永続支配の構造
第三章 自民党――政治権力の機構
第四章 日本社会党――万年野党の「力学」
第五章 選挙運動、政治資金から見た日本の「近代政党」
第六章 変化する日本の選挙民
エピローグ 「日本型政治」の手法

コメント
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