まず、アジア・大洋州というくくりがあるように、この国はアジアと密接に繋がっているということ。実際、オークランド住民の20%がアジア人であるという話も聞きました。歩き回った感覚ではもっと多い感じがしました。会社にも白人に混ざって多くのアジア人が働いています。言語はマオリ語、英語、手話(!)が公用語です。マオリの文化は非常に大切にされています。アメリカにおけるインディアンや、オーストラリアにおけるアボリジニの様に迫害されたり、保護区にいれられたりせずに、移民と原住民であるマオリ族は融和しています。マオリの言葉を意図的に使っていたりして、リスペクトを感じます。しかし、手話が公用語って面白いですよね。
これは完全に個人的な感覚ですが、NZで英語を話すと自分が上手になった感覚にとらわれます。なぜか聞き返されない。なぜか通じる。ちょっと英国風の訛りがあるけれど、慣れてしまえば非常に聞きやすい。米国や英国と比べて、英語で会話するハードルが不思議なほど低いです。日本に帰国後、NZから来ている社員にこの不思議な感覚の話をしましたが、どうもNZの移民文化と関わりがありそうです。移民が経済成長の原動力になっている国なので、常にオープンマインドで多くの文化を受け容れる土壌があり、英語も様々な発音への許容度が高いのではということでした。この優しさは、我々英語が得意でない日本人にとって本当にありがたいものです。
もう一つ興味深く思ったことがあります。私はワールドビジネス研究会で異文化研究分科会に参加していますが、その中でホフステード博士の6次元モデルを取り上げています。6次元とは多様な文化を理解するための6つの要素ですが、その一つに「権力格差」というものがあります。権力格差は、「それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状態を予期し、受け入れている程度」と定義されています。まぁ、権力格差が高いということは、ざっくり会社でいえば「上司が絶対」という感じです。権力格差が高い国は、マレーシア(100)、サウジアラビア(95)、イラク(95)、フィリピン(94)、ロシア(93)等、日本は54点でほぼ真ん中、そしてNZは22点でオーストリア(11)、イスラエル(13)とともに権力格差が低い国の一つであるという結果が出ています。要は、NZは階層を重視せず、平等を重視する国であると言えます。これは非常に重要なインサイトで、仕事をする際にもそこは意識して、どんな階層の人ともフラットに向き合っていこうと、思いを新たにしました。
きっと皆さんには関わる機会の少ない国ですが、ビジネスでも文化的にも気持ちの良い交流ができそうな予感がしています。これを機会にぜひNZという国に興味を持っていただければ嬉しいです。
【参考文献】
宮森千嘉子/宮林隆吉. 経営戦略としての異文化適応力. 日本能率協会マネジメントセンター, 2019, 314p.