こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『コンビニたそがれ堂 夜想曲』村山早紀

2024-08-17 20:05:34 | 読書感想
 
風早の街の駅前商店街のはずれに、夕暮れどきに現れる時がある不思議なコンビニ「たそがれ堂」
風早神社の白狐の神様、風早三郎が経営しているお店。

今回は昭和レトロがテーマだそうです。
昔、テレビドラマでもあった赤ちゃんの取り違えや、宇宙戦争の末裔たちが風早に住んでいたりと、なかなか興味深くはあります。
一方「夢みるマンボウ」に出てくるあまりにも優しい女性や、戦争孤児だった三太郎さんの願いなど、切なさでは語り切れないつらさも内包しつつ、それでも思いやりに満ちている人々の物語が心を打ちます。

そもそも、このシリーズの根底には人々の思いやりが流れていると私は思っているのです。
なので、ほとんどの方におすすめします。
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『車椅子探偵の幸運な日々』ウィル・リーチ

2024-08-14 20:26:15 | 読書感想
 
現在26歳のダニエルは、生まれて間もなくの頃に進行性の難病となり、今は喉に痰が絡むと吐き出せない状況になっており、呼吸停止の危険にさらされていると言える。

それでも地域航空会社の苦情メール対応の仕事もしつつ、生まれた時からの幼なじみであるトラヴィスとフットボールゲームの観戦に出かけるなど、結構楽しんでいる。

そんなダニエルが毎朝玄関ポーチから通りを眺めていると、携帯を見ながら歩いていく女学生らしき女性を見かける。
ところが彼女が初めて顔を上げてダニエルに会釈したまさにその日、やはり通りかかった車に乗せてもらって去った後になって、彼女が行方不明となり捜索願いが出されてその両親も母国から飛んできたという事態に陥っている事を知った。

要するにダニエルは彼女が誘拐される現場を見た目撃者となるのか?
その上、ダニエルは匿名とはいえ不用意にSNSにその事を投稿し、あろう事か接触してきた被疑者へ偽名にしても返信してしまう。

何と言いますか、ホラー映画じゃないけれどフラグの立てすぎじゃないですかダニエル?(^_^;)
探偵としてばかりじゃなく、成人としてかなり危なっかしいと感じてしまいます。
まあその分、ハラハラドキドキで楽しめるとも言えるのですが。

あと本題とは関係ないかもしれませんが、物語に出てきたアメリカ南部では未だに有色人種に対する差別や、選挙投票のへの妨害などを行っているというところ、古臭い考えの持ち主が多いのですね。
変な言い方で申し訳ありませんが、アルビノが一番偉いと主張しているようで(アルビノが悪い訳でもありませんが)たかが肌の色の違いだけでおかしいと思わないのですかねえ?
そういう偏見による行為を何でもないと言ってしまうところは、ダニエルも(無意識にしろ)白人至上主義的なところもあるのかな?と残念に思いました。
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『隠し子騒動 妖怪の子、育てます4』廣嶋玲子

2024-08-09 19:51:57 | 読書感想
 
久蔵の双子の娘に声を掛け、強引に父のもとへと連れて行かせた少女おまきは、自分自身も久蔵の娘だと名乗った。
久蔵はというと、おまきとまったく縁が無いわけでもないが娘として迎え入れる事は出来ないと言う。
中身は貧相なのに衣裳が豪華という、身なりがちぐはぐな状態で現れたおまきの事情とは?

幼い頃に人の世から隔絶されてしまうと、感覚がこうなってしまうのでしょうか?
騒動が収まるかにみえて、まだ火種が燻っていそうな状況。
まだまだ黒幕が隠れていそうで、今後が気になるところです。
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『spring』恩田陸

2024-08-05 20:19:38 | 読書感想
 
深津純の語りから始まるこの物語。

のちにバレエダンサーで振付師となる萬春についての話です。

JUNこと純のHALこと春の出会いは、バレエのワークショップ。
HALは時々、どこかを見ていた。
JUNも見られているようで見られていない、全体を見ているような不思議な見方が気になっていた。
HALの周りには、数多溢れんばかりの才能を持った少年少女が、きらめくばかりに存在していた。

2番めの語り手はHALの叔父の稔。
3番目は彼と同じバレエ教室に通い、のちに作曲家になった滝澤七瀬。
4番目にして、ようやくHAL本人が語り始めます。

そこまで3人の関係者が見てきたHALの真意はどこにあるのか?何を感じ考え思ってきたのか?
そういう意味では、この物語にはミステリ要素も強いのかもしれません。

あと、私の勝手な見方ではありますが、もしかしたら恩田さんは「さすがにこれは映像では再現できまい」という「挑戦状」と言うと語弊がありますが、小説でのみ描ける物語を書こうとされたのではないかと感じました。
すべての登場人物の個性がが生き生きと息づく、素敵な群像劇でもありました。
他にも現代ならではの個性もあるのですが、読んでからのお楽しみという事で強くお薦めします。
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