節税対策で古い美術品を抱えているあたりもそのあたりのアイロニーを画にしているよう。
しまいには身代金の支払いも節税と結びつけられるのだから、その強欲とエゴイズムにはほとんど笑ってしまう。
ストックホルム・シンドロームばりに誘拐した少年と感情的に共感するようになってしまう誘拐犯の一人のキャラクターが対照的。
本来の主演だったケビン・スペイシーがセクハラ・パワハラで馘首されクリストファー・プラマーで全面的に再撮影されたというのもすごい話で、印象が強い割りに出番の物理的な時間そのものは短いらしいが、早撮りも監督の生き残りのためのスキルに入るということだろう。
プラマー御年88歳とあってメイクでは再現しきれない老いの生々しさを見せる。
完全に誘拐業がビジネスとして展開していて債権を引き渡すように金で人質を別人に引き渡すあたり、ゲティ家とはまた別のマネー至上主義が誘拐犯側にも貫徹している。
「悪の法則」のような冷やりとした文体の凄みはないが、描いている世界の荒涼感は共通している。
(☆☆☆★★)
「ゲティ家の身代金」 公式ホームページ
「ゲティ家の身代金」 - 映画.com
ホームページ