今となっては懐かしいお二人ですね。
この映画の主人公の一人、カール・マルクスの生誕200年だそうです。
少なくとも150年は、マルクス・エンゲルスの思想が世界をリードしたのですから、大変な思想家には違いありません。
この映画は、1840年代を描きます。
地域は、ドイツ(プロイセン王国)、フランス(パリ)、イギリス(マンチェスター、ロンドン)、ベルギー(ブルッセル)
ドイツ人(カール・マルクス)とイギリス人(フリードリヒ・エンゲルス)が、歩き飲み討論して書いた街と国です。
1840年代の欧州の政治状況が見えてきます。
イギリスでは、ビクトリア女王時代。
世界に先駆け、産業革命が進み、ブルジョアとプロレタリアが対立する。富むものは富、貧するものは路頭に迷う。
フランスでは、「レミゼラブル」の時代。
フランス革命以後、王なき国は、混迷を深めていた。
ドイツ(プロイセン王国)は政治的に後れを取っていた。
ベルギーは、小国の自由から先進的な人々が集う国となっていた。
マルクスにとって、インターナショナルとはこれらの国々のことだろう。
ロシアはまだ未開の地扱いをされていた。
プロイセンで生まれたマルクスは国内で高等教育を受け、新聞社で記事を書くことで論客として認められたが、
王国からは危険人物と見られ、パリに移る。
パリで、エンゲルスと歴史的な出会いをする。
エンゲルスはマルクスの思想家としての力量を高く評価し、天才だとまで言う。
一方、マルクスは、ブルジョワの子弟ながら、プロレタリアの街を歩き、貧困調査をしているエンゲルスの力量に驚いている。
映画は、字幕つきだったが、絶えず英語、フランス語、ドイツ語、そしてアイルランド訛りと同じ人物が複数の言語を操る。
この辺りは知識階級だと納得させる。
例えば、エンゲルス親子は、ドイツ語で会話をしていながら、話の途中で英語になる。
会話に都合の良い言語を使い分けていくのである。
マルクスは、同じユダヤ系ながら貴族の女性と結婚し、
エンゲルスは、アイルランド移民の女性と結婚する。
この対比が興味深い。
マルクスの妻は相当なインテリであり、興味深い。
当時の著名な思想家(活動家)が顔を出す。
バクーニン、プルードン、というアナーキズムの思想家がでてくる。
この二人を批判して「空想家」という。
それは、資本や所有に対して明確な理論を持たないからと。
哲学的な継承からヘーゲル、フォイルバッハの名も。
そして、行動することに意義を見出す二人は、コミュニスト党宣言に向かう。
1848年、「共産党宣言」が産声をあげる。ヨーロッパを徘徊する幽霊となって。
本を読んでもイメージできにくい人々の営みが、映像ではくっきり浮かび上がってくる。
私は楽しみ考えに耽ることができた映画だった。
見られたらいかがですか。
特にシニアにとっては、考える場となると信じます。