身近に人の死を見ることがなくなってネットなどを通じて変な具合に死体に興味を持ったりしている小学生の教師が、自宅介護している自分の父親の姿を見せ、世話もさせることで、子供が頭の中だけでこねくりまわしていた死ぬこと生きることを具体な人のありようとして教える。
同僚の教師たちが妙に問題になるのではないかと、臭いものに蓋式の対応をしているのがリアル。
「病院で死ぬということ」あたりとも通じるモチーフで、お話映画ではなくて人間の体を含めて物自体の存在感を丹念に見せていく映像感覚が魅力。
だから、嫌われるタイプの教師だったという父親の葬儀に大勢の教え子が集まって「あおげば尊し」を歌うといういきなり話にオチをつけるようなラストは浮いている。
やや疑問なのは、「介護」という行為あるいはそれを事実上強制している社会制度自体が、いつまでも生きることを引き伸ばして死から目をそらし、ここで子供たちをおかしくしている「空気」の表れそのもので、死(とそれから生)を本当に見つめる行為ではないのではないか、と思えること。
(☆☆☆★)