北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

中頓別の新ホットスポット「カフェヤマフク」で小林町長からいかに中頓別が村上春樹の小説に影響を与えているかを聞く

2022-06-01 21:57:34 | Weblog


        【まちなか拠点になっているカフェヤマフク】

 

 久しぶりに中頓別町を訪問して小林町長さんと夜に懇親会ができました。

 以前知人から「確か中頓別に、北大でDMO(=観光地域づくり法人)の勉強をして認定を受けた方がいたはずです」と聞いていたことから、小林町長さんに「ぜひその方も交えて意見交換したい」とお願いして、Hさんにも同席をしてもらうよう町長にはお願いをしていました。

 無事にHさんにも参加いただけたのですが、「実は今日の懇親会は僕と妻でやっているカフェでやっていただく企画にしました」とのこと。

 そのカフェとは、中頓別で初めてのカフェと言える"カフェヤマフク"。新しい中頓別のホットスポットです。

 外からは分からない感じですがお店の中は瀟洒な作りのカフェスペースになっていて、メニューもちょっと都会っぽいものが出されてインスタ映えもするもの多数。


          【自家焙煎珈琲をお土産に二袋買い求めました】


  【中頓別でこのレベルのピザが食べられるとは思わなかった(失礼!)】

 このお店を始めたきっかけは「地域の人たちの交流スペースになれば良いな」ということだったそうですが、実際に開いてみると地域交流の場だけではなくここのお店を目的にした観光客が多く訪れるようになってきて「それは意外でした」とのこと。

 さらには"ヤマフクコーヒー"として自家焙煎のコーヒー豆のネット販売も手掛けていて「これが結構人気が出てまして」。

 ちかくにはお茶漬け屋さんもできたそうで、よそから移住してきた方たちによる魅力的なスペースが増えてきて、「ちょっと面白いことになりそうです」と小林町長も嬉しそうです。


     ◆


 ところで中頓別と言えばやはり村上春樹の小説「ドライブ・マイ・カー」に触れずにはいられません。

 もともと文芸春秋に村上春樹さんが短編小説の「ドライブ・マイ・カー」を上梓したときに、小説のなかでドラマのカギを握る中頓別町出身(という設定)の女性ドライバーの"みさき"が車の窓からタバコを捨てるシーンがありました。

 そのシーンに対して町民から「うちの町ではそれが当り前じゃない」というクレームが発せられて、単行本化されるときに出身地が"上十二滝町"に書き改められたというのはつとに知られた「ドライブ・マイ・カー」にまつわるエピソードです。

 今回は映画にもなって堂々とアカデミー賞で賞を取ったこともあり、ドライブ・マイ・カーの聖地巡りなどもありそうなものですが、映画の影響が強くて北海道のロケ地だった赤平市に行く人が多いとも聞くところです。

「本来ならば、僕は町長さんに村上さんを何としてもお訪ねして『はじめに中頓別出身と設定したそのイメージの源は何だったのでしょうか』と訊いてみてほしいくらいですよ」と私が言うと町長は「いや、まあ実際彼はだいぶこの地域をロケハンして実際にこの地域をよく見ているのだとは思うんです」と言います。

「そうおっしゃるその理由は?」
「初期三部作の一つである『羊を巡る冒険』が美深とその隣の仁宇布(小説では十二滝町とされている)を示しているのだろうというのは多くの村上春樹ファンには理解されていると思うんですが、そこで描かれている"羊牧場"は"十二滝町から3時間かかる"と書かれているんです。

 仁宇布から概ね3時間の距離にある場所で小説が描くような場所だとすれば多分そこは幌延町が近いように思えます。さらには"羊たち…"の中に"柔らかい岩"という単語が出てくるのですが、これはおそらく蛇紋岩質の場所のことに違いありません。中頓別にも蛇紋岩が出る地層があって、なにしろ小説の中で書き表されている風景が私の知っている昔の知駒(しりこま)峠にそっくりなんです。
 なので、彼は中頓別を含むこのあたりをかなり入念に歩いていてその風景の断片などがこの小説に散りばめられているんだと強く感じます」

「なるほど、みさきの出身地の名前は上十二滝町に変わっても、この小説を彩る風景要素に中頓別は生きていると。十分村上春樹小説の聖地の名に値しますね」 

 すると小林町長は、「もう一つ、強い印象を持ったことがあるんです」と言います。

「何ですか?」
「ドライブ・マイ・カーで西島秀俊さんが演じた主人公の名前が"家福悠介(かふくゆうすけ)"といって家福なんてあまり聞かない名前で登場しているんです」

「はいはい、映画では縁起の良い名前だ、なんて言われてましたね」
「実は中頓別のはずれに"福家(ふくいえ)"さんというお宅があって、私は村上春樹は絶対にここを訪れたりインタビューしているんじゃないか、と睨んでいるんです(笑)」

 なんと面白い! ドライブマイカーの主人公の名前のいわれも中頓別に由来しているのではないか、という小林町長の私的独善的村上春樹分析。

 でもそうやって小説から周りが想像力を膨らませたくなるのが村上春樹の小説の魅力なのかもしれません。

 うーん、実は中頓別はハルキストの隠れ聖地なのではないでしょうか。

 ハルキスト諸君、身に来なくていいのえすかー?

 

 


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