「蕎麦打ち」というと、人気の趣味の一つですが、全国各地には素人手打ち蕎麦の愛好会が数多くあります。
私は「北海道そば研究会」という手打ち蕎麦の会に参加していますが、こうした手打ち蕎麦の会に参加することで地域の蕎麦打ちイベントなどに裏方として参加して、地域の活性化に貢献することができますが、参加しているとやはり志を同じくする友人や仲間に恵まれるので、人生は豊かになります。
全国の蕎麦打ち愛好家による「一般社団法人 全麺協」という団体がありますが、実は私の参加している「北海道そば研究会」がこの会の会員団体になっていることから、私も孫会員のような形になっていて、そんな全麺協から会報が届いていました。
全麺協の定款には、会の目的として「そばを通しての人間形成を目指し、心豊かで潤いのある生活の実現を図るとともに、地域活性化に取り組む各種団体と連携し、相互扶助と協働の精神に基づいたそばによる地域振興を進めることを目的とする」と書かれています。
蕎麦打ちを単なる個人の趣味に終わらせることなく、自己の人間形成とともに、地域の活性化に貢献しようという趣旨が謳われていて、具体的な会の活動としては、素人そば打ち段位認定試験を全国各地で開催し、それ以外には蕎麦文化の振興理念に合致するようなことを推進しています。
今回の会報に全麺協の事務局長さんの文章が寄せられていました。そのなかで、蕎麦打ち段位認定試験のためのテキストに掲載されている、哲学者の石川文康先生の言葉の一節が引用されていました。
石川先生は「そばブーム」という言葉を冷ややかに見られていて、次のように述べられています。
「ブームとはやがて過ぎ去る一過性の熱病みたいなものだ。もともとそばにはブームなどというものは似合わない。そばには淡々とそばに向き合う姿勢こそが似つかわしい。それに何よりも、全国には、地道にそのような姿勢を堅持し、そばを愛し、そば打ちに専念する職人や愛好家がいることを知っている。
また、そば打ちの工程が精神浄化作用の役割を果たすこと、その証拠にラーメンには盛んに『激戦区』という表現が使われるが、そばには『そば街道』というどこかのどかで旅情や郷愁を誘う、ある意味で『聖域』なのだ」という一節です。
「ラーメンは激戦区」で「そばはそば街道」とは、初めて気が付きました。
他の店と戦うイメージのラーメンと、皆で寄り添い協力し合いながら地域の色合いを醸し出す街道を形成する蕎麦の違いを良く言い表していますね。
事務局長さんの文章のタイトルは「我々は競争をしない」とされていて、彼は「この言葉を全麺協の『会是』としたいと思うのだが、皆さんのお考えはいかがだろうか」と締めくくっています。
世はなべて競争の時代。競争こそが切磋琢磨して発展を生み出す、という考えがありますが、その一方で、協力して地域を盛り上げるという発展の形もあるように思います。
両方の道を上手に使って活性化につなげていきたいものですね。