こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

コミックス『大奥』全十九巻 よしながふみ(ネタバラシの極致かもしれませんので、読了後に読まれる事をおすすめします)

2023-09-25 19:59:17 | アニメ・コミック・ゲーム
 
 
徳川幕府が開かれて間もなく、感染した男性のほとんどが亡くなるという赤面疱瘡という病が流行。
徳川三代将軍・家光も感染し亡くなった事から、その娘が女性という事を隠して家光として世を治めることとなった。

ただ、時代としては女将軍は世界から軽く見られあらゆる意味で外交的に問題があるため、鎖国を行う事となる。

将軍という地位は、当事者にとって女でなくとも(政にまともに向き合う人物なら)重いものであるが、ほとんどの女将軍はみな民のためを思い政治に携わっていく。

時に彼女らは、幕府内であっても女というだけで軽く扱われ、責任と共にその重圧に耐えきれなかったり、やはり女であるがゆえに過酷な状況に置かれたりもした。

あらゆる意味で彼女たちは、壮絶な人生を歩んだと言える。
しかし、そんな中でも色々な物事や家族、景色などで、ささやかな喜びや楽しみ、癒しの時間を持てる場合もあり、それが本人ばかりか周りの者ども、ひいては読者としても息抜きであり、一服の清涼剤として多くの人々を、一時的とはいえ和ませたのではないかと感じた。

個人的には、女将軍のうち、吉宗、家重、家茂が特に印象深く。
市井の者としては、やはり女として登場した平賀源内が忘れられない存在となった。

幕末になって来ると、病の予防法と治療法が現れ確立されてきて、将軍職も男性に戻すべきではとなり、とある歴史的有名人でさえ、そこに至る長い感染症との戦いに気づかないのか女性差別意識を露にする。

やがて未だ男性優位が根強い海外との関係を慮って、代々の女性将軍の証拠となる書類は燃やされてしまうのだが、彼女たちの魂の輝きと、その思いの尊さは忘れられないと思える。

フィクションではありますが、このような奥深く壮大で、かつ、繊細で思いやりに満ちた、善悪すべてにわたっての心の機微まで描いた素晴らしい物語を描いて下さったよしながふみさんには、最大の感謝と尊敬をお贈りしたいと考えます。
何が出来るというわけでもありませんが、最高の大河物語でした。ありがとうございました。

追記:念の為全十九巻セットと、一巻だけのと、Amazonのリンクを貼っています。状況に応じて使い分けて下さい。
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