prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「王妃の紋章」

2008年04月24日 | 映画
夫婦・親子・兄弟が争い殺しあって、「ハムレット」か「あわれ彼女は娼婦」みたいにほとんど全員死んでしまうドロドロ劇で、元が舞台劇と聞いて納得。

チャン・イーモウとしては「紅夢」以来の閉鎖空間での八方陰惨なお話で、空間自体は巨大化してほとんど万華鏡の中みたいに豪華絢爛になっているけれども、閉鎖的であることに変わりはない。
ラスト近くの金色の鎧に身を固めた大反乱部隊が、さらに巨大な王の部隊に包囲されて全滅するシーンなど典型。

群集シーンの捌きは撮影監督時代の「大閲兵」以来のうまさだけれど、今の時期見るとオリンピックの開会式のリハーサルみたいに見える。権力が反乱を徹底的に制圧する内容なのだから、気色悪い。
うまいといえば、イーモウ自身は国民党の兵士の息子なので、子供の時は「黒五類」として徹底的に差別されたという、それがこれだけ「出世」したのだから、世渡りうまいね。
あまり表には出ていないことだが、イーモウが北京電影学院撮影学科にすでに27歳になっていて年齢制限にひっかかっていたにも関わらず入学を許されたのは、文化大革命で下放されていた当時に撮りためていた写真を学院に提出して特別に認められたから、となっているが、それだけではなくて当時の夫人が学院の偉いさんの親戚だったのでコネが使えたから。まあ、中国では当たり前の話ですけど。

立ち回りとしては一対一のが少なくてもっぱら集団同士なのが、「HERO」や「LOVERS」みたいに変にスカしたのを見せられるのより助かる。日本の忍者みたいな黒づくめの暗殺部隊が現れてカマの方を振り回すクサリガマみたいな武器を操るあたりがちょっと面白い。

コン・リーが毒を飲んで汗をだらだら流しているアップがコワい。
(☆☆☆★)


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