ここしばらく、読書放浪者になっていました…
読みたいと思っていた何冊かの本を手もとに置いて読み出すのだけど、 なんだかちがう、、 別の本を、、 これも ちがう、、 こちらでもない、、 と どうしても気持ちが入りこまずに、、
それは決して本が悪いのではなくて たぶん 今の自分のせいなのでしょう。。 いくつかの気になる事、、 気にかけている友、、 ちいさな心配ごと、 頭のなかのちいさな頭痛、、
そんなときは、、 未知の作家さんよりも すでに信頼を置いている作家さんに助けをもとめよう…
、、と マイケル・オンダーチェの未読の小説 『アニルの亡霊』を先週から読み始めたのですが、、 こちらも遅々として進まなくて、、
***
オンダーチェさんは スリランカに生まれ ロンドンのパブリックスクールを経て、 カナダへ移住した作家。 『アニルの亡霊』は 初めて故国スリランカを舞台にした作品。 、、ということだけを頭に読み始めました。
、、どうやら内戦が続いているらしい、、 重い。。
政府や武装勢力や、 とても複雑な状況下にあるらしい。。 でも 政治の物語ではない おそらく。。 ある女性の物語? いや、 別の人物にも焦点があたる。。 誰かの過去が挿入される。 この人は誰? 、、どんな話なのか なかなか掴めない。 どうしようか、、
そうして 時間がかかりつつ、 何日もかかってようやく三分の一くらいまで読んだあたりで急に 物語に吸い込まれるように世界が感じられるようになってきました。 (いま後半にさしかかったところ…)
、、 投げ出さなくてよかった、、
***
彼の肩にふれた。 すっと彼の手が上がったと思うと、頭がずれて、もう寝入ったようだった。 この頭蓋、ぼさぼさの髪、疲れているらしい重みを、膝枕に受けてやる。 眠りよ、私を解き放て。 と歌の文句が浮かんだが、メロディを忘れていた。 眠りよ、私を解き放て……。
(『アニルの亡霊』 小川高義・訳 より)
前に、 オンダーチェさんの『ライオンの皮をまとって』を読んでいた時、(あのときも読んでいる途中でしたが) 印象深い文章を抜き書きしましたね。
あのとき抜き出した文章も、 男性が《寝落ちる》シーンでした。。 オンダーチェさんが寝落ちる場面が好きなのか、 私が好きなのか、、笑。
以前の『ライオンの皮をまとって』の場面の補足をします…
高架橋の建設をしている場面。。 男が一本の命綱で橋からぶら下がり、宙に浮いたかっこうで橋げたの作業をしている。 その男にしか出来ない危険な作業。
夜の現場。 ある不注意から上を通りかかった尼僧のひとりが橋から落下してしまう。 それを橋からぶら下がっていた男が片手で受け止める。 衝撃で男の肩がはずれるが、尼僧を抱きとめたまま 命綱を伸ばして地上へなんとか降り、 腕を脱臼した男は 助けた尼僧にささえられて 知り合いのいる近くの酒場へと辿り着く。 、、そのあとのシーンが以前に引用した部分。 (>>10月になりました…)
、、 前にこの《落下》につづく酒場の部分を読んだとき、、 その情景と詩的な文章があまりにも鮮烈で、 すっかり魅了されてしまい、 本を読み終えるまでずっとこの場面が頭から離れませんでした。。 落ちていく尼僧。 命綱でむすばれ下へ落ちて(下りて)いく二人。 痛みを酒でごまかして不意に寝落ちていく男。。 はっきりとは書かれていないけれども、 この場面には 恋に落ちていく匂いも漂って読む者をどきどきさせる。。
、、 どうしてこんな鮮烈な場面を思いつくのだろう…
、、 もちろん、、 オンダーチェさんが詩人でもあるから。。
さきほどの『アニルの亡霊』から引いた 《ぼさぼさの髪》の男が寝入る場面も、とても美しい場面でした。 死があり、 傷ついた肉体があり、、 不可解な謎があり、、 見通せない霧に覆われているような重い物語のなかに、 吸い込まれるような透明感のある文章があることに気づく。。 気づいたときにはもう吸い込まれている。。
20数年前、、 初めて読んだオンダーチェさんの『イギリス人の患者』の、 大火傷を負った患者のひとり語りに引き込まれる、、 あの感覚を思い出します。。 オンダーチェさんの小説がもつマジック。。 こうした詩的な言葉で魔法のように語られるイマージュは、 『ライオンの皮をまとって』の時もそうでしたが、 決して物語の主筋ではなかったりします。 でもそんなことは関係ないのです。。 ページにしてほんの数ページの場面だったりするにもかかわらず、 その人物の書かれていない過去や、 ときには一生まで リアルに感じさせてしまう、、 忘れられない鮮烈さで胸をうつ一場面。。
、、さきほどの『アニルの亡霊』の、 寝入った《ぼさぼさの髪》の男が このあとの物語でどうなっていくのか、、 どういう役回りなのか、、 それはまだなにもわかっていないのですけれど…
先を読むのが楽しみで かつ 読んでしまうのがもったいない。。 そういう小説に出会いたいがために本を読む。。
そして、 一年に一冊でも、、 一冊でいいから、 永遠に心に刻まれるような作品に出会えたら、、 それこそ 生きていることには意味がある、 と いまの私は思います。。
小説にかぎったことではなくて、、 音楽でも、、 出会う人のことでも。。
***
最初に書いた、、 ちいさな心配ごと、、 そのなかの一つ。。 或るお友だちの元気が先ほど確かめられて、、 よかった。。 ひとつクリア、、
これは先週の夜明けの星。
あさってには東京でも雪になるとか…?
風邪ひかないでくださいね。。
読みたいと思っていた何冊かの本を手もとに置いて読み出すのだけど、 なんだかちがう、、 別の本を、、 これも ちがう、、 こちらでもない、、 と どうしても気持ちが入りこまずに、、
それは決して本が悪いのではなくて たぶん 今の自分のせいなのでしょう。。 いくつかの気になる事、、 気にかけている友、、 ちいさな心配ごと、 頭のなかのちいさな頭痛、、
そんなときは、、 未知の作家さんよりも すでに信頼を置いている作家さんに助けをもとめよう…
、、と マイケル・オンダーチェの未読の小説 『アニルの亡霊』を先週から読み始めたのですが、、 こちらも遅々として進まなくて、、
***
オンダーチェさんは スリランカに生まれ ロンドンのパブリックスクールを経て、 カナダへ移住した作家。 『アニルの亡霊』は 初めて故国スリランカを舞台にした作品。 、、ということだけを頭に読み始めました。
、、どうやら内戦が続いているらしい、、 重い。。
政府や武装勢力や、 とても複雑な状況下にあるらしい。。 でも 政治の物語ではない おそらく。。 ある女性の物語? いや、 別の人物にも焦点があたる。。 誰かの過去が挿入される。 この人は誰? 、、どんな話なのか なかなか掴めない。 どうしようか、、
そうして 時間がかかりつつ、 何日もかかってようやく三分の一くらいまで読んだあたりで急に 物語に吸い込まれるように世界が感じられるようになってきました。 (いま後半にさしかかったところ…)
、、 投げ出さなくてよかった、、
***
彼の肩にふれた。 すっと彼の手が上がったと思うと、頭がずれて、もう寝入ったようだった。 この頭蓋、ぼさぼさの髪、疲れているらしい重みを、膝枕に受けてやる。 眠りよ、私を解き放て。 と歌の文句が浮かんだが、メロディを忘れていた。 眠りよ、私を解き放て……。
(『アニルの亡霊』 小川高義・訳 より)
前に、 オンダーチェさんの『ライオンの皮をまとって』を読んでいた時、(あのときも読んでいる途中でしたが) 印象深い文章を抜き書きしましたね。
あのとき抜き出した文章も、 男性が《寝落ちる》シーンでした。。 オンダーチェさんが寝落ちる場面が好きなのか、 私が好きなのか、、笑。
以前の『ライオンの皮をまとって』の場面の補足をします…
高架橋の建設をしている場面。。 男が一本の命綱で橋からぶら下がり、宙に浮いたかっこうで橋げたの作業をしている。 その男にしか出来ない危険な作業。
夜の現場。 ある不注意から上を通りかかった尼僧のひとりが橋から落下してしまう。 それを橋からぶら下がっていた男が片手で受け止める。 衝撃で男の肩がはずれるが、尼僧を抱きとめたまま 命綱を伸ばして地上へなんとか降り、 腕を脱臼した男は 助けた尼僧にささえられて 知り合いのいる近くの酒場へと辿り着く。 、、そのあとのシーンが以前に引用した部分。 (>>10月になりました…)
、、 前にこの《落下》につづく酒場の部分を読んだとき、、 その情景と詩的な文章があまりにも鮮烈で、 すっかり魅了されてしまい、 本を読み終えるまでずっとこの場面が頭から離れませんでした。。 落ちていく尼僧。 命綱でむすばれ下へ落ちて(下りて)いく二人。 痛みを酒でごまかして不意に寝落ちていく男。。 はっきりとは書かれていないけれども、 この場面には 恋に落ちていく匂いも漂って読む者をどきどきさせる。。
、、 どうしてこんな鮮烈な場面を思いつくのだろう…
、、 もちろん、、 オンダーチェさんが詩人でもあるから。。
さきほどの『アニルの亡霊』から引いた 《ぼさぼさの髪》の男が寝入る場面も、とても美しい場面でした。 死があり、 傷ついた肉体があり、、 不可解な謎があり、、 見通せない霧に覆われているような重い物語のなかに、 吸い込まれるような透明感のある文章があることに気づく。。 気づいたときにはもう吸い込まれている。。
20数年前、、 初めて読んだオンダーチェさんの『イギリス人の患者』の、 大火傷を負った患者のひとり語りに引き込まれる、、 あの感覚を思い出します。。 オンダーチェさんの小説がもつマジック。。 こうした詩的な言葉で魔法のように語られるイマージュは、 『ライオンの皮をまとって』の時もそうでしたが、 決して物語の主筋ではなかったりします。 でもそんなことは関係ないのです。。 ページにしてほんの数ページの場面だったりするにもかかわらず、 その人物の書かれていない過去や、 ときには一生まで リアルに感じさせてしまう、、 忘れられない鮮烈さで胸をうつ一場面。。
、、さきほどの『アニルの亡霊』の、 寝入った《ぼさぼさの髪》の男が このあとの物語でどうなっていくのか、、 どういう役回りなのか、、 それはまだなにもわかっていないのですけれど…
先を読むのが楽しみで かつ 読んでしまうのがもったいない。。 そういう小説に出会いたいがために本を読む。。
そして、 一年に一冊でも、、 一冊でいいから、 永遠に心に刻まれるような作品に出会えたら、、 それこそ 生きていることには意味がある、 と いまの私は思います。。
小説にかぎったことではなくて、、 音楽でも、、 出会う人のことでも。。
***
最初に書いた、、 ちいさな心配ごと、、 そのなかの一つ。。 或るお友だちの元気が先ほど確かめられて、、 よかった。。 ひとつクリア、、
これは先週の夜明けの星。
あさってには東京でも雪になるとか…?
風邪ひかないでくださいね。。