prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ビブリア古書堂の事件手帖 」

2018年11月14日 | 映画
黒木華の今っぽくない感じが若い女性にして古本屋の店主でビブリオフィリア(愛書家)という役にうまくはまった。
愛書家も昂じるとビブリオマニア(愛書狂・書痴)になり、今回の事件の犯人はそれにあたる。

ビブリオマニアとしては「子供より古書が大事と思いたい」にある、仏文学者の鹿島茂がフランスで家族旅行中に見つけた全17巻揃いの古書を買い込んでしまい、持ち帰りでないと売らないというので車に積んだ本の上に子供二人を強引に乗せて旅行を続けたなんて話とか、冗談みたいな実例がいくらもある。

このあたりのマニアの心理とか行動とかが、ミステリ仕立てということもあって遠まわしになって十分描きこみ切れていない。
ばかりか、話の発端になる漱石の「それから」や太宰の「晩年」の稀覯本の小道具が古色のつき方が不十分で、前者など素人目にもこれは本物じゃないだろと思わせるのが困る。

あと、読書というのは何も黙読だけではないだろう。朗読の方がむしろ歴史的には先のはずで、最近でもAmazon Audibleつまり通勤中でも聞ける本が売り上げを伸ばしていると聞く。

だから野村の字の本を読めないというコンプレックスというのが今一つよくわからないし、実際黒木に読んでもらっている。そちらの方で仲良くなるのに生かそうとくらいしてもおかしくないか。
お話とすると字がびっしり詰まった本が読めなかったのがいくらかでも読めるようにならないとオチにならない。

ミステリとして困るのは黒木華が探偵役としての役割を果たすのは冒頭だけで、黒木と野村周平の祖先の代の経緯がわかっていくのが何らかの手がかりがあって推理したりした結果というわけではなく、カットバックされる過去の場面と現在とをつなぐものが映画の作者の恣意だけで登場人物の意思とは別物になってしまっているので、ただ交互にエピソードが並ぶだけなので感情移入がしにくくて乗りが悪い。
クライマックスの追跡と格闘の演出の手際の悪いのには参った。

舞台になる鎌倉の古都らしい風情の生かし方ももうひとつで、切り通しの他にもいろいろ見たい。

余談だが、かなり静かなこの映画の上映中のTOHOシネマズ新宿のスクリーン12でどかんどかんかなり大きな音が隣から響いてきた。シネコンでこういうことあるのだね。

ビブリア古書堂の事件手帖 -公式ホームページ

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