岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『紅白が生まれた日』を観れば、NHKの苦悩がよくわかる。

2015-03-23 06:34:34 | 映画・DVD 
といっても昨夜放送だから、観る機会が限定されるかもしれません。
私は、録画して今朝と昼に観ました。
(実家の日立WOOに外付け録画機能があることを最近発見。この話も書きたい)

NHKが紅白を初めて放送した(ラジオ)、1945年12月31日の話です。
このラジオ放送を聴いたことを覚えている人は70代以上の方でしょう。
出場した歌手や演者を知っている人は少ないと思います。
私も名前だけは知っている程度です。

1945年といえば敗戦の年、GHQは日本占領政策を始めてばかりで、試行錯誤の最中です。
放送手段といえばNHKしかなかったわけですから検閲も厳しい。
朝ドラ『花子とアン』が戦中のラジオ放送を扱っていて、今回は敗戦直後です。
表面的には権力者が入れ替わっただけのように思えますが、ことはそうは単純ではありません。
米国の占領政策で成功したの唯一日本だといわれるそうです。
その政策の要の一つがメディアコントロールで、「アメリカさん」にけなげに対応するNHK幹部も
自信なさそうでほっとするところもあります。
今のように肥大した上に、時の権力の風見鶏になっていることに比べればかわいらしく見えます。

観ている私たちに訴えるリアル感というのは、肉親をなくした人々の悲しみやそれを象徴する焼け跡です。
西日本では淡路阪神大震災の長田地区、東日本大震災でも多くの焼け跡がありました。

NHK放送90年といえば関東大震災直後に設立されたことになるので、焼け跡のなかで放送を
続けたことになるわけです。

主演は、復員兵の松山ケンイチ(彼自身の復活であり、NHKにも後ろめたさがあったのかもしれません)はよかった。
彼は戦争中に権力者に管理された負い目を抱えている。

相方を務める女子職員(本田翼)は、戦争中には出兵した男性職員に代わってNHKの職場を守ってきたという自負があり、男性が復職することで女性の就労環境が悪化していることを訴えている。
実は、男性が戦場に行っている間に女性が実力を付けてくるというのは当然のことで、女性力アップの下地は戦争中に作られていた。
これは世界共通です。
彼女もとてもよかった。

他に、アイデンティティに悩む日系2世が重要な役割を果たすのも見所です。

見る人の立場によってさまざまな解釈ができるドラマになっており、今の時代背景を
配慮しながらも製作現場の熱気を感じさせるところもあり、いろいろ考えさせられる
よいドラマだったと思います。

映像や音楽構成もよくできていました。

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