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星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

春は眩暈の時。。。

2005-03-04 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
・・・あなたはあのすばしっこいいたずら好きの妖精、
   ロビン・グッドフェローでしょう。いきなり
   手臼を動かして村の娘をびっくりさせたり、
   おかみさんがバターを作ろうとミルクをかきまわすなり
   そばからその上澄みをすくってむだぼねをさせたり、
   ビールの酵母を泡立たなくしてだめにさせたり、
   夜の旅人を迷わせ、困るのを見て大笑いしたり、
   かと思うと、ホブゴブリンとかかわいいパックとか
   呼んでくれる人には力になって幸運を与えてやるとか。
   そのパックでしょう、あなたは?
       (シェイクスピア『夏の夜の夢』小田島雄志訳)

今月の初め頃? なぜだかパックの夢を見た。
春の空にはそろそろ、あの眠たげな、どこか気だるげな、霞みが漂い始め、、、私はまだ軽症だけど、わずらわしい思いでいる人も。。・・・パックが振り撒く、<恋の三色スミレ>の雫は、、、目覚めて最初に見た人を恋してしまうという媚薬・・・そのおかげで、人間たちも、妖精たちも、愛と笑いにつつまれるのだけど、、この空のもやもやが、そんな夢の花の粉であったらいいのに。。

シェイクスピアの 'A Midsummer Night's Dream' のミッドサマーは、日本の感覚で言う<真夏>ではなく、夜が最も短くなる日、6月24日の<夏至祭>を示す。伝承では、このころは妖精たちが最も活発になる時だとか。そして、人間の恋人たちが森の中でお祭りをする<五月祭>とは5月1日を示し、シェイクスピアは妖精たち、人間たち、この両方のお祭りの意味を結び合わせて『夏の夜の夢』を描いているのだそう。
人々が四季の移ろいを祝い、祈り、、自然の目覚めや息ぶきに身を預けるようにして暮らしていた時代、、、その頃の身体感覚が、、まだ自分にもたしかに失われずに宿っている気がする。
春は眩暈の時、、、死と生のあわいで魂が帯を解く危機感、、、。
だから、陽気な妖精パックに、そばに来て守っていてね、とお願いしたくなるんだ。。

ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー 『夏の夜の夢』 (DVD)>>
ここの坊やがとても愛らしい。そして、ここに登場するパックが私は一番好き。。でも、この種のDVDって本当に高いのね、、、。またレンタルビデオのお世話になるのかな、、、。

『夏の夜の夢』 小田島雄志訳 白水社Uブックス