岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

戦争の傷跡

2008-11-22 11:32:41 | 戦争を語り継ぐ
最近の家庭訪問で80代の男性にお会いする機会が多くなりました。
京都では男性宅に訪問する機会は少なかったのですが、こちらでは多いように思います。
80代の男性は、なんらかの形で戦争に関わっています。
もちろん、今も健在ということはあの悲惨な時代をなんとか生き延びてこられたということです。
戦場に行って九死に一生を得た人。戦病で帰国し生き延びた人。
軍需産業に従事し戦場に行かなかった人。内地で訓練中に敗戦になった人。本当に人さまざまです。

皆さん、戦争の傷跡を体や心に負っておられます。
心の傷跡の現れかたは、黙して語らない人、反対に饒舌に語る人などに人によって分かれますが、
多くの方は話をしていただけます。
戦争を経験された男性の方や空襲を体験された女性の方にとって、戦争は人生最大の出来事です。
このことを抜きには心から話し合うことはできません。

女性は空襲で身内の方をなくす、戦場で兄弟をなくすという悲劇に堪えて生き抜いてきましたし、
男性は同期や同郷の仲間を戦場で失い、自らが生き残ったことの罪悪感を今も持ち続けています。
それは国に対する怒りや行政に対する怒りに置き換えられることもあります。

例えば、軍人で戦病者になられた方には国は年2回JR全国利用券が送られます。
その切符を使って靖国神社のいくわけですが、ご本人の気持ちは複雑です。
「友人を弔えというのか、生き残って恥じよ、と国が考えているのか」と話されます。
職業軍人で中隊長をしていた人は、今でも部下との交流を続け、戦争時の体験が
人生の中で唯一価値のあるものとして、生活の大半を占めています。

戦争体験がどのように人々の心を傷つけてきたのか。
もちろん、なくなられた方の人生は強制的に閉じられてしまいました。

このことを調査・記録し、分析検証をすることが重要だったのではないでしょうか。
単に記録するのではなく、心や生活に与えた影響という視点が必要だと思います。
戦争さえなければ、生き残った人々の生活やこころのありようは全く異なっていたでしょう。
すべては取り返しのつかないことです。

この試みは反戦へとつながるでしょう。
反戦思想が、説得力を持つためには、このような研究が必要だと考えています。 

※写真は市内北部の民家の土蔵。

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