加東大介が南方戦線で兵隊から有志を募って慰問芝居を作った体験記の映画化で、自分自身の役で主演もしている。
伴淳三郎、有島一郎、西村晃、志村喬、渥美清、三木のり平、森繁久彌、といった有名どころばかりでなく、仲間を集めていくシーンなどでちょっとだけ出てくる役者たちが短い出番で腕を見せるのが、昔の日本映画の役者の層の厚さを見せる。
もっとも、せっかくカツラを作る役、舞台装置を作る役など裏方志願の人間も入れているのに、具体的にどう芝居を作っていったのかというプロセスがあまり描かれておらず、いきなりできあがった芝居を見せてもあくまでそれは実際に上演されたであろう芝居の再現にとどまり、あまりにできあがりすぎた舞台なので実際は日本のセットで撮ったのではないかという隙間風が吹く。パラシュートを調達してきて積もった雪に見立てるといった細かい工夫を丁寧に描いてもらわないと、日本から遠く離れた場所で苦心して日本を再現したという感じが出ない。
兵士たちが協力して物を作っていくのを見せることで、戦友同士のつながりも実感をこめて描けただろうに、もったいない。
(☆☆☆)