こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『星をつなぐ手―桜風堂ものがたり―』村山早紀

2018-10-13 19:54:08 | 読書感想
桜風堂書店を預かった月原一整は、間もなく田舎の書店の辛さを味わう。
入荷すると疑いもしなかった時代物の大人気シリーズの久々の新刊『紺碧の疾風』の予定入荷冊数が〇冊になっていたのだ。
年齢層が高めのこの書店では愛読者が多く、発売日にどうやって入荷すべきか頭を悩ませていた。

新刊を入荷する方法ばかりでなく、桜風堂書店のために一整が以前勤めていた銀河堂書店や当時応援した作家たち、桜野町の住人はもちろんの事、町に関わる人々がこの書店の事を想ってくれます。
現実の書店では、なかなかこう上手くはいかないかもしれませんが、地方の書店ができるだけ生き延びて欲しいと思うのは、私も同じです。

個人的な事を言わせていただくと、小学生の頃に家の近所にあった書店や中学校時代に学校の近くにあった書店、高校時代からは小倉魚町にあった「ナガリ書店」に、とてもお世話になりました。
特にナガリ書店は、小倉でのSF大会「コクラノミコン」のパンフレットをここで目にしたおかげで、初のSF大会参加となり、そういう仲間にも巡りあえました。
ずっと利用していたのに、チェーン店に客を奪われたのか、潰れてしまったのがとても辛かったです。
だからこそ、少なくともリアル書店を利用し続けたいと思っています。
どうか、リアル書店で本を買う楽しみをご存知の方だけでも、できるだけ、お近くの書店で買い続けてください。
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『風に恋う』額賀澪

2018-10-09 19:42:35 | 読書感想
中学3年生だった茶園基は、幼なじみの鳴神玲於奈との約束の1つ、全日本コンクール出場が叶わなかったのと、かつて憧れだった千間学院高校吹奏楽部が、このところ全日本コンクールに出られなくなった事もあって、高校では吹奏楽部に入らないつもりだった。

しかし、入学したその高校の吹奏楽部で、全日本コンクールに行った当時の部長・不破瑛太郎が、コーチとして戻って来た事を知り、やはり、入部する事に決めた。

基を見ていると、吹奏楽、いや、音楽の神様に愛される者って、ここまですっ飛んでいるのかな?と思いました。
笑ったのは、大迫一中の《歌うお茶メガネ》と春辺二中の《いやらしいトランペットの人》
何じゃそりゃ?ですが、説明を聞いて納得!でした。

真面目な話に戻しますと、全国に行くところは、血のにじむような努力を日々、続けているんだと感じました。
それでいて、ただ、音楽に全てを捧げればいいわけではなく、将来を見据える事も忘れないように、本人だけでなく指導者も知っていなくてはならないのですね。

そういう意味で不破コーチは、人生迷ったからこそ独りよがりにならず、生徒たちに的確なアドバイスができるようになったのではないでしょうか>

最後に、ブラック部活動というものが、全国にどれくらいあるのか分かりませんが、全ての生徒たちの未来が明るく開かれている事を、願ってやみません。

額賀さんの作品の中で、最高に面白い作品だと感じました。
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『むすびつき』畠中恵

2018-10-05 19:50:08 | 読書感想
しゃばけシリーズの今回のテーマは、輪廻転生?

広徳寺に納められた妖になっている宝玉と、それに関わった者どもの話や、若だんなの留守中に長崎屋にやって来た三人の死神や、鈴彦姫の鈴が吊るされている五坂神社の亡き宮司にまつわる金についてや、前世の若だんなを知る鬼女とその許婚、そして、生き物の生まれ変わりを知り気が大きくなった青物の振り売りなど、なかなか、妙な出来事が続きます。
中でも最後の夕助は、考えなしなところはあるものの、その行動様式が人に褒められたいという方向なのが、ま、いいかな?と思いました。
ただ、その結末が、いい結果なのかは分かりませんけど。

気になるのはその後の書き下ろし。
タイトルが「終」って、シリーズがじゃないですよね。
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『ゆっくり十まで』新井素子

2018-10-04 19:59:37 | 読書感想
新井素子さんの「偏愛」をテーマにしたショートショート集・・・らしいです。
あ、・・・は、「偏愛」に対してです。
元々、Web上で読ませていただいていましたが、確かに変、と言うか妙。

本のタイトルになっている「ゆっくり十まで」や、魔物の出てくる「王妃様とサミ」は普通にファンタジーなのですが、熱帯魚や竹視点はともかく、無生物視点って何(笑)

も、もしかしたら、ゆくゆくは、星へ行く船シリーズの珪素系生物(だっけ?)とのファーストコンタクトも描けるんじゃないかと、期待してしまいます。

ちなみに今回、この中で特に気に入っているのは「百二十年に一度のお祭り」と「体重計」だったりします。
なかなか楽しいですよー。
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『僕が恋したカフカな彼女』森晶麿

2018-10-03 19:38:00 | 読書感想
中学時代からあらゆる女性にもて過ぎていた深海楓は、実はまだ人を好きになった事が無かった。
その空しさに気づいた楓は、高校に入ってからはカノジョを作らないつもりだった。
しかし、入学して一か月の間に十二人の男子生徒を振った女子生徒がいると聞いて、不可能趣味をくすぐられた楓は、初めて恋文というものをしたためた。

そんな彼女の名前は、架能風花。
楓の恋文を駄文と言い捨て「チャンスをくれ」と言う楓に「カフカにおなりなさい」と言った。

初めは全く好意さえ無かったのに、無意識に彼女の名前を呟くまでになるとは、変われば変わるものですね。
今回は、黒猫シリーズに比べると闇こそ内包しているものの、コメディ要素が多いように思えました。
あとがきによると、森さんのミステリは、あまり謎に重きを置いていないようなのですが、それでも惹かれてしまうのは、白と黒では黒の物語がほとんどの森作品だからなんでしょう。
この作品も、推理小説とは言い難いくらい、謎解きがほとんどありません。
でも、とても面白いのでお勧めします。
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