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旧司法試験 民法 問題一覧 昭和52年~平成18年

2013-06-26 01:06:13 | シチズンシップ教育
旧司法試験民法・問題一覧



昭和52年・第1問
 家具商を営む甲は、乙とタンス1さおを乙に売る契約を締結し、履行期に乙方に届けたところ、乙から受け取ることを拒まれた。そこで、甲は、運送業者丙に運送費を支払ってその運送を依頼し、これを持ち帰って甲の店舗に保管していたところ、地震により、右店舗が倒壊したため、右タンスが毀滅した。乙が受領を拒んだ理由が、
 1  置き場所が片付いていないことにある場合
 2  右タンスに瑕疵があることにある場合
とに分けて、甲・乙間の法律関係を説明せよ。

昭和52年・第2問
 本人を甲、代理人を乙、相手方を丙として、乙・丙間に代理行為がなされた場合において、
 1  丙が乙に詐欺を行った時
 2  乙が丙に詐欺を行った時
 3  甲が丙に詐欺を行った時
 4  丙が甲に詐欺を行った時
の、それぞれについて、代理行為の効力を論ぜよ。

昭和53年・第1問
 Aは、その所有の事務所用建物について、債権者甲のために抵当権を設定し、その登記をした後、抵当権の設定当時からその建物に備え付けられていた冷房用の機械を新式のものと取り替え、新しい機械を他の債権者乙のために譲渡担保に供した。乙が、Aが弁済期に債務を履行しないので、Aの承認の下にその機械を取り外して持ちだし、丙に売却した。この場合における甲・乙間および甲・丙間の法律行為を説明せよ。

昭和53年・第2問
 「他人所有の不動産の売主がその義務を履行しないまま死亡した場合において、その不動産の所有者が相続により売主の地位を承継したとしても、その者は、特別の事情の無い限り、売主としての履行義務を拒否することができる。」という考え方がある。
 この考え方に立って、
1  これを支持する理由
2  売主の相続人が履行義務を拒否した場合に買主が採り得る法律上の手段
について論ぜよ。

昭和54年・第1問
 甲は、その所有する土地を乙に賃貸し、乙は未だこれを占有するに至らなかったところ、甲の妻丙は、自己に賃貸の権限があると誤信し、甲の代理人として、この土地を丁に賃貸し、丁はこの土地上に建物を建築した。乙は、丁に対して建物収去・土地明渡を求めることができるか。

昭和54年・第2問
 Aは、Bに対して借家人Cの住んでいるA所有の建物を売り渡した。その後間もなく、Cは、その重失火により、これを焼失させてしまった。BはAに対して手附を交付している。A・B・C三者間の法律関係を論ぜよ。(ただし、賃料に関する法律関係は除く。)。

昭和55年・第1問
 Aは、Bに対して貸金債権を有していたが、Bが倒産して所在不明となったので、その所在を探しているうちに、消滅時効期間が経過した。その後、Aが保証人Cに対して保証債務の履行を求めたところ、Cが弁済した。Cは、Bの所在が判明した後、Bに対してAに弁済した金員を支払うよう求めたところ、Bは、消滅時効が経過したので、Cが弁済する必要はなかったと主張して、支払を拒絶した。
 この場合におけるB・C間の法律関係について説明せよ。

昭和55年・第2問
 甲は、乙から一定規格の製品を一定数量購入し、約定の期日に乙の倉庫に出向いて受領する旨の契約を結んだ。乙は、その規格の製品を多量に仕入れ、引渡しの準備をした上、約定の期日に、甲に引き取るよう通知した。甲は、資金の手当てができなかったので、3カ月遅れて乙の倉庫に出向き、自ら点検の上、乙から約定の数量の製品の引渡を受けた。その後、甲は、引渡を受けた製品の一部に腐蝕のあることを発見したが、それは、乙の倉庫に在庫中、約定の期日後に湿気のために生じたものであった。
 この場合における甲・乙間の法律関係について説明せよ。

昭和56年・第1問
 甲は、乙所有の家屋を自己のものと称して丙に賃貸し、引き渡した。丙は、甲の許可を得た上、相当の費用をかけてこの家屋を改造し、これに居住していたところ、乙は、この家屋を取り壊してその跡に貸ビルを建築する計画のもとに、丙に対してその明渡を求めた。
 この場合における次の問題点について説明せよ。
 1  丙が乙に対してすることができる主張
 2  丙が甲に対して有する請求権

昭和56年・第2問
 Aは、BがCとの間の継続的取引契約に基づいてCに対して現在および将来に負担する債務を期限および極度額の定めなく保証した。  この場合における次の各問題点について説明せよ。
1  Aの解約権
2  CがB所有の不動産の上に有する根抵当権を放棄した場合におけるAの保証責任
3  Aが死亡した場合におけるその相続人の責任

昭和57年・第1問
 Aは、甲からある土地を賃借し、その引渡を受けてその土地上に建物を建築するための工事に着手した。ところが、Bは、Aよりも先に甲からその土地を賃借し、また、Cも、乙からその土地を賃借しており、それぞれ自分が賃借人であると主張して、Aの建築工事を妨害しようとしている。ただし、A、BおよびCは、いずれも賃借権設定の登記を受けていない。
 この場合において、A、BおよびCは、それぞれ他の二者に対して、その土地を使用するため自己の権利を主張することができるか否かにつき、その土地の所有者が甲である場合と乙である場合とに分けて論ぜよ。

昭和57年・第2問
 Aは、その所有する建物にBのために抵当権を設定してその登記をした後、その建物を債権者Cのために譲渡担保に供し、Cは、譲渡担保を登記原因とする所有権移転の登記を受けた。その後、Aは、BおよびCの承諾を受けないでその建物をDに賃貸し、Dはこれに居住している。
 この場合における次の各問題点について説明せよ。
1  BおよびCのDに対する建物の明渡請求
2  Dの失火によりその建物が焼失した時に、BおよびCが採り得る法的手段

昭和58年・第1問
 甲所有の土地につき、乙は、甲に無断で、丙との間に乙を売主とする売買契約を締結した。その土地の登記簿上の所有名義は、当初は甲にあったが、その後、甲から丙に直接移っている。
 右の場合において、丙の登記が有効な対抗要件となるに至るいくつかの法律関係を指摘して論ぜよ。

昭和58年・第2問
 A会社の工場が爆発し、付近を通行中のBが重傷を負い、通行人Cがタクシ-でBを医師Dのもとに運んだ。Bは、治療のかいもなく、間もなく死亡し、後に長期間別居中の妻E、内縁の妻FおよびB・F間の子でBにより認知された幼児Gが残された。
 右の事実関係の下において、次の問いに答えよ。
1  Cがタクシ-料金および汚れた衣服のクリ-ニング料金を支出した場合におけるその費用ならびにDの治療代に関し、CおよびDは、誰に対してどのような請求をすることができるか。
2  E、FおよびGは、A会社に対してどのような請求をすることができるか。

昭和59年・第1問
 権利能力のない社団Aがその財産である不動産をAの代表者の1人であるBの所有名義で登記していたところ、Bは、私利を図る意図のもとにその不動産を第三者Cに売り渡し、移転登記をした。
 この場合におけるA・C間の法律関係について、BがAの代表者として売り渡した場合と自己の名で売り渡した場合とに分けて論ぜよ。なお、Aの代表者について共同代表の定めはないものとする。

昭和59年・第2問
 部品製造業者甲は、製品製造業者乙に部品を供給し、乙は、その部品を用いた製品を販売業者丙に売り渡していた。ところが、甲は乙の指示する品質条件にしたがって部品を製造したにもかかわらず、その部品に瑕疵があり、このため乙に製品に瑕疵が生じた。丙は、その製品を販売したが、その瑕疵を理由に大量の返品を受けて倒産してしまった。乙・丙間の売買契約には、乙は瑕疵担保責任を負わない旨の特約があった。
 この場合における甲・乙・丙三者間の法律関係について論ぜよ。

昭和60年・第1問
 甲は、その所有する土地を乙に売り渡し、その旨の登記をした。乙は、この土地を丙に転売して引き渡した。ところが、丁は、乙および丙に対し、この土地について、丁が甲から売買により所有権を取得していたことを主張している。
1 丁の乙、丙に対する主張が認められる場合について論ぜよ。
2 丁の乙および丙に対する主張がいずれも認められた場合、乙は甲に対してどのような請求をすることができるか。なお、この土地の価格は、甲乙間の売買契約以来現在まで上昇を続けているものとする。

昭和60年・第2問
 Aは、Bに対して貸金債権を有し、Bは、Aに対して売掛代金債権を有していたが、Bは、この売掛代金債権をCとDとに二重に譲渡し、いずれの譲渡についても確定日付のある証書によってAに通知し、その通知は同時にAに到達した。その後、Cは、Aに対し、この売掛代金債権を自働債権とし、AがCに対して有していた貸金債権を受働債権として相殺する旨の意思表示をしたところ、Aは、Cに対し、AのBに対する前記貸金債権を自働債権とし、この売掛代金債権を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。
 この場合におけるA・C間の法律関係について論ぜよ。

昭和61年・第1問
 甲は、乙との間で、乙がその倉庫に保管中のB型ワープロ500台のうち200台を契約の日から1週間後を引渡期日と定めて購入する契約を締結した。甲の債権は、制限種類債権であるとして、次の各場合につき、甲乙間の法律関係を論ぜよ。
1 契約の日の翌日、B型ワープロ全部が倉庫から消失してしまった場合
2 乙が甲に引き渡すために、予め甲が指示したB型ワープロ200台を倉庫から搬出し、トラックに積載しておいたところ、トラックごとそれが消失してしまった場合

昭和61年・第2問
 甲会社の従業員Aは、甲の工場で就労中、同僚Bが操作する機械に巻き込まれて死亡した。Aの妻乙は、甲労災補償を受けたので、甲に対してそれ以上の請求をすることができないと思っていたところ、事故後4年を経て、知人から、甲に対して損害賠償の請求をすることができるのではないかと教えられたため、その請求をしたいと考えている。
1  乙は、甲に対し、契約上の責任を追及することができるか。
2  乙は、甲に対し、不法行為上の責任を追及することができるか。

昭和62年・第1問
 甲は、乙に対し、甲の所有する土地Aの登記済証、実印等を預けて長期間放置していたところ、乙は、土地Aにつき、勝手に自己名義に所有権移転登記をした後、丙に対する自己の債務を担保するため抵当権を設定し、その旨の登記を了した。その後、乙は、土地Aを丁に売却したが、登記は、いまだ丁に移転されていない。
 右の事例において、丁が丙に対して抵当権設定登記の抹消請求をすることができる場合及びこれをすることができない場合について、理由を付して論ぜよ。

昭和62年・第2問
 Aは、その子B(幼児)を助手席に乗せ、制限速度を大幅に超えた速度で乗用車を運転中、自動二輪者に乗ったCがわき道から急に飛び出してきたため、自分の車をこれに衝突させた上、歩道わきの石垣にも衝突させた。この事故で、B、Cおよび歩道上を通行中のDの3名が重傷を負った。
 次の場合に分けて、それぞれ法律上の問題点を論ぜよ。
 1  BがCに対して損害賠償を請求した場合
 2  DがAおよびCに対して損害賠償を請求した場合

昭和63年・第1問
 Aは、B所有の甲土地上に乙建物を所有していた。Cは、Aに金員を貸し付けて乙建物に抵当権の設定を受け、その旨の登記を了した。その後、Cの抵当権が実行され、Dが乙建物を買い受けた。
1  Bは、Dに対して甲土地の明渡を請求することができるか。甲土地の賃貸借契約が抵当権設定よりも前にAB間で締結された場合と抵当権設定後その実行前に締結された場合に分けて論ぜよ。
2  Bが、抵当権が実行される前にAとの間で右賃貸借契約を合意解除したことを理由として、Dに対して明渡しを請求した場合はどうか。

昭和63年・第2問
 AB間でA所有の不動産をBに3000万円で売却する旨の契約が成立し、内金2000万円の支払後、残代金は1年後に支払う約束の下に、所有権移転登記および引渡しが完了した。その後、Bは、事業に失敗し、その債権者Cに迫られて、唯一の資産である右不動産を代物弁済としてCに譲渡することを約束した。このため、Aは、Bから履行期に残代金の支払をうけることができなかった。
1  右の場合において、Cが所有権移転登記および引渡しを受けていた時は、Aは、BおよびCに対しどのような請求をすることができるか。
2  AがBの債務不履行を理由として右売買契約を解除したが、登記を回復しないでいる間に、BからCへの右代物弁済の約束がされた場合はどうか。Cが所有権移転登記および引渡しを受けている場合といずれも受けていない場合に分けて論ぜよ。

平成元年・第1問
 Aは、Bに対し、自己の所有する中古のステレオセットを贈与することを約し、Bへの送付をCに委託した。ところが、Cによる輸送の途中、Dがこのステレオセットを盗み、Eに売り渡した。
1 この場合に、A・BおよびCは、Eに対し、ステレオセットの引渡しを請求することができるか。
2 A・B・Cいずれもステレオセットを取り戻すことができなかった場合に、BがAに対してすることができる請求およびAがその請求を拒むことができる根拠について説明せよ。

平成元年・第2問
 Aは、Bに対し、売主をC、買主をBとする売買契約に基づくCの目的物引渡債務を保証することを約し、Bは売買代金を前払いした。ところが、履行期が到来したにもかかわらず、Cは目的物を引き渡さない。
1  Bは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。
2  BがCの債務不履行を理由として売買契約を解除した場合には、Bは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。

平成2年・第1問
 Aは、夫であるBの事業が不振で家計にも窮するようになったため、Bに無断で、Bから預っていたBの実印等を利用し、Bの代理人としてB所有の土地をCに売り渡した。
1(1) Cは、Bに対し、その土地の所有権移転登記手続をするよう請求することができるか。
 (2) Cは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。Cの請求に対するAの反論についても含めて説明せよ。
2 Cが請求をしないでいる間にBが死亡した。A・B間には子Dがいたが、Dは相続を放棄した。この場合に、Cは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。Dが相続を放棄しなかった場合には、どうか。

平成2年・第2問
 Aは、B所有の茶器を所持していたところ、Cから100万円を借り受けるに当り、この茶器をCに質入れした。
1  この茶器は、AがBから預っていたに過ぎないのに、Bの承諾なしに、自己のものとしてCに質入れをしたものであった場合に、Cは、質権の実行により100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。次の3つの場合のそれぞれについて検討せよ。
(1) 現在、Cが茶器を所持している場合
(2) 質権の設定後にAの懇願を受けてCがこの茶器をAに引き渡し、現在は、Aがこれを所持している場合
(3) Cから茶器の引渡しを受けたAがこれを更にBに返還し、現在は、Bがこれを所持している場合
2  この茶器は、AがBに貸し付けた50万円の貸金債権の担保のためにBからAに質入れされたもので、これを、AがBの承諾なしに更にCに質入れしたものであった場合に、Cは、自己の債権の 実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。

平成3年・第1問
 Aは、甲土地の所有者Bを強迫して土地売却に関する委任契約を締結させ、Bの代理人として甲土地をCに売り渡した。Cは、駐車場として利用させるためDに甲土地を引き渡し、賃料に代えてDに甲土地を舗装工事をさせたが、その後に、Bが強迫を理由として右委任契約を取り消した。この場合におけるBとC・Dとの法律関係について説明せよ。

平成3年・第2問
 A、BおよびCは、共同してD所有のリゾ-トマンションの一室を代金1500万円で買い受けた。A・B・Cの間では、売買代金を各自500万円ずつ負担するとの約束があった。
1  約定の日に、BおよびCは、それぞれ代金として500万円を持参し、Dはこれを受領したが、Aは、代金を持参せず、その後も支払おうとしない。この場合、Dの採り得る法律上の手段について述べよ。
2  A・BおよびCは、マンションを買い受けた後、これを交代で利用していたが、AおよびBは、Cに無断で、マンションをEに賃貸し、Eがこれを使用している。この場合、Cの採り得る法律上の手段について述べよ。

平成4年・第1問
 Aは、Bに対して負う貸金債務を担保するため、自己所有の建物をBに譲渡して所有権移転登記をしたが、引続き建物を占有していた。ところが、Aが期限に債務を弁済しなかったので、BはAに対し、建物の評価額から被担保債権額を控除した残額を提供し、建物の明け渡しを求めたが、Aはこれに応じなかった。その後、AはBに対し、債務の弁済の提供をした上、建物をCに賃貸した。Cは、Aを建物所有者と信じて、長期間に渡りAに賃料を支払ってきたが、この間に、建物はBからDに譲渡され、その旨の登記がなされた。
 この場合における建物をめぐるAD間・CD間の法律関係について述べよ。

平成4年・第2問
 債権者取消権における「相対的取消(取消の相対効)」とはどういうことか、どうしてそのような考え方が出てきたのか、そのような考え方にはどのような問題があるかについて論ぜよ。

平成5年・第1問
 Aは、Bに対して、売却納品した物品の代金を支払うよう求めたところ、Bは、この取引はBの従業員Cが勝手にしたものであると主張して、支払わない。
 Aは、Bに対し、表見代理(民法第110条)による代金請求と使用者責任(同法第715条)による損害賠償請求とを考えている。Aが考えている2つの制度の関係について論ぜよ。

平成5年・第2問
 A社は、B社に対し、実験用マウス30匹を売り渡した。ところが、この中に、人およびマウスに有害なウィルスに感染したものが混じっていた。その後、Bの従業員Cがこのウィルスに感染して発病し、長期の入院治療を余儀なくされた。Bはこのウィルスに感染した他のマウス200匹を殺すとともに、Bの実験動物飼育施設に以後の感染を防止するための処置を施した。
 右の事例において、(1) Aに過失がなかったときと、(2) Aに過失があったときとに分けて、AB間およびAC間の法律関係について論ぜよ。

平成6年・第1問
 債権は相対的な権利であるといわれている。そのことと、債権が第三者により不法に侵害された場合に、債権者が、その第三者に対して、不法行為責任を追及し、あるいは侵害行為の差止めを請求することができる場合もあるとされていることとの関係について論ぜよ。

平成6年・第2問
 Aは、債権者からの差押えを免れるため、Bと通謀の上、売買仮装して、その所有する建物およびその敷地(以下、これらを総称するときは「本件不動産」という。)の登記名義をBに移転するとともに、本件不動産を引き渡した。その後、Aは、右の事情を知っているCとの間で、本件不動産につき売買契約を締結し、代金の支払いを受けたが、その直前に、Bが、Dに本件不動産を売却し、引き渡していた。Dは、AB間の右事情を知らず、かつ、知らないことに過失がなかった。ところが、右建物は、Cの買受け後に、第三者の放火により焼失してしまった。なお、その敷地についての登記名義は、いまだBにある。
 以上の事案において、本件不動産をめぐるCD間の法律関係について論じた上、CがAおよびBに対してどのような請求ができるか説明せよ。

平成7年・第1問
 飲食店経営者のAは、不要になった業務用冷蔵庫を、知人のBに頼んで破棄してもらうことにした。Aが、店の裏の空き地にその冷蔵庫を出しておいたところ、近所の住人Cも、不要になった冷蔵庫を破棄したいと思い、勝手にAの冷蔵庫のそばに自分の冷蔵庫を捨てた。Bは、トラックで空き地に乗り付け、そこに置いてあった2つの冷蔵庫を回収して、Dの所有する山林に不法に投棄した。これを発見したDは、付近が近所の子供達の遊び場になっているため、2つの冷蔵庫に各5万円の費用を費やして危険防止に必要な措置を講ずるとともに、A、Cをつきとめた。なお、Bの所在は、不明である。
 この場合に、DがA、Cに対してどのような請求ができるかについて、A、Cからの反論を考慮して論ぜよ。

平成7年・第2問
 A社団法人の事務・事業をその理事Bが行うにつき、Bの過失によりCが損害を被った場合において、責任の性質を踏まえながら、AのCに対する不法行為責任、BのCに対する不法行為責任、AがCに損害を賠償した場合におけるAのBに対する求償の可否・範囲について、Bが被用者である場合を対比して論ぜよ。

平成8年・第1問
 Aは、Bに対する債務を担保するため、自己所有の甲建物に抵当権を設定し、その旨の登記を経由した。その後、Aは、Cに甲建物を売却したが、Cへの所有権移転登記を経由する前に、Dの放火により甲建物が全焼した。
 この場合に、A、BおよびCは、それぞれDに対して損害賠償を請求することができるか。
 AがDに対して損害賠償を請求することができるとした場合、AのDに対する損害賠償請求権またはDがAに支払った損害賠償をめぐるBおよびCの法律関係はどうなるか。

平成8年・第2問
 Xは、Yに国際見本市の会場の1つとなる乙建物の建築を注文した。Zは、見本市の期間中、乙建物を出展用に使用するため、Xと賃貸借契約を締結した。この契約には、乙建物を使用させられないときはXがZに1000万円を支払う旨の損害賠償額の予定条項が含まれていた。ところが、乙建物は、完成後引渡し前に地震により全壊して使用不能となり、見本市の期間中には再築も間に合わなくなった。Xは、Zに予定どおり乙建物を使用させていれば、2000万円の収益を得られるはずであった。
 右事例において、(1) 地震の震度が極めて大きく、Yが耐震基準に適合した設計・施工をしていたにもかかわらず、乙建物が全壊した場合と、(2) 地震の震度は、標準的な建物であれば十分耐え得る程度のもので、Yの施工上の手抜き工事が原因で乙建物が全壊した場合とに分けて、XY間およびXZ間の法律関係について論ぜよ(なお、XY間の請負契約には民法上の規定と異なる特約はなかったものとする。)。

平成9年・第1問
 Aは、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後、Cに対し、甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは、甲と地上に乙建物を建築し、乙建物にDのために抵当権を設定して、その旨の登記をした。その後、Cは、甲土地上の庭先に自家用車用のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。  右の事案について、次の問に答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
1  Bの抵当権が実行され、Eが競落した場合、乙建物およびカーポートをめぐるEC間の法律関係について論ぜよ。
2  Dの抵当権が実行され、Fが競落した場合、乙建物およびカーポートをめぐるFA間の法律関係について論ぜよ。

平成9年・第2問
 多数当事者の債権関係において、複数の債務者全員を連帯債務者とするよりも、一人を主たる債務者とし、その他の者を連帯保証人とする方が債権者に有利であるとする考え方がある。この考え方について、契約の無効・取消し、債権の存続、譲渡および回収という側面から論ぜよ。

平成10年・第1問
 Aは、Bに対し、自己所有の甲建物を賃料月額10万円で賃貸した。Bは、Aの承諾を得た上で、甲建物につき、大規模な増改築を施して賃料月額30万円でCに転貸した。その数年後、Bが失踪して賃料の支払を怠ったため、AB間の賃貸借契約は解除された。そこで、Aは、Cに対し、「甲建物を明け渡せ。Bの失踪の日からCの明渡しの日まで1か月につき30万円の割合で計算した金額を支払え。」と請求した(なお、増改築後の甲建物の客観的に相当な賃料は月額30 万円であり、Cは、Bの失踪以後、今日に至るまで賃料の支払をしていない。)。これに対し、Cは、「自らがBに代わってBの賃料債務を弁済する機会を与えられずに明渡しを請求されるのは不当である。AB間の賃貸借契約が解除されたとしても、自分はAに対抗し得る転貸借に基づいて占有している。Bの増改築後の甲建物を基準とした金額を、しかもBの失踪の日からAが請求できるのは不当である。」と主張して争っている。
 AC間の法律関係について論ぜよ。

平成10年・第2問
 消滅時効と除斥期間につき、どのような違いがあるとされているかを論じた上で、次に掲げる権利が服する期間制限の性質やその問題点について論ぜよ。
 1  瑕疵担保による損害賠償請求権
 2  不法行為による損害賠償請求権
 3  取消権
 4  債務不履行による解除権

平成11年・第1問
 Aは、工作機械メーカーのBとの間で、平成10年1月10日、「Bは、Aに対し、同年5月31日までに、Aの工場専用の工作機械を製作してAの工場に設置して引き渡す」「代金(設置費用の実費200万円を含む。)は800万円とし、Aは、Bに対し、契約締結日に内金300万円の支払をし、工作機械の引渡しの日の翌月末日に残代金500万円の支払をする」との約定で契約を締結し、代金の内金300万円の支払をした。なお、工作機械を設置するには、Aが工場を事前に改造する必要がある。
 Bは、同年4月30日に工作機械を完成したため、その旨を直ちにAに連絡して工場の改造を求め、その後も度々改造を求めたけれども、Aが一向に工場の改造に取り掛からないため、工作機械を設置することができないまま、同年5月31日が経過した。なお、Bは、金融業者から工作機械の製作費用として300万円を借り、同年5月31日までの利息として20万円の支払をした。
 Bは、Aに対し、契約を解除する旨の意思表示をし、損害賠償として代金相当額800万円及び金融業者に対する利息金相当額20万円の合計820万円の支払を請求した。これに対し、Aは、その解除及び損害賠償額を争っている。
 まず、Bの契約解除が認められるかどうかについて論じた上で、仮に契約解除が認められるとした場合のAB間の法律関係について論ぜよ。

平成11年・第2問
 民法の規定によれば、①詐欺による意思表示は取り消すことができるとされている(第96条第1項)のに対し、法律行為の要素に錯誤がある意思表示は無効とするとされており(第95条本文)、②第三者が詐欺を行った場合においては相手方がその事実を知っていたときに限り意思表示を取り消すことができるとされている(第96条第2項)のに対し、要素の錯誤による意思表示の無効の場合には同様の規定がないし、③詐欺による意思表示の取消しは善意の第三者に対抗することができないとされている(第96条第3項)のに対し、要素の錯誤による意思表示の無効の場合には同様の規定がない。
 「詐欺による意思表示」と「要素の錯誤のある意思表示」との右のような規定上の違いは、どのような考え方に基づいて生じたものと解することができるかを説明せよ。その上で、そのような考え方を採った場合に生じ得る解釈論上の問題点(例えば、動機の錯誤、二重効、主張者)について論ぜよ。

平成12年・第1問
 Aは、画商Bから著名な画家Cの署名入りの絵画(以下「本件絵画」という。)を代金2、000万円で買い受け、代金全額を支払って、その引渡しを受けた。当時、ABは、本件絵画をCの真作と思っており、代金額も、本件絵画がCの真作であれば、通常の取引価格相当額であった。Aは、自宅の改造工事のために、画廊を経営するDに対し、報酬1日当たり1万円、期間50日間との約定で、本件絵画の保管を依頼し、報酬50万円を前払して、本件絵画を引き渡した。その後、本件絵画がCの真作を模倣した偽物であって100万円程度の価値しかないことが判明したので、AがBに対し、本件絵画の引取りと代金の返還を求めて交渉していたところ、本件絵画は、Dへの引渡後20日目に、隣家からの出火による延焼によって画廊とともに焼失した。
 以上の事案におけるAB間及びAD間の法律関係について論ぜよ。

平成12年・第2問
1  Xは、Yから甲土地とその地上建物(以下「甲不動産」という。)を代金2、000万円で買い受け、代金全額を支払った。当時、Yは、長年にわたって専ら家事に従事していた妻Zと婚姻中であり、甲不動産は、その婚姻中に購入したものであった。甲不動産につき、YからXへの所有権移転登記を経由しないうちに、YZの協議離婚届が提出され、離婚に伴う財産分与を原因としてYからZへの所有権移転登記がされた。
 この事案において、YZの協議離婚がどのような場合に無効になるかを論ぜよ。
2  上記の事案において、Yには、甲不動産以外にめぼしい資産がなく、Xのほかに債権者が多数いるため、Yは、既に債務超過の状態にあったものとする。また、YZが財産分与の合意をした当時、Zは、Yが債務超過の状態にあったことは知っていたが、甲不動産をXに売却していたことは知らなかったものとする。
 仮に、YZの協議離婚が有効であるとした場合、Xは、裁判上、だれに対してどのような請求をすることができ、その結果、最終的にどのような形で自己の権利ないし利益を実現することになるかを説明せよ。

平成13年・第1問
 Aは、Bに対し、自己所有の甲建物を売却して引き渡し、Bは、Cに対し、甲建物を、使用目的は飲食店経営、賃料月額50万円、期間3年、給排水管の取替工事はCの負担で行うとの約定で賃貸して引き渡した。Cが300万円をかけて甲建物の給排水管の取替工事をした直後、Aは、Dに対し、甲建物を売却して所有権移転の登記をした。
 この事案において、DがAからBへの甲建物の売却の事実を知らなかったものとして、DがCに対してどのような請求をすることができ、これに対し、Cがどのような反論をすることができるかについて論じた上で、BC間の法律関係についても論ぜよ。

平成13年・第2問
1  不法行為責任と責任能力との関係について説明した上で、責任能力が必要とされている理由を過失概念の変容と関連付けながら論ぜよ。
2  未成年者の加害行為に対する親権者の不法行為責任を問う法的構成について論ぜよ。

平成14年・第1問
 Aは、妻とともに、子B(当時18歳)の法定代理人として、Cに対し、Bが祖父からの贈与により取得した甲土地を、時価の500万円で売却して引き渡し、所有権移転の登記をした。Aは、妻の了解の下に、その売却代金を、AのDに対する500万円の債務の弁済に充てた。Aは、Dに弁済する際、甲土地の売却代金により弁済することを秘していたが、Dは、そのことを知っていた。AがDに弁済した時、A夫婦は無資力であった。その後、Bは、成人した。
1  A夫婦が売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てるために甲土地を売却したものであり、Cは、甲土地を買い受ける際、そのことを知っていた場合において、次の各問について論ぜよ。
(1)  Bは、Cに対し、甲土地の返還を請求することができるか。
(2)  CがBに対して甲土地を返還したとき、Cは、Bに対し、500万円の支払を請求することができるか。
2  A夫婦が売却代金をBの教育資金に用いるつもりで甲土地を売却したが、売却後に考えが変わり、売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てた場合において、Bは、Dに対し、500万円の支払を請求することができるかについて論ぜよ。

平成14年・第2問
 Aは、20歳の息子Bが資産もないのに無職でいることに日ごろから小言を言っていたところ、BがCから500万円の借金をしていることを知り、その借金を返済してやりたいと考えた。しかし、Bは、「親の世話になりたくない。」と言って、これを拒否している。AがBの上記債務を消滅させてやるためには、いかなる法律的方法があるか。AC間に新たな合意を必要としない場合と必要とする場合とに分けて論ぜよ。

平成15年・第1問
 酒屋を営むAは、飼育している大型犬の運動を店員Bに命じた。Bが運動のために犬を連れて路上を歩いていたところ、自転車で走行していたCが運転を誤って自転車を犬に追突させ、驚いた犬はBを振り切って暴走した。反対方向から歩いてきた右足に障害のあるDは、犬と接触しなかったものの、暴走する犬を避けようとして足の障害のために身体の安定を失って転倒し、重傷を負った。
 DがA、B及びCに対して損害賠償を請求できるかについて、それぞれに対する請求の根拠と、A、B及びCの考えられる反論を挙げ、自己の見解を論ぜよ。

平成15年・第2問
 Aは、Bから登記簿上330平方メートルと記載されている本件土地を借り受け、本件土地上に自ら本件建物を建てて保存登記を行い、居住していた。Aは、本件建物を改築しようと考え、市の建築課と相談し、敷地面積が330平方メートルならば希望する建物が建築可能と言われたため、本件土地を売ってくれるようBに申し込み、Bは、これを承諾した。売買契約では、3.3平方メートル当たり25万円として代金額を2500万円と決め、Aは、代金全額を支払った。
 以上の事案について、次の問いに答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
1 本件土地の売買契約締結直後に、本件土地建物を時価より1000万円高い価格で買い受けたいというCの申込みがあったため、Aは、Cとの間で本件土地建物の売買契約を締結した。しかし、専門業者の実測の結果、本件土地の面積が実際には297平方メートルであることが判明し、面積不足のためにCの希望していた大きさの建物への建て替えが不可能であることが分かり、AC間の売買契約は解除された。
 Aは、Bに対してどのような請求ができるか。
2 数年後、Bは、Aへの移転登記が未了であることを奇貨として、本件土地をDに売却しようと、「Aはかつて賃借人だったが、賃料を支払わないため契約を解除した。」と虚偽の事実を告げた。Dは、事情を確かめにA方に出向いたが、全く話をしてもらえなかったため、Bの言い分が真実らしいと判断し、本件土地を買い受け、移転登記をした。
 AD間の法律関係について論ぜよ。

平成16年・第1問
 AはBとの間で、A所有の土地上に2階建住宅を新築する工事について、請負代金を2000万円とし、内金1000万円は契約締結時に、残金1000万円は建物引渡し後1か月以内に支払うとの約定で請負契約を締結した。この事案について、以下の問いに答えよ。なお、各問いは独立した問いである。
1 Aは、Bが行ったコンクリートの基礎工事が不完全であるとして、Bに工事の追完を求めたが、Bは基礎工事に問題はないと主張してその後の工事を進めようとしている。AはBとの契約関係を終了させるためにどのような主張をすることができるか。
2 Aは、Bに内金1000万円を支払い、Bは約定の期日までに建物を完成させてAに引き渡した。ところが、屋根の防水工事の手抜きのため、引渡し後1週間目の大雨によって建物の2階の書斎に雨漏りが生じ、書斎内のA所有のパソコン等が使い物にならなくなってしまった。雨漏りによるパソコン等の損害を50万円、屋根の補修工事に要する費用を100万円とした場合、AはBの請負残代金請求に対してどのような主張をすることができるか。

平成16年・第2問
 Aは、Bに2000万円の金銭を貸し付け、その担保としてBの父親Cが所有する甲不動産(時価2500万円)に第1順位の抵当権の設定を受け、その旨の登記をした。Bは支払期限までにその債務を弁済せずに行方をくらませた。
 そこで、Cは、この抵当権の実行を避けるため、Aに対して複数回に分けて合計800万円をBに代わって弁済するとともに、残りの債務も代わって弁済する旨繰り返し申し出たので、Aはその言を信じてBに対して上記貸金債権について特に時効中断の手続をとらないまま、支払期限から10年が経過した。他方、その間に、Cに対してDが1000万円、Eが1500万円の金銭を貸し付け、その担保として、甲不動産につきそれぞれDが第2順位、Eが第3順位の抵当権の設定を受け、いずれもその旨の登記を了した。
 以上の事実関係の下で(Cが無資力である場合も想定すること)、Aが甲不動産に対して有する第1順位の抵当権設定登記の抹消を請求するため、Eはいかなる主張をし、他方、Aはこれに対していかなる反論をすることが考えられるかを指摘し、それぞれについて考察を加えよ。

平成17年・第1問
 工場用機械メーカーAは、Bから工場用機械の製作を請け負い、これを製作してBに引き渡した。その工場用機械(以下「本件機械」という。)は、Bが使用してみたところ、契約では1時間当たり5000個程度の商品生産能力があるとされていたのに、不具合があって1時間当たり2000個程度の商品生産能力しかないことが判明した。そこで、Bは、直ちに本件機械の不具合をAに告げて修理を求めた。この事案について、以下の問いに答えよ。なお、各問いは独立した問いである。
1 Bはこうした不具合があったのでは本件機械を導入する意味がないと考えているが、本件機械を契約どおりの商品生産能力の機械とする修理は可能である。Aが修理をしようとしないので、Bは代金を支払っておらず、また、Bには商品の十分な生産ができないことによる営業上の損害が発生している。この場合に、Bの代金債務についての連帯保証人であるCは、Aからの保証債務の履行請求に対してどのような主張をすることができるか。
2 Aが修理をしようとしないため、Bはやむを得ずDに本件機械の修理を依頼し、Dは修理を完了した。その後、Bは、営業不振により高利貸からの融資を受ける状態になり、結局、多額の債務を残して行方不明となり、Dへの修理代金の支払もしていない。この場合に、Aは本件機械の引渡しの際にBから代金全額の支払を受けているものとして、Dは、Aに対してどのような請求をすることができるか。

平成17年・第2問
 Aは、Bから3000万円を借り受け、その担保としてAの所有する甲土地及び乙建物(後記の庭石を除いた時価合計2900万円)に抵当権を設定して、その旨の登記をした。甲土地の庭には、抵当権設定前から、庭石(時価200万円)が置かれていたが、抵当権設定登記後、A宅を訪問したCは、同庭石を見て、それが非常に珍しい物であったことから欲しくなり、Aに同庭石を譲ってくれるよう頼んだところ、Aは、これを了承し、Cとの間で同庭石の売買契約を締結し、同庭石は後日引き渡すことにした。このAC間の売買契約を知ったDは、日ごろよりCを快く思っていなかったことから、専らCに嫌がらせをする意図で、Aとの間で同庭石の売買契約を締結して、Cが引渡しを受ける前に、A立会いの下で同庭石をD自らトラックに積んで搬出し、これを直ちにEに転売して、Eに引き渡した。
 この事案について、次の問いに答えよ。
1 CE間の法律関係について論ぜよ。
2 Bは、Eに対して物権的請求権を行使したいが、その成立の根拠となるBの主張について考察せよ。

平成18年・第1問
 Aは、Bに対し、A所有の甲絵画(時価300万円。以下「甲」という。)を200万円で売却して引き渡し、BはAに代金全額を支払った。Bは、その1か月後、Cに対し、甲を300万円で売却して引き渡し、CはBに代金全額を支払った。現在、甲はCが所持している。AB間の売買は、Bの詐欺によるものであったので、Aは、Bとの売買契約を取り消し、Cに対し甲の返還を求めた。
 1(1) Aの取消しがBC間の売買契約よりも前になされていた場合、AC間の法律関係はどうなるか。考えられる法律構成を2つ示し、両者を比較しつつ、論ぜよ。
  (2) (1)の場合において、Cが甲をAに返還しなければならないとき、BC間の法律関係はどうなるか。
 2 Aの取消しがBC間の売買契約よりも後になされた場合、AC間の法律関係はどうなるか。考えられる法律構成を2つ示し、両者を比較しつつ、論ぜよ。なお、これらの構成は、1(1)で示した2つの構成と同じである必要はない。

平成18年・第2問
 Aは、B所有名義で登記されている建物(以下「本件建物」という。)をBから賃借して引渡しを受け、本件建物で店舗を営んでいる。Aは、賃借に当たってBに敷金を支払い、賃料もBに遅滞なく支払ってきた。ところが、本件建物は、真実はBの配偶者であるCの所有であり、CがBに対し、Bの物上保証人として本件建物に抵当権を設定する代理権を付与し登記に必要な書類を交付したところ、Bが、Cに無断でB名義に所有権移転登記を経由した上、Aに賃貸したものであった。
 以上の事案について、次の問いに答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
 1  Aが本件建物を賃借してから1年後に、Aは、その事実を知ったCから本件建物の明渡しを請求された。Aは、Cに対し、どのような主張をすることが考えられるか。
 2  Aは、本件建物がBの所有でないことを知った後、Cに対してBとの賃貸借契約が当初から有効であることを認めてほしいと申し入れたものの、Cは、これを拒絶した。その後、Cが死亡し、BがCを単独相続したところ、Bは、Aが本件建物を賃借してから1年後に、Aに対し本件建物の明渡しを請求した。
  (1) Aは、Bに対し、BがCを単独相続したことを理由に本件建物の明渡しを拒絶することができるか。
  (2) 仮に(1)の理由で明渡しを拒絶することができないとすれば、Aは、Bに対し、どのような主張をすることができるか。特に敷金の返還を受けるまで本件建物の明渡しを拒絶すると主張することができるか。
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