星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

白樺の根の冠…:ラーシュ・ケプレル著 ヨーナ・リンナ警部シリーズの話『砂男』まで

2021-02-15 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
2月も半ばです。。 ご無沙汰してます。。

スウェーデンのラーシュ・ケプレル作品の警察ミステリシリーズをずーーっと一気読みしておりました。


『催眠』 『契約』(友に貸出中) 『交霊』 『砂男』

読書記は このあと読むことになる5番目の小説『つけ狙う者』を読み終えたら書こうかな、、と思っているのですが、 書けるかどうか…

ストックホルムの国家警察所属の ちょっと謎めいたヨーナ・リンナ警部(Joona Linna)が主人公のシリーズ。 本国では シリーズ最後の8作目が昨年出版されたのかな?

日本では最初の『催眠』が2010年に出て、 翌年に『契約』が、 三作目の『交霊』が2013年に出た後、、 翻訳が止まってしまったらしいです。 このシリーズを私は昨年になって読もうかな、、と思い始めたところだったので良いのですけど、 もし『交霊』を8年前の当時に読んで それきり立ち消えになったまま続きが出るのかもわからず待たされていた人たちは いったいどんな気持ちだったんだろう…と 切実に思ってしまいました。。 だって… だって… 『交霊』の結末があまりにも衝撃すぎて…

このシリーズの魅力はなんといっても ヨーナ・リンナ警部自身の《謎》 、、一作ごとの事件もものすごく込み入った展開で読むのを止められない牽引力があるのですが、、 ヨーナが主人公でなかったら こんな風に全作品を読みたいと思ったか どうかな……

ヨーナ・リンナ警部、、 スウェーデン育ちみたいだけれどなぜかフィンランド人。 ヨーナの外貌も人柄も 過去も、、 ほんのちょっとずつしか明かされない。。 長身、 金髪はいつもぼさぼさ、、 花崗岩のような灰色の瞳、、 それくらい。。 自分のことの話になると ふっとはぐらかす…

ヨーナはクールなの? シャイなの? マッチョなの? 繊細なの? 頑固なの? 優しいの? 硬派なの? モテ男なの? つねにどっちにもとれるような描写。。 でも いつもどこか淋しそう、、

このシリーズ作品の著者ラーシュ・ケプレルという人物は覆面作家で、 結局 のちになってそれがもともと純文学作品の作家である夫妻ふたりの共同執筆であることが明かされたということですが、 もとが純文学作家だからなのか、、 たった一行でなにかを語らせるのが本当に巧い。。 事件そのものはわりと暴力的だったり、 凄惨だったりするのだけど、 ヨーナのする仕草とか、 語る言葉とか、 聴く音楽とか、、 なんでこの場面でこれ? というような妙に具体的な描写がぽこっといきなり、、 

それが とってもユニークで、 不思議で、、 だから一瞬で頭に残る。。 

ヨーナが歩きながらバナナの皮をゴミ箱に捨てた、、 とか。 シナモンロールの上にかかった砂糖のかけらをつまんで食べた、、とか(笑) 金髪、長身、、 花崗岩の瞳の40がらみの警部よ?
他に具体的なものが明かされないから、 だから読み手はこのヘンテコなヨーナの描写から想像というか、 妄想がひろがってしまう、、 (ヨーナ なんか可愛い…)って。。


一作品のなかで ほんの数行ずつくらいしか ヨーナの過去については語られないのですが、 ヨーナが仕事の合い間にたった独りで立ち寄る場所が ストックホルムにある 北方博物館。 そこでヨーナはたった独りで 展示品であるサーミ人の工芸品、 白樺の根でつくられた冠を一時間余りも見つめて過ごす…

、、検索しましたよ、、 北方博物館。

でも、 その中には目当てのものは見つけられなかったけれど、 サーミ人の白樺の根で作った工芸品は検索すると見つけられます。 たぶん ヨーナが見つめていたのはこういうものだったんじゃないかな、、と思われる nordic sami birch root bridal crown の画像も。。 (あ、ちょっとネタばれ。。 御免なさい!)

白樺の根の工芸品は 何年も、 百年以上も、 ずっともつのだそうです。 だから それで作られた冠は たいせつな儀式に。。

 ***

そのヨーナの過去が、、 3作目『交霊』の最後で衝撃的に語られる。

語られた後、、 それでどうなったの?? という問いを残したまま、、 翻訳は止まってしまっていたのですね。。 本当に、 あの時点で読み終えて待たされた人たちは いったいどんな気持ちだったんでしょう、、 想像するだけで涙が出てしまいます、、




そして 7年後の昨年、 やっとやっと 4作目の『砂男』が出版社を変えて翻訳されたのでした。 ほんとうに、、 私はつづけて読むことが出来た果報者ですけれど、 それでも (翻訳してくれてありがとう~~)と感謝せずにはいられませんでした。。

、、 『砂男』を読み終えて、 ヨーナの過去は知ることが出来たけれど、、 ヨーナの未来はまだまだ闇だらけ。。 シリーズ完結まで8作品なので まだ物語は折り返し地点。。 どうか順調に全作品が翻訳されますように、、。 (毎回、 起こる事件はかな~りセンセーショナルで凄惨だったりするので ワタシはそういうのは割と苦手なので、、 こんなことは物語の中だけで起こる事であってほしいと強く強く思わずにはいられないのですが…)


昨日はバレンタインデーでした。

今 いちばんチョコをあげたい人は、、 やっぱり ヨーナ・リンナ という事にしておきましょう。 物語の中では、 ヨーナのアシスタントのアーニャが キャラメルを剥いてヨーナの口に突っ込む、 というシーンがあるのですが(アーニャ可愛い!!)

ひと粒チョコレートの銀紙を剥いてヨーナの口に食べさせてあげたい。。 ハイ、あ~ん、、 じゃなくて 会話してる途中で有無を言わさず スッと、、 ね。。 アーニャみたいに。(⇦妄想)



ヨーナ・リンナ警部シリーズ その後の日記はこちら>>

 ***

そのまえに、、


ハーパーコリンズ・ジャパンさんの ゲラ読み募集に応募したら当選して原稿が送られてきました。 発売前のゲラ読み、って初めてです。 有り難く鋭意 読破したいと思います。 楽しんでます。





はやく あたたかくなあれ。。


はやく ワクチン打てますように。。

この記事についてブログを書く
« 対照的なスウェーデンのミス... | TOP | ヨン・バウエル(John Bauer)... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)