prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」

2018年06月21日 | 映画
「妻よ薔薇のように」が1935年の成瀬巳喜男作品のタイトルであることがどの程度一般客に通じるかわからないが、山田洋次がこのところはっきり見せている日本映画の伝統を少しでも伝えなくてはいけないという使命感のようなものの一環であることは確かだろう。

妻夫木聡が兄の西村まさ彦に家出した義姉の夏川結衣とよりを戻す気があるのかと激しく言い合うシーンのバックで赤の他人の結婚式が展開しているという対位法は、黒澤明の「生きる」で生きたまま死んでいるようだった志村喬が自分にも何かできると目覚めるシーンのバックで女学生の誕生パーティーで「ハッピーバースデー」が歌われる演出の変奏と思われる。

寅さんの世界と通じる場所や人をちらっと見せるあたりもセルフパロディ式にやにさがった感じではなく、あの世界とはすでに距離ができているのを感じさせる。

クライマックスのまあわかりきった展開を雷まじりの豪雨を絡めながら描くタッチはさすがに手慣れたものだが、肝心の一瞬をアクションでなくセリフで先で言ってしまうというのはあまり山田洋次らしからぬ画竜点睛を欠いた感。

日本の会社人間で通してきた男がパートナーに自分の気持ちをきちんと伝えることが下手というより伝えなくてはいけないこと自体がわかっていないあたりの困ったところを繰り返し描いていて、一作ごとにラストでいったんはわかったようでもまた元に戻ってしまうあたりはシリーズものらしくもあり、実際そう簡単に進歩などしないのはそれはそうだろうとも思わせる。

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」 公式ホームページ

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6月20日(水)のつぶやき

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