今日は私が勤める舗装事業協会の総会が開かれました。
総会は大きな議論もなく淡々と進み終了しましたが、今回の総会では、「せっかく全道から多くの人たちが集まるのだから、少し役に立つような講演をしてはどうか」ということになり、私に白羽の矢が立ちました。
「小松さん、何かお話をしてくれませんか」
そういうことなら、(では二宮尊徳の報徳のお話をしよう)と心に決めました。
二宮尊徳は1787~1856年を生きた、きわめてすぐれた農村指導家であり、かつ思想家、そして実践家でした。
彼は北関東の飢饉で疲弊した村々を救済して歩き、そのやり方を報徳仕法と呼び、彼を慕う多くの門人たちによってその仕法や考え方が広められました。
彼の「道徳と経済は両方とも大切」とか、「分をわきまえて節約し、余ったら他に譲れ」という「分度・推譲」、小さなことをコツコツ続けることで大きなことができるという意味の「積小為大」などは、今日なおゆるぎない価値ある考え方だと思います。
また彼自身の、自らは質素なみなりや倹約を旨とし、人一倍働くことで周囲の人々を奮い立たせるようなリーダーシップの姿も、今日の組織マネジメントには参考になることばかりです。
しかし、時代背景として社会的な制度インフラが脆弱な時代に農村救済で光を放った報徳仕法でしたが、行政組織が整ってきた今日、また工業や商業、金融などが存在を増している今日では、報徳の思想が生きる場面は、個人の生き方の中だけなのかもしれません。
私の中では語り慣れた二宮尊徳さんの人生ですが、やはり北海道の中では最近めったに聞かれなくなったようで、聞いた多くの人たちが「初めて聞きました。良いお話でした」と言ってくれました。
誰も、なぜ学校の校庭に二宮尊徳の幼少時代の二宮金次郎の銅像があるのか、なんて考えたこともないし、聞いても教えてくれる人もいなかったことでしょう。
中には、「ぜひうちの会社でも話をしてほしい」と言ってくれる方もいて、細々ながら、報徳思想の浸透に向けて努力していきたいと思います。
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すると懇親会で挨拶に立った方が、こんな話を聞かせてくれました。
「今年のお正月にある銀行が、百年続く企業がどのような企業理念で会社を経営してきたかを調べてみたのだそうです。するとそれが『カ・キ・ク・ケ・コ』の頭文字で表現できることが分かったというのです。それは、
カ=感謝
キ=勤勉
ク=工夫
ケ=倹約
コ=貢献、という五つのことで、先ほどの小松さんの話にどこか通じるものがあるように感じました」
まずは組織としてしっかりした理念をもった企業になり、それを実現するという目標を明確にすることが大事、ということなのでしょう。
何人かと話をしながら、私のプレゼンへの感想を聞いているとある若い方がこんな風に言ってきました。
「いや、とても良い話で、もう少し勉強したくなりました」
「それは良いことですね、良い本もたくさんありますよ」
「ええ、それをわかりやすく教えてくれる漫画なんてありませんかね」
ガクッ
「そんな徳のないことでどうしますかーー!(笑)」
まだまだ話の通じない人がいるとは、私の努力が足りないのか。もっと精進しないといけませんね。