旭川駅の真ん前にあった道北唯一のデパート、西武旭川が9月末をもって閉店しました。
西武デパートは私が旭川にいた高校二年生のときに回転し、それまでは地場のデパートしかなかったところへ、東京からのハイセンスなデパートが進出してきたもので、当時は包装紙一つでも都会の香りがする憧れがありました。
特に個人的な思い出としては、高校で活動していた工芸同好会の作品発表会をこのデパートの催事場で行ったことが印象的です。
もちろん作品展示は売り物だったわけではなかったのですが、当時の私の素人作品を「三万円で売ってくれませんか」と申し出てくださったご夫婦がいて驚いたことが思い出されます。
思い出深いデパートでしたが、もう何年も行ったことはなく、旭川を訪ねても買い物をすることはありませんでした。一つの時代の終わりですね。
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デパートの撤退は日本各地の地方都市で起きていますが、こと旭川のまちづくりとして見ると、旭川駅が作り替えられて後ろへ大きくセットバックして駅との関係性が少し弱くなってしまったこと。
また駅前通りとの間に超大型ショッピングセンターができるというまちづくりをされてしまっては、対人口当たりの商業床面積が増えたという点でも辛かったかと思います。
しかし最大の要因は、やはりデパートというスペースをテナントに貸すという形のビジネスが消費者から支持されなくなったということでしょう。
お客が来ない、お客が物を買ってくれないという点で、ビジネスモデルとしてはもう成立しておらず、かけている費用に対してリターンが見合わない、つまり効率性が悪くなっていたわけ。
これからの日本経済の行く末においてこのことを考えると、こういう産業・企業には退場していただいて、労働者はより効率性の高い分野へ配置転換してもらうべきだ、ということになります。
しかし現実には、労働者は地場から動くことはほとんどかなわず、そして地元にはより効率の良い産業や職場などはなかなか登場することはなく、失業者が増えるという段階を経ることになります。
理論上求められるより効率的な産業・企業の登場を待つまでの時間は地域にとって苦しい時間となってしまいます。
労働者の視点で見ると、かつてのニシン漁、林業、石炭産業など、産業の栄枯盛衰によって人材は増減しますが、一人の人間の中で知識や経験を新たな分野へ移動させるという事は決して楽なことではありません。職業訓練などで、新しく伸び行く分野への転換がスムースに果たされることが求められます。
まちづくりの視点で言うと、駅前の一等地の大きな商業床がなくなってしまうわけで、建物の維持管理を行う観点からも、新しいテナントが入ってくれることが望ましい。しかしデパートというビルの形態は、窓が少なかったり、エスカレーターが真ん中にあるなど、簡単にどんなテナントでも入れるというものでもないため再利用が難しい。
またモータリゼーションを背景に、地方都市では郊外地が低コスト化するなかで高コストを支えるビジネスモデルがみつからず、コンパクトシティはなかなか実現しないこと。
おそらく、現実的で安定的なオフィス需要としては行政=市役所しかみつからないように思いますが、旭川市そして市民はどのようにこれからのまちづくりを考えるでしょうか。
注目とともに応援していきたいと思います。旭川、がんばれ。
【在りし日の旭川駅前】