今日は、所属している都市計画学会北海道支部のセミナーが開催され、旭川でのイベントとまちづくりについて二人の講師からお話を聞きました。
一人目は、旭川市役所経済交流課長補佐の住吉さんで、旭川で9月に開催されている食のイベント「食べマルシェ」に関連して、「『北の恵み 食べマルシェ』と市内中心部のまちづくりについて」というタイトルで、中心市街地での食のイベントについてお話を伺いました。
お二人目は、やはり旭川市内で、女性限定参加のランイベントについて、「『ランニングで女性をキラキラかがやかせる』をコンセプトにした女性だけのランイベント『スイートガールラン』について」というお題で、ランニングイベント開催の裏話などを聞かせて頂きました。
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【食べマルシェ2016のホームページより】
まず始めの、「食べマルシェ」関連。私も中学校、高校時代を旭川で過ごしたので土地勘があるのですが、駅前真正面の道路を昭和47年に全国で最初に恒久的歩行者天国にしてできあがったのが「平和通買物公園」。
学生だった当時はよく自転車で行ったものですが、商店街にはデパートにレコード屋さん、喫茶店に飲食店などのお店が軒を連ねていて、人通りも多くとても賑やかだったことを思い出します。
しかし人口の減少や、郊外への移動などにより、市内中心部での歩行者数は年年歳歳減少傾向に歯止めが掛りません。この30年間で三分の一になった、というデータもあるそうです。
こうしたことを背景としつつ、まちなかの活性化をめざして昨年で7回目を開催したのが「北の恵み 食べマルシェ」という、9月の三連休を中心とした飲食出店イベントです。
コンセプトは、中心市街地の賑わい創出、農業や食品製造業の振興などですが、さらに北・北海道の農畜産物・海産物などの魅力の発信なども考えられています。
昨年の出店者数は約320者にのぼり、期間中の来場者は100万人を超えています。出典者からは出店料の割には売り上げが良いとのことで、評判は上々だそう。
このイベントは、中心市街地活性化計画にも位置づけられており、そういう意味では警察などの協力も得られやすいとのこと。
気になるのが、路面の既存店との競合です。目の前でお客さんを取られると思うようでは活性化にはならないかもしれません。
そうしたことへの対策として、2,000円で2,100円分の前売りチケットをローソンチケットなどでも販売していて、これが「食べまるショップ」という協賛店舗ではイベント終了後、約一カ月間有効のお得なチケットになっており、既存店での消費を喚起しています。
イベントを運営する中での課題は、経費のより圧縮と駐車場の不足なんだそう。経費では、警備に対する負担が大きく、最初は市役所職員が交通整理などに当たっていたのが、やはり警備員でなくてはいう事を聞いてくれないという実態があって、事故への備えなどもあり警備への負担が大きいそう。
また、出店者の車を止めておくための駐車スペースが市内中心部の近くには不足気味とのことで、イベントを開催するうえでは、そうしたインフラも必要。
さらに、「歩行者天国」とはいえ、管理上は道路であるため、緊急車両が走れる幅の確保が必要など、警察などの規制や指導は結構厳しいものがあるとも話されていました。
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お二人目の「スイートガールラン」については、旭川市内のお菓子屋さんカトルカールを経営されている前田博さんからのお話です。
【スイートガールラン2016のホームページより】
前田さんは、若い時はほとんど運動をしなかったのですが、あるとき急にトライアスロンへ参加することを思い立ったのだそう。「一つの競技だと飽きてしまうけれど、トライアスロンだと、ランニング、自転車、水泳があるので、続けられる」と笑います。
ランニングイベントは、始めは競技性が強かったのが、日本では2007年の東京マラソンから、都市型参加イベントとしての脚光を浴びるようになり、タイムを競う「つらい・苦しい」ものから、「参加して楽しい」というイベントに変貌したのです。
好きなウェアで思い思いの走り方で楽しむというスタイルが受けてきて、ウェアやシューズも機能性だけではなくファッショナブルなものが増えているとのこと。
そんななか、前田さんは東京のお台場で開催された「ラン・ガール・ナイト」というイベントを見て、(これだ!これをやらなきゃだめだ)と思い、それを旭川という地方の中くらいの都市でやることが地域貢献になると考え、実際には個人ボランティアの延長として実行委員会を作って開催に尽力しているのだそうです。
「札幌でやるともっとたくさんの人が参加して華やかになると思うのですが、どうも札幌ではそれをやろうという人がいないのか、実現していないですね」
旭川の「スイートガールラン」は、「ランで女性がキラキラさせる」をコンセプトにしていて、ただ走ってタイム計測をするだけではなく、スイーツ、フード、コスメ、マッサージなど、女性が喜ぶ体験が加わっているところが特徴で、昨年大会では約350人の参加があったそう。
内訳では市外からの参加者が50%近くあって、初参加という方は約三分の一で、三分の二は常連さん。参加者の年代は50歳代のボリュームが多かったのが最近は30代も増えてきて、さらにはファミリー参加の姿も見られるようになったとのこと。
「最近は仮装して走るという方が増えていて、走る前のフェイスペインティングなんかも大人気です」と前田さんはおっしゃいます。
以前にはこのスピンオフ企画で、「スイートガールラン・パーティ」という、走らないけれどランニングに興味のある女性限定のイベントなども行い、ランや身体に関するワンポイントセミナーやボディケア体験、ランウエアのファッションショー、コスメブースなどを楽しむイベントも行ったそうです。
ランニングがウェアや健康、お化粧などの周辺分野ともコラボした、より広範な楽しみ方になっているようです。
前田さんは、これからの課題として、「本当は同じ走るにしても、みんなに見られるような公道を走りたいと思っているのですが、なかなか警察の許可がおりません。また以前は空き地がたくさんあった区画整理エリアの北彩都も土地が売れてしまって、参加者の駐車場が不足しています」とインフラの不足を嘆いています。
面白いと思ったのは、小さなチップによるタイムの自動計測で、「道内業者さんに見積もりを出してもらうと90万円くらいで出てくるのですが、本州の企業に頼むとその三分の一でできちゃうんです。本当は道内企業を使ってあげたいのですが、300~400人のイベントだとその経費の大小が収支に大きく影響してしまう」とのこと。
「でも、『あなたが、旭川だけでやる』というのなら協賛するよ、と言ってお金を出してくれる企業さんもあって、これからも旭川の役に立つと思ってやっていきます」
ランニングが、女性を中心にした楽しみをコラボして地域の売り込みにつながるイベントになるというのは素晴らしいですね。
そして、「食べマルシェ」と「スイートガールラン」のどちらにも共通して、駐車場などのインフラの不足や、各種の規制による様々な制約が影をさしているという事に繋がって興味深いものがありました。
会場からは、「人口減少が進んで地域が疲弊していく中で、今あるインフラや先人が作ってきたストックを生かして、もっと富を生み出すにはどうしたらよいか、を地域でも真剣に考えるべきだ」という指摘があり、一同うなずきました。
足りないものは足りないと言いつつ、今あるものを賢く使う。そんな知恵を地域から発信して、地域の活性化につなげてほしいということで、最後は都市計画学会らしいセミナーとなりました。
参加して下さった皆様、ありがとうございました。