うなぎで有名な岐阜県関市の「辻屋」。人気店の中でも一番歴史が古く、創業は幕末・慶応年間(1860頃)という老舗。戦前までは専業ではなく、いろいろな料理を出していたのだそう。店前のアーケードが無粋ではあるが、建物も創業当時のものというから凄い。暖簾をくぐり店に入ると、ずらっと卓が並んだ入れ込みの小上がり席が目に入る。相席が好まれない今では貴重だが、昔の大店にはごく普通にこういう感じの入れ込みの間があったようだ。雰囲気は違うが浅草の「駒形どぜう」や「飯田屋」の2階が入れ込みの大広間。老舗ならではの風格がある。休日ともなるとアーケード下に行列が出来ることもある店だが、この日は平日の夜とあって客もまばらで、石敷きの土間にある手前のテーブル席が空いていたのでそこに腰を下ろした。土間と調理場の間には水が流され、平成14年から居るという大きな天然鰻が身を横たえていた。この店に入るのは何年か振り。昔は出前もやっていたはずで、仕事の訪問先で出されていただいた事もある。着物姿の給仕の女性がおしぼりとお茶を運んできてくれた。「並丼」を注文。あれ?姿が見えないなと思ったら、奥にいらっしゃった、名物女将。相変わらず元気そうだ。
空いていたので小上がり席に移動させてもらい、店や関市にまつわる様々なものが飾ってある棚や雰囲気を楽しみながら待っていると、しばらくして丼ぶりが運ばれた。肝吸いが付いていて、お茶は鉄瓶で置かれる。鰻は4切れのっていて、焼きの塩梅も良い。こちらのたれは昔からやや甘めの多め。もちろんこの日も変わらず。ご飯の量は多め。置いてある山椒粉は風味の良いもので、少し振って風味を増した鰻とご飯を頬張った。肝吸いの肝には焼きが入っている。少し柚子皮が散らしてあり風味の良いものだった。昔感じたよりもずっと良く感じたのは、並んで長く待たされるような事が無かったからだろうか。落ち着いた雰囲気の時なら、水の流れる音をBGMに歴史ある建物でいただく鰻丼はいいもんだなァと感じた次第。(勘定は¥2,610)
名代 辻屋
岐阜県関市本町5-14
( 関 関市 せき せきし つじや 鰻丼 うな丼 うなぎ丼 しげ吉 みよし亭 角丸 孫六 )