かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

記紀の考古学

2024年07月13日 | Books
体調がなかなか戻らず、明日のゴルフも敢えなくキャンセル。



本書は、敬愛する森浩一さんの新書。
2000年に出た後、2005年に文庫化され、このたび新書で出た。
まだ読んだことがなかったのでちょうどよかった。

一応崇神から欽明までの時代を扱っているが、執筆中に新たな考古学上の発見があったりすると、話が飛んだりして、大学の講義を聞いているような感じで読み進められる。
記紀がすべて頭に入っているわけではないので、すっと頭に入ってくる話ばかりではないが、よく議論されるところなどは、網羅されており、たいへん面白かった。

特徴的なのは、自分のことをいつも”ぼく”と呼ぶことで、永遠の考古好きの少年という風。
そして、記紀が軽視される風潮に警鐘を鳴らす。
記紀が後世の作り話だったとしても、その根っこには、何かあるはず。
それを、現在残された古墳、遺跡、地名、風習などから、探っていく面白さを教えてくれる。
特に、現場を重視したフィールドワークは、机上の空論ではない、重さ、迫力を感じさせる。

その中で、森さん独自の見解を示す部分も出てくるが、出雲大社の巨木柱の発見などは、典型的。
その時の報道で、記紀を信じた学者感激という説明に憤慨したという。
記紀を盲目的に信じたのではなく、学問的推論でそうなったのだ!
縄文文化が見直されているが、今から20年以上前に、森さんは、古代の巨木文化のレベルの高さに着目している。
今の古代研究の流れの源流となったのだろう。

福井県の手繰ヶ城山古墳や、明石の五色塚古墳など、行ったことがあるからこそ味わえる腹落ち感なども、森さんワールド全開。
応神と仁徳が実は、同一人物の事績を2人の天皇の事績として語っているのではないかという説も、記紀と現在の考古学上の研究との比較から出てきたお考えだ。
これは、天皇陵への立ち入りが実質できない状況下、これ以上の議論の進展は期待できないのだが。

有名な古墳はかなり見てきたので、何度もうなずきながら読むことができた。
古代史、考古学に興味のある方は、一読してみてはいかが?
コメント
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