こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『狩人の悪夢』有栖川有栖

2017-05-16 19:37:12 | 読書感想
今回の有栖は、人気ホラー作家・白布施正都との対談をきっかけに、彼の亀岡の自宅に招待される。
近くのオーベルジュで、白布施の担当編集者も含めて夕食を摂り、彼の家の悪夢を見る部屋に泊まった翌日。
近所の人から、彼のもう一つの持ち家の様子がおかしいと連絡があり、駆け付けてみると、そこには他殺死体があった。

白布施のアシスタントだった渡瀬といい、夢遊病を持つ矢作といい、どこか怪しげな人物が登場する本作ですが、物語が終わってみると、犯人といい、被害者の一人といい、よかれと思ってしていた事が、悪夢を生んでしまったように思われてなりません。

火村の推理はスッキリ決まったのですが、人々の感情はモヤモヤの残る終わり方ではありました。
もちろん、面白い作品なのは、間違いありません。
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『あきない世傳 金と銀(三) 奔流篇』高田郁

2017-05-14 19:51:47 | 読書感想
1巻の源流篇を読んでから、ちょうど1年になりました。

今回の幸は、惣次と夫婦になる事を決心し、惣次も幸が粗末に扱われる事の無いよう、婚礼の日に町内への祝儀銀も出す事にした。
夫婦になってからの幸は、夫を立てつつも五鈴屋のため、事ある毎に商売の新しい案を出し、それが店を盛り立てる事となった。
惣次が不実な事をしなければ・・・。

四代目の元ご寮さん・菊栄が、また幸の前に現れ、手堅く商売をしているのを知る事ができたのは嬉しいですし、元番頭の治兵衛の回復も安心できる事なのですが、惣次がねえ。
幸が自分より商売の才覚がありそうなのに、焦っているのでしょうか?
跡継ぎの心配もありますし、惣次の顔をつぶさずに、幸がうまく商売をやっていけるといいのですが。
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『居酒屋ぼったくり(6)』秋川滝美

2017-05-10 19:31:26 | 読書感想
居酒屋ぼったくりは、年に一度だけ『秋休み』と称して連休を取る。
それは十月第二週目、体育の日を含む三日間で、先代のころからの習わしだった。

今回、妹の馨は恋人の哲と関西に二泊三日の旅に出た。
肝心の美音は、ただでさえ仕事に忙殺されている要に気を使わせまいと、要が来そうな時間になる前に、店の引き戸のお知らせの紙をこっそりと剥がすなどの工作をし、自宅で家事をして過ごすつもりだった。

美音は、幸せの陰で思いがけない決意をしていたのですね。
うーん、確かに美音には居酒屋の主という姿が一番はまっていますし、家に収まっていても息苦しいでしょうが、だからと言って・・・ねえ。
悩ましいところなんでしょう。
何かいい解決策があるといいのですが。
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『錆びた太陽』恩田陸

2017-05-08 19:23:49 | 読書感想
原発事故で汚染され、人間は立ち入り禁止になった地域で、7体のヒューマノイド・ロボットが働いていた。
そこにある日、予告もなく国税庁職員と名乗る、謎の女が現れた。
彼女の目的は、何なのか?

主人公は、ロボットたちのリーダー格『ボス』
マイペースなこの謎の女・財護徳子に振り回されながら、政府が隠す愚かな企みを暴くことになる。

ロボットたちに名付けられた個体名に、まず笑わされ、さらに、ところどころに挿入される様々なネタにニンマリしながらも、今の政治家や官僚を見ていると、あながち、こういう事態も考えられないことではないと、ゾッとしました。

この物語にも書かれていましたが、今さえよければいいという刹那的な人々が、政治の中心にあるように思えてなりません。
今の政治に不安を感じている方々は、かなり、共感できると思います。
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『すごろく巡礼 代書屋ミクラ』松崎有理

2017-05-07 19:24:00 | 読書感想
昨今の研究者は、三年ごとに論文を一本は書き、しかも、質が基準に達していないと解雇されてしまう。
そんな彼らのために論文執筆代行業者、通称、代書屋がいる。

その中の一人、ミクラは、彼が惚れている心理学研究所の助教が調査のために旅に出たことで、そこの教授に頼まれたこともあって、連れ戻しに行くことにした。

目的地は、巡礼の島、辺路島。
そこでは年に一回、すごろくによる巡礼の祭りがあるという。
ミクラも「ゑ」という駒になって、島を周ることになった。

本当に人間が駒の役割となって島を巡る、このすごろく。
ある意味命がけで、少しは心の整理になってはいるのでしょうが、こんな結果になってしまったのが、何とも切ないことでした。
続編があるのなら、幸せにしてもらいたいものです。
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