今日は、自転車部品や釣り具の世界的メーカーとして知られる㈱シマノのバイシクルコンポーネント事業部長の神保部長をお迎えして、「自転車【で】楽しむ散走」というお題での自転車セミナーが開かれました。
「散走」という単語は馴染みのないものですが、これは「ぷらぷら歩く散歩」に対して「ぷらぷら自転車で走ること」をあらわす単語として、シマノが自転車文化を世に問うために、もう十年以上も前から使い始めている単語なんだそう。
そこでは、自転車部品メーカーのシマノでありながら、自転車で走るという事はメインではなく、自転車をツールにして地域をめぐりながら豊かな時間を過ごす、ということが究極の目的なんだそう。
サイクリストというと、ともすると自転車で長距離を走りたくて仕方がない、という人が多いのでしょうが、実は(自転車に乗ってみたいけれど、そんなにガリガリ走りたくはない)という人だって多いはず。
自転車で地域の美味しいものを食べ歩いたり、ちょっと遠くの景色を眺めてみたり、風を感じたいという、自転車を使って得られる楽しみはあるはずで、そういう楽しみを追求しようというのが「散走」という考え方なのです。
シマノは、東京の南青山と大阪の中之島に「OVE」という自転車によるライフ・クリエーション・スペースを展開して、自転車を道具としていろいろな価値を作ってゆきたいと活動しています。
そんな散走の考え方を広めてもらおうと、東京と大阪のOVEでは全国の関心のある自転車リーダーを集めて、それぞれの地域での散走のイメージ作りのお手伝いをしています。
地域のお寺を巡ったり、鍋料理を巡ったり、風景景色を眺めるのに、自転車を使ってみる。大阪七福神散走、桜と水辺の街並み散走などのほかにも、俳人を迎えて俳句を作りながら走る吟行散走なんてのがあるかと思うと、噺家を仲間に入れて、うなぎ屋で一席噺を披露してもらうなんていうのもあるそうですよ。
興味は人それぞれで、テーマを楽しむ時間を過ごすのですが、誰かと一緒ならもっと楽しいかもしれない。そんな、旅と日常の中間的存在が散走です。
東京で「オランダ建築散走」という地域に広がるオランダを探して歩く散走があったそうです。
なんとオランダ大使館を眺めていたら、大使が出てきてちょっとした説明をしてくれたのだそう。
すると、ロードの自転車でイベントに参加したところ、最初から100kmを走らされて自転車が嫌になったという女性が、このオランダ散走で「こんなに楽しい遊びがあるとは!」と言ってくれたのだそうで、神保部長さんは、「それがとても印象的でした」と言っていました。
さて、札幌だったら、どんなテーマを持った散走があるでしょうか。
決して気張った観光振興が目的でもなくて、参加者一人一人の満足と楽しさにつながって、それがまた自転車に乗りたくなる体験になっていく。
神保部長さんは、こうおっしゃいました。
「環境のためになるから自転車に乗る、なんていうのは続きません。でも楽しい走りだったら続くんです」
「バイシクルって直訳すると二輪車ですよね。ただ形態を言い表したにすぎません。でも日本語はそれを"自ら転がす車"って訳したんです。その感性が素晴らしいと思いませんか」
ガリガリ走らずに、地域を自転車で楽しみましょうよ。