稼げる!プロコン育成塾コースマスターの太田一宏です。
日本経済新聞の「私の履歴書」を楽しみにされている方も多いようですが、先月の書き手が中嶋悟さん、日本人で初めてF1に年間を通じて参戦されたドライバーでした。いわばフォーミュラーカー操縦の名人ですね。名人である中嶋さんはハンドルを握る現役レーサーを引退後、レーシングチームを組織され代表として経営にあたられています。F1は、自動車による競走として始まっていますが、何十年かを経てサッカーやアメリカンフットボールと同様にスポーツビジネスになりました。加えて、上位入賞を狙っている自動車は、大手自動車メーカーが広告効果を狙って製造しているマシンですので、レースそのものが販売に直結するという特殊性があります。そこは自動車メーカー、部品メーカー、車体やレーシングスーツを広告媒体として用いている企業などの思惑が関わってくるなかなか面倒な側面があります。そのなかで、チーム運営をするのは、車の操縦とは異なる能力が求められますが、その能力も持ち合わせておられたということでしょう。加えて、そのチームからは、5人のF1ドライバーが輩出され、「いつかはF1で」という夢をいただきながらレースの世界に飛び込んでくる若者が「羽ばたいていける場所」としても機能しています。
レーサーとしてもチーム経営者としても成功できたのは、なぜでしょう。「私の履歴書」のなかで、同時期のF1ドライバーを褒めておられる記述があります。F1ドライバーは皆さんが名人の域であり、「運転している自分が一番うまいと言いたくてそこにいる」存在と中嶋さんご自身も記されています。にもかかわらず、他のF1ドライバーを褒めることができる。その道を極めた人は、人の欠点をいわない。そんなことを表現した諺に「名人は人をそしらず」というものがあります。部下を育てるとき、その弱点や欠点を指摘しているだけでは、なかなか成果は現れてきません。部下の努力もさることながら管理者側の育成努力も問われるべき点です。部下が育たない時は管理者が成長すべき時と心得、そしらず育てるのがあるべき姿。中嶋さんはそういう姿だったから、若い才能を生かすことができたのではないか。そんなことを考え、時には自分を戒めながら記事を読ませていただいた1か月でした。