こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

「澤田瞳子さんに聞く物語世界の楽しみ方」in八幡東生涯学習センター尾倉分館2階やはた能舞台

2024-11-24 20:36:02 | アート・文化
本日、直木賞作家の澤田瞳子さんの講演会に、やはた能舞台に行ってきました。
主催は八幡図書館です。

デビュー作から様々な賞をお取りになり、直木賞も受賞され、サイン本の転売などに憤りすべてにサインをするという前提で本を出されたり、ある著作では能登の義援金として澤田さんの利益すべてを送ると決めたりと、結構、話題に欠かない事をなさっているようです。

もちろん、それぞれの作品にまつわる話題もたくさんですし、母で同じく作家でもある澤田ふじ子さんのエッセイに描かれた小学校低学年時代の瞳子さんの微笑ましいエピソードも聞かせていただきました。

さらに今回は、福岡にご在住の東山彰良さんが客席にいらしていて、最近大阪で行われた文士劇の事まで話題に上り、作家ならではのエピソードとして、元々のキャラクター像にありきたらずそれぞれの想像力を駆使して「いや、このキャラクターはどう考えても委員長というよりも生徒会長だろう」などという人物設定の下で役になろうとされるという面白い話も伺いました。
ホント、福岡でもやっていただけないでしょうか?

今まで様々な講演会を拝聴しましたが、ここまで濃密で多岐にわたる話題で、楽しい時間を過ごさせていただくのは初めてかもしれません(梶尾真治さんは別として)。

質問コーナーもありましたが、本来の澤田さんファンのために遠慮させていただきました。
『星落ちて、なお』しか読んでいませんしね。

最後にお楽しみ抽選会もあり、私は八幡図書館グッズが当たりました。

愛らしいイラストのクリアファイルと八幡図書館開館記念の文庫カバー(スピン付)とメモ帳でした。
嬉しいです。
ちなみに大当たりは2名で、澤田さんのサイン入り色紙でした。
うらやましくなんてないもんね(ツンデレw)

今回は特に楽しませていただいたので、またこういう企画があれば参加したいです。
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『境界の扉』エラリー・クイーン

2024-11-23 20:07:33 | 読書感想
 
日本育ちでニューヨーク在住の人気女流作家カレン・リースが首を刺されて死んでいた。
しかも第一発見者のエヴァ・マクルーアが犯人としか考えられないくらい、現場が密室状態になっていた。

この物語ではエヴァが出てくる時にはエヴァ視点で進行していくので、読者は彼女の心理状態を知っていて、あらかじめエヴァが犯人ではあり得ないことが分かっています。
また、エラリーと犯行後の現場に同席していた私立探偵のテリーは、彼女の無実を信じてくれます。
問題はクイーン警視が現場の物的証拠から犯人をエヴァと考え、エラリーと対立する立場になる事。
いつもは協力し合うクイーン警視も、敵に回すと結構手ごわい相手です。

エラリーの推理の進み具合も読んでいてとても楽しく、二転三転する物語の展開もハラハラドキドキで、文字通り最後まで気を抜けないミステリでした。
とても楽しめました。
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『星落ちて、なお』澤田瞳子

2024-11-21 20:01:29 | 読書感想
 
物語は明治22年春、河鍋暁斎の通夜から始まる。

主人公の娘、とよは5歳の春より父から絵の手ほどきを受け始め、絵描きとして曉翠を名乗る。
ただ女というだけで半人前として扱われ、しかも兄、曉雲は、12年前に17歳で養子先から戻ってから稽古を始めたのにもかかわらず一番父の奔放な筆を引き継いでおり、かつ、とよを憎んでいる。
とよとしても父から娘ではなく、弟子としてしか見てもらえていなかったのではという思いを抱いている。

いくら通夜から葬儀までの世話を引き受けてくれる大店の主がいて、その場でよく気をきかせてくれる弟弟子がいたとしても、頼りになる身内が1人もいないというのは心細かっただろうと感じました。
また、時の流れとは言え暁斎の絵が流行おくれとしての扱いしか受けられなくなり、同時にそれを引き継ぐ自分たちも同様の見方しかしてもらえず、その才能と努力を認めてもらえないというのは歯がゆく、先行きが不安になるとともに誇りを傷つけられるものだったと考えました。

さらに娘を授かって母にはなったものの、自分自身も父と同じように娘に対するのではないかという不安もきつかったろうと思いました。
彼女が晩年に至って人生を振り返るにあたり、その心の波がいくらかでも凪いでいたらいいなと感じつつ本を閉じました。

とても波乱に満ちた生涯だったと思います。
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『ソロキャン!3』秋川滝美

2024-11-18 19:56:23 | 読書感想
 
榊原千晶は現在31歳。
総合スーパー「ITSUKI」を軸とするグループ会社「五木ホールディングス」に勤めて7年目になる。
勤め始めてしばらくは、会社とひとり暮らしのアパートを行き来するだけの生活を続けていたが、ひょんなことから学生時代に楽しんでいたキャンプを再開。
しかもソロキャンプ。
それだけに自分の思い付きで出かけられ、他人の顔色をうかがう必要もないためストレス発散効果絶大。
仕事もうまく行くようになり公私ともに充実した日々を送っていた。

とはいえ、このところ天気不良のためなかなかキャンプに行けなかった。
そのために油断して、せっかく天気予報で晴れとの週末の三連休にキャンプ場の予約に出遅れたのはいなめず、せめて実家でくさくさする気分をなだめようと思っていた。

ところが以前何度か行ったことのあるキャンプ場の管理人、鳩山さんから三連休にキャンセルが出たとのショートメッセージ。
彼の姪、美来を手助けしたことが縁で彼女の悩みも聞き、親しみも持たれたようだが・・・。

まず美来の不登校と卒業と進学の問題。
こういう進路ややり方、考え方もあるんだと感心することしきりでした。

他にも一人で焚火だけでもしてみたいとキャンプ場にやって来た少年に、注意とアドバイスをし、フォローもやったり、千晶の昇進も伴って若手社員との人間関係に迷ったりと様々な出来事があって、物語内で悩んでいるのは千晶ですが、現在の自分自身の悩みや迷いとも相通じるものがあって、とても共感を覚えました。
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『なぞとき』畠中恵

2024-11-11 20:11:42 | 読書感想
 
小鬼が悲鳴を上げて若だんなの元に駆け込んできた。
じきに表れた手代の佐助の頭からは血が流れ、頬や額にいくつもの傷をこさえていた。
佐助は妖でもあるせいか、もっぱら強い。
なのにこの傷は小鬼がつけたものと平然としている。
実のところ、小鬼の手は柔らかく爪も鋭くないため、そのような傷を作ることは不可能なのだ。

このような佐助の傷の謎から始まり、町で評判の器量よしで非の打ちどころのないお照さんの縁談が破談になった訳など、毎度のことながら若だんなの周りには不思議がいっぱいです。

今回特に好きなのは「長崎屋の怪談」と「あすへゆく」
前者は天麩羅に足が生えて逃げ出すユニークなものですし、後者は父の藤兵衛から初仕事を任され張り切る若だんなが微笑ましく楽しみでもありました。

基本、江戸時代の日常ミステリですので、興味のある方はぜひ!
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