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「ソーシャル・ビュー」について

2021-12-28 12:00:00 | 21期生のブログリレー

皆さん、こんにちは。事務局の宇野毅です。12月3日~9日の障害者週間に「障害を通じた多様性の理解・尊重」と題した、東京工業大学・未来の人類研究センター長、伊藤亜紗教授のセミナーを聴く機会がありました。伊藤先生は、福祉や医療の分野(健常者と障害者が同じ環境で生活できることを目指す)ではなく、身体論という分野(健常者と障害者の違いに注目し、健常者と障害者は互いに補完しあうものである)の研究を行っておられます。

伊藤先生によると、コロナ禍は視覚障害者の方にいくつかの影響を与えたそうです。マイナス面は、よく道に迷うようになったこと。原因はマスクです。視覚に障害のある方は、外部の情報を眼以外から入手します。ある意味、全身に触覚があるため、顔がマスクでふさがれることで、空気の流れなどの感知が鈍ったからです。

逆に、会議は内容が理解しやすくなりました。ZoomなどのWeb会議が増えたからです。会話の参加者が、あっち、こっちなどというあいまいな表現を使わなくなり、音声のかぶりを気にして順番に発言するようになったため、格段に聞きとりやすくなったのだそうです。

また、セミナーの中で、「ソーシャル・ビュー」という取り組みが紹介されました。これは、視覚障害者の方と健常者で5~8人のグループを作り、美術館内を一緒に回るというプログラムです。そして作品の見た目や印象について話し合いながら、作品の解釈をみんなで作りあげていきます。

ここで重要なのは、見えない人が加わると、その場の会話の内容が変わることです。たとえば、見える人同士なら、「この色、グッとくるよね」と言えば伝わった気になりますが、視覚障害のある方が加わると、それでは伝わりません。つまり、見えない人が入ってくることで、抽象的な表現がより具体的になり、思いもよらなかった視点に気づくことになります。また、見える人もまわりの人の言葉を通して作品を見ることになり、他の人の思いがけない言葉に触れて作品を見直してみると「あっ、確かに!」と新たに見えてくることがあるそうです。美術作品が、これまで自分が見ていたものとは異なる新しい価値観に触れて、作り替えられる体験ができるとのことでした。

このソーシャル・ビューを通じて、健常者は自分自身の限界を知ることとなります。また、健常者同士の感じ方の違いも、はっきりと見えてきます。このプログラムは、健常者が障害者をサポートするという関係ではなく、健常者と障害者が、一緒につくりあげていく関係になっていくものです。

今回のセミナーから、自分の視点が正しいと思い込まないこととともに、健常者と障害者が一緒に活動することで新しい価値観を発見し、お互いの感性を広げていくことができるということを知りました。私自身は、まだ、「ソーシャル・ビュー」を体験したことはありませんが、今後ぜひ参加してみたいと思います。

コメント (2)
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