そのまま描いたら陰惨きわまる不幸の連続を突拍子もない色彩とポップな画面処理で中和するセンスが勝負。特にミュージカル調音楽処理は凝ったもの。
物語とすると、松子の死後にほとんど交流のなかった甥が、生前松子に関わった人たちに会って生涯を再構成していく「市民ケーン」式の構成で、いわば作り手の好みの場面(甥がわかるはずのない場面も多く含む)をつまんでまとめられるところがセンス勝負作とするとおいしいところなのだけれど、他人にとって松子がどんな存在だったのかはまあわかるが当人にとって自分の人生がどんなものだったのか、という素朴なところで考え直していくとちょっと首を傾げたくなる。
意匠を剥がしてみると、このヒロインは「道」のジェルソミーナなのでしょうね。
ただ、頭が弱いわけではないだろうし、ザンパノに当たる男が複数でしかも悔恨の痛みを笑いで紛らわしているせいか、ちょっと都合よく見える。
(☆☆☆★)