prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「陽のあたる場所」

2017年11月25日 | 映画
オープニング、画面そのものの感触としてはゆったりしているけれど、驚くほど適格でスピーディーに人物紹介、状況設定を済ませてしまうのはいかにも昔のハリウッド映画。

脚本にマイケル・ウィルソンの名前がある。この映画が製作された1951年にハリウッドに吹き荒れていた赤狩りにひっかかり、この後書いた「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」などでは後に名誉回復するまで名前を出せなくなった。

エリザベス・テイラーの初登場シーンで割と引いたサイズで見せておき、本格的に主人公ジョージと接近するところでどんとアップになる演出の計算が確か。
当時19歳!のテイラーの、なんだか近くにいるだけで落ち着かなくなるような美しさ。

ゆったりしたオーバーラップの多用はジョージ・スティーブンス監督がよく使う技法なのだが、リズとのラブシーンがラスト近くで何度もだぶってくるのが痛烈に効いている。

ヒロインの名前がアンジェラというのは天使と意味をかけているのだろう、金持ちの令嬢なのだが純粋培養された、貧乏な青年にも偏見を持ちないイノセントな存在として描かれている感じ。
ほとんどのシーンで白い衣装を着ているのが、最後に刑務所のジョージに会いに来るところだけ黒い衣装に変わっている効果(衣装デザイン=イディス・ヘッド)。

ドライサーの原作「アメリカの悲劇」An American Tragedyはニューヨークで実際に起きた事件をもとに1925年に発表された小説だが、それにしてもここで描かれている極端な貧富の格差とそれと裏腹のような縁故主義、宗教的な抑圧の強さなど、アメリカの原型が100年近く経っても生きているのがわかる。

モンゴメリー・クリフトがゲイだということを知っていて見ると、リズとのラブシーンが不思議な感じに見える。

主人公のジョージ・イーストマンという名前は、フィルムメーカーのイーストマン・コダックの創業者と同姓同名。同社の創業は1881年だから、原作の発表よりずっと前。

  

11月24日(金)のつぶやき

2017年11月25日 | Weblog