そのうちに何が家族なのか、というかおそらく人間同士のつながりの最小単位のさまざまな揺れの可能性に向けて開かれていくのが静かにスリリング。
筋立てで引っ張るよりディテールを味読するタイプと思える。
出だしの食事の場面のそれぞれの配置や向いている方向がバラバラというあたりですでに何か違和感を感じさせる。
食事のシーンが何度も出てくるが、お米を炊いて食べているところが確か一度もない。もっぱらカップラーメンかカップうどん、そうめんといった麺類か、糖質としてビールをご飯代わりに空けている。
いわゆる一つ釜の飯を食べる、といった関係ではないということだろう。
あるいは米みたいに買うにはある程度とまった金額が要るのを出し惜しむのか、それ自体味がないものは物足りなく感じるという貧乏根性のたまものだろうか。
とはいえ、そうめんなど同じ容器を何人かでつついて食べているシーンはいくつかあるので、今度見るときは注意してみよう。
フィルム撮影らしいけれど、画面のグラデーションの豊かさが場面のニュアンスの豊かさにストレートにつながっている。
煮染めたような襖や冷蔵庫の汚れの質感、小綺麗な割に安い服と、ディテールの説得力がすごい。
子供に万引きさせるあたりでちらっとチャップリンの「キッド」が頭をよぎった。
(☆☆☆★★★)
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