釣りに「手返し」という言葉があります。
手返しとは、魚を釣り上げてから魚をはずし、エサをつけ再度仕掛けをポイントに投入する一連の動作のことを言う、とされていて、この一連の動作が早くできることが釣果を大きく左右するというのです。
ワカサギ釣りを始めてやった時に「手返しが悪いとだめですよ」などと言われて、(何のことかな?)と思っていたのですが、ようやくそのことの意味することが分かってきました。
ワカサギのような数を釣る釣りの場合は特に、どれだけ短時間に下準備をして釣糸を長く垂らしていられるかが勝負のポイントになります。
それなのに、最初のころは、餌をつけるのにえらくモタモタしていましたし、餌をつけようとして仕掛けがからんだり、釣っているうちに仕掛けがこんがらがってそれをときほぐすのに30分も費やすとか、とにかく一つの作業にとっても時間がかかって、釣りどころではありませんでした。
釣れないはずです。
そうした状況を改善するためにはとにかく何度もやってみて慣れるしかありません。上手な人からコツを聞いたところで手が動かなくてはやはりどうにもなりません。
ずいぶん悔しい思いもしましたが、自分なりに工夫をしたり、便利な道具を買ったり作ったりして時間短縮とトラブル防止に努めます。
たとえば仕掛けに餌をつけるのだって、テントの紐にゼムクリップを一個取り付けて、ここにひっかけてぶら下げることで格段に安定かつ効率的に餌がつけられるようになりました。
それに餌だって、10分も垂らしていれば新鮮味が薄れて食いつきが悪くなるので、一定時間がきたらとにかく付け替えるようにしますが、この手間でやはり食いつきが格段に向上します。
餌となる紅サシも、袋の中から取り出すのではなく専用のケースに入れて専用のピンセットを使うことで交換時に何秒か稼げます。
少しでも効率を上げることが釣果につながるので、効率性をどう追及するかというテーマも面白くて、いろいろな工夫をすることにもワクワクするところがあります。
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昨日会った観光ガイドのIさんは、「ガイドがお客さんを相手にしてお世話をするためには、餌をつけてあげたり、釣れた魚を取ってあげたりしなくちゃいけないので、相手が多い時は大変です。
僕がガイドを雇うかどうかの基準は、5本とか7本の針に餌を『2分で付けられること』と決めています」と言って笑っていました。
手返しという名の効率性の追求って、仕事も趣味もキーワードは「効率性」なんですね。