北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

外国人目線で考える~インバウンド観光を迎える心構えと実践とは

2016-10-01 22:46:38 | Weblog

 一応私も会員になっている造園学会北海道支部の支部大会に参加してきました。。

 午前の第一部の研究・調査・報告の時間では、札幌市での1,000㎡未満の狭小公園に関する研究報告がありました。札幌市では、公園の機能分担を進める観点から、地域と話し合いをしながら小さな公園では遊具等を撤去する動きがあります。
 
 しかしながら面積が狭小でも、日常的に利用が見込まれるケースもあるのではないか、特に自前の専用庭を持たない認可外保育園などでは外遊びの空間としての公園は大きな意味を持つと言います。

 かつて「児童公園」と言った250㎡ほどの小さな公園は、子供の数が少なくなって子供が遊ばなくなったことやお年寄りの利用も増えたということで、「街区公園」と名前を変えて、適切な配置計画が立てられています。 

 しかしここへきて、自動よりももっと低年齢のゼロ歳から2歳くらいまでの小さな子供たちの子育てにはもっと小さな公園が適しているのだそう。それは、面積が小さい公園は小学生が遊びに来ないので、小さな子供たちにとって安心な空間になること、また狭い方が行動範囲が限られるので保護者の目が行き届くので良いという利点もあるのだと。
 
 小さくても地域の公園が子育ての重要なスペースになっているというのは嬉しいものですね。
 
 

   ◆   ◆   ◆

 

 
 後半はテーマシンポジウムが開かれましたが、今年のテーマは「インバウンド観光と北海道の公園~外国人旅行者への対応と魅力ある管理運営」というものでした。

 パネリストに道内の国立公園や滝野公園を含む国営公園の管理をしている方たちも登場しましたが、興味深かったのは三人目に登場した鄭佳昇(てい・かしょう)さん。

 彼女は台湾出身で、北大で国立公園を研究するうちに北海道の自然に魅了され、今ではアジア諸国に北海道への個人旅行を紹介するための活動をされている方。外国人の視点で、北海道の観光対応の進め方に優れた感性と批評眼をもっています。

 まず、北海道には、四季がはっきりしている、というアジアの中では他では得られない魅力があると言います。中島公園の写真を紹介して、「市内でごく普通に紅葉が見られる都市なんて他にないんです、すごいんです」と大絶賛。

 それに乳製品、海産物、美味しい野菜など食の分野でも優れていて、これらは東京では食べられない質の高さがあること、また身近な公園があることも良いと言いますが、なかでも滝野すずらん丘陵公園は、冬は無料だし手近に雪と遊べるのが素晴らしいと言ってくれました。関わったものとしてはちょっと誇らしいです。

 …とまあ魅力には事欠かない北海道ですが、今のブームを継続しリピーターを増やすためにはまだまだ改善を図らなくてはならない点も多くあります。


 調査の結果、出発前に得た旅行情報源は、個人のブログが一番でした。それは利用者目線の細かい情報があってわかりやすい。また自分の国の親族の口コミも馬鹿にできません。

 日本滞在中ではやはりインターネットということになるので、WIFI環境はもう情報インフラとしての充実は急務です。

 そして情報を提供できるホームページは多言語のものの作成が重要でそのうえで、情報の質にも以下の注文をつけていました。

 ①外国人の目線から考えること
  →目的地までの具体的なアクセス情報や常識でもしっかり伝えること。なにしろ北海道の冬は4時半にはもう暗くなるということだって、我々には常識でも、外国からのお客様には初めての土地柄なのです。

 たとえば、日本ではトイレにペーパーを流すことは常識ですが、ただ「紙は流してください」と書いてもその背景情報がわからないと、そういう常識を持っていない外国人には混乱するばかり。「日本ではそういうシステムになっている」と念入りに書いてあげることで安心します。

 ②正確な情報、伝わる訳文に注意
  →外国人が読むと「???」となるような表現が平気で掲載されいて、しかも日本人にはチェックができないというのは始末が悪いですね。ネイティブのかたにしっかりと見てもらうことが大事。      

 ③定期的に更新して最新情報、リアルタイムの風景を提供すること
  →一晩でこんなに雪が降ります、という情報は貴重です。

 こうして聞いていると、当たり前のことのようですが、それが実践できていないという事もよくわかりますね。


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 鄭さんは看板や標識の多言語化という取り組みには消極的な感想をもっています。それは、狭い看板スペースにたくさんの文字情報を詰め込むことで結果として文字が小さくなってしまって読めなくなっていること。言葉で長々と書くよりも、万国共通で分かるような一枚のピクトグラムで簡潔に情報を伝える方を勧めます。

 また、過度なサービスはかえって日本の普通の暮らしぶりを表していないと感じているからだ、とも。外国で流行った映画のロケ地だからと言って、そこに外国語の看板を掲げてしまっては映画の中の風景でもなくなってしまいますし我々の日常の暮らしはそこにありません。

 日本人がローマを訪ねて、日本語で「コロッセウム」と書かれた看板で写真を撮りたいとは思わないでしょう。ここはやはりイタリア語の看板が欲しいですよね。

 だから一過性のブームになりがちな観光情報サービスを頑張ってするよりも、私たちが普段の暮らしを楽しむ姿を見てもらった方が良いのだと。

 そして真のおもてなしとは、相手の国もわからないのに外国語で声をかけるよりも日本語で「こんにちは」という事。そして頼られたときに嫌な顔をせずに親身になってあげること。そういう心細い外国で出会った誠実さは口コミによって、国の魅力として伝わってゆくのです。

 自然体の姿で良いところと、しっかりと情報発信に努めるという頑張るべきところにメリハリをつけた実践行動が必要なんだと強く思いました。

 大いに知的刺激を受けた一日でした。


   【看板は最高のコンテンツですね(笑)】

コメント
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